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第22話 湯けむり事件

ウィルは用事を思い出したマッカランと別れ、カルデの別邸内にあるライオンの口から乳白色の温泉が湧き出る大理石造りの大浴場で汗を流していた。

一通り身体を洗い、湯気が籠りほとんど見えない中を手探りで移動すると、ゆっくり湯船に浸かった。

『ザッパーーン』

「ぷはあっ!いよいよ、明日ボルケニア帝国へ出発かぁ。うまくいくかなぁ。」

ウィルは湯船に浸かりながら一週間前のカルデの話を思い出していた。

オグニイーナ襲撃の翌日にカルデが説明した作戦はこうだった。


まず、ウィルはカルデの用意する転移結晶でボルケニア帝国の帝都バーナ近郊にあるヒノッコ村に向かい、そこで協力者と合流し帝都バーナに傭兵を装い潜伏。

その後、現皇帝ロベールが崩御する前に必ず第1王子チャールズが帝都バーナ奪還に打って出る為、その隙をついてウィルがララ達の幽閉されているであろう帝都バーナにあるボルケニア城へ潜入し救出するというものだった。

この作戦にはマクグラン王国として表立って関与しないという事からウィル単独で臨ませるというカルデに対して、当初、同席していたトーマスとアリスも参加すると言って譲らなかったが、ブライト不在のサウストン男爵領の統治や王都への招集命令への対応、まだ幼いラスクの世話などの話をカルデがすると2人は泣く泣く引き下がり、その翌日ウィルにララ達の救出を託しサウストン男爵領へと戻ったのだった。

そして、皇帝派や神聖派の動向や現皇帝ロベールの状態、ウィルの戦闘スキルの底上げの時間など様々な要因を考慮した結果、ウィルの出発は明日となっていた。


「あー。それにしてもこの風呂は広くていいなぁ。泳げそうだな。まぁ貸切ならではの醍醐味だしな。よしっ!」

ウィルは大きく息を吸い込み温泉に潜った。乳白色のお湯のせいで視界はゼロだったがウィルが潜水泳ぎを始めて間も無く、頭が柔らかい何かにぶつかったのに気付くと、その何かを鷲掴みにし、浮上した。

「ぷはあっ!なんだ!?」

目の前には水風船のようにプカプカと湯船に浮いた胸をウィルに鷲掴みにされたカルデが顔を真っ赤にしながら驚きの表情を浮かべ、ワナワナと震えていた。

そしてその横では、ハニエルがニヤニヤと笑っている。

「あ、あれ?カルデ様…。ん?こ、これは!?」

ウィルの煩悩が反射的に鷲掴みにしている手を1回、2回、3回と動かした次の瞬間、カルデのビンタがウィルの頬に炸裂した。

『バッチーーーン!!』

振り下ろすようなビンタにウィルの顔面は湯船の水面に叩きつけられそのまま沈んだ。

「ウ、ウ、ウ、ウィル!わ、我の乳をも、も、揉みしだくとは!この愚弄めが!こう言う事はじゅ、順番というものが…バカッ!」

カルデはそう言い残すと急ぎ足で大浴場から出て行った。

ウィルは沈みゆく意識の中で久しぶりの生の感触を思い出しながら気を失ったのだった。

ちなみにこの後、ハニエルがウィルを救出し意識を回復したが、その際にハニエルがものすごく楽しそうに笑っているのを見て、カルデが大浴場にいたのがハニエルの悪戯であった事に気付くのであった。


そして、その後気まずい雰囲気の中、夕食をとりながら作戦の流れを確認し、明日の出発に備えウィルは早めに就寝するのであった。


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