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エウトピア   作者: 十ノ青日
序章
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35/39

エピローグ→

 リコが全てを納得してくれたとは思えないけれど、それから僕らの関係は、前よりも親しいものになった。

 有り体に言えば、恋人のような関係だ。

 偽物の僕は、幸せにならないことを前提に造られた存在だった。それなのに、きっと今の僕は、本物の僕よりも幸せだ。だって、本物のリコと一緒なのだから。

 そう考えて、僕は偽物のリコのことを思う。リコはリコだ。本物も偽物もない。同じ身体で同じ心なら、それは偽物だろうとリコはリコだ。僕はそう思える。リコもきっとそう思ってくれた。

 なら、幸せも不幸せもない。違いは環境だけだ。

 やっぱり、外にいる僕のほうが幸せだろう。

 システム解体の記者会見会場に向かう僕らは、手をつないでいた。


「ねえ、リコ」

「ん?」

「僕、今、幸せだよ」

「うん」


 心ここにあらず、といった様子だ。時々、リコは何かを考え込んでいる。


「リコ」

「ん?」

「何を考えてるの?」

「ちょっとね」

「教えて」

「え、いや……たいしたことじゃないんだけどね。その……アキの告白を聞いて、ちょっと違和感があったんだ」

「違和感?」

「うん……いや、ごめんね。心配させちゃった?」

「いや、大丈夫」


 リコは、偽者の僕を受け入れてくれた。それだけでいい。僕は幸せになれる。


「アキ」

「なに?」

「アキとさ、ミズキって、似てるよね」

「はあ? どこが?」


 嫌味か?

 僕はあんな美人じゃない。


「いや、見た目じゃなくてね、考え方とか、好みとかさ」


 ああ、そういうこと。


「二人とも、リコを好きになったしね」

「うぇっ? いや、そういうことじゃなくて! ……まあ、それもある、のかなぁ」


 リコはあからさまに狼狽した後で、何かに納得したようだ。

 ミズキか……。僕としてはリコを譲る気はないから、ライバルということになるのだろうか。

 ……嫌だ。リコは渡さない。でも、勝てる気もしない。

 そも、ミズキはリコが好きなのだろうか? 身体を許すくらいだから、好きは好きなんだろうけど……どちらかと言えば、僕もセットで、って感じだった。

 ミズキがリコに抱かれているのは嫌だけど、三人一緒なら……まあ、いいかな。さんざんやってしまったことだし、今更だ。


「異性の、とかに限ってじゃなくてさ。好きな人間のタイプとか、そんなの」

「ああ……」


 確かに、ミズキが紹介する人は誰もかれも、僕から見ても好ましい人間だった。でもそれは、リコが見ても同じじゃないのか?


「まあ、そうだね。ミズキの好きな人間のタイプは僕も好きだと思うよ」

「そうだよね」


 リコは何か得心がいったように頷く。


「それが?」

「いや、なんでもない」


 訝しみながらも、僕らは会場になる官邸へ向かった。







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