エピローグ→
リコが全てを納得してくれたとは思えないけれど、それから僕らの関係は、前よりも親しいものになった。
有り体に言えば、恋人のような関係だ。
偽物の僕は、幸せにならないことを前提に造られた存在だった。それなのに、きっと今の僕は、本物の僕よりも幸せだ。だって、本物のリコと一緒なのだから。
そう考えて、僕は偽物のリコのことを思う。リコはリコだ。本物も偽物もない。同じ身体で同じ心なら、それは偽物だろうとリコはリコだ。僕はそう思える。リコもきっとそう思ってくれた。
なら、幸せも不幸せもない。違いは環境だけだ。
やっぱり、外にいる僕のほうが幸せだろう。
システム解体の記者会見会場に向かう僕らは、手をつないでいた。
「ねえ、リコ」
「ん?」
「僕、今、幸せだよ」
「うん」
心ここにあらず、といった様子だ。時々、リコは何かを考え込んでいる。
「リコ」
「ん?」
「何を考えてるの?」
「ちょっとね」
「教えて」
「え、いや……たいしたことじゃないんだけどね。その……アキの告白を聞いて、ちょっと違和感があったんだ」
「違和感?」
「うん……いや、ごめんね。心配させちゃった?」
「いや、大丈夫」
リコは、偽者の僕を受け入れてくれた。それだけでいい。僕は幸せになれる。
「アキ」
「なに?」
「アキとさ、ミズキって、似てるよね」
「はあ? どこが?」
嫌味か?
僕はあんな美人じゃない。
「いや、見た目じゃなくてね、考え方とか、好みとかさ」
ああ、そういうこと。
「二人とも、リコを好きになったしね」
「うぇっ? いや、そういうことじゃなくて! ……まあ、それもある、のかなぁ」
リコはあからさまに狼狽した後で、何かに納得したようだ。
ミズキか……。僕としてはリコを譲る気はないから、ライバルということになるのだろうか。
……嫌だ。リコは渡さない。でも、勝てる気もしない。
そも、ミズキはリコが好きなのだろうか? 身体を許すくらいだから、好きは好きなんだろうけど……どちらかと言えば、僕もセットで、って感じだった。
ミズキがリコに抱かれているのは嫌だけど、三人一緒なら……まあ、いいかな。さんざんやってしまったことだし、今更だ。
「異性の、とかに限ってじゃなくてさ。好きな人間のタイプとか、そんなの」
「ああ……」
確かに、ミズキが紹介する人は誰もかれも、僕から見ても好ましい人間だった。でもそれは、リコが見ても同じじゃないのか?
「まあ、そうだね。ミズキの好きな人間のタイプは僕も好きだと思うよ」
「そうだよね」
リコは何か得心がいったように頷く。
「それが?」
「いや、なんでもない」
訝しみながらも、僕らは会場になる官邸へ向かった。




