星空に愛を込めて
2003年9月25日午後5時。ヘンメルマウスマンション5001号室アトリエ。彩希子の護衛について一週間が経った。トークショー以来目立った動きは見られない。
「始くん。お酒が呑みたいです」
彩希子が急に言い出して来やがった。
「何言ってんだ」
「黒刻町で」
「ホントに何言ってんだ」
ああついに。遂に我慢が出来なくなったか。よりにもよって黒刻町で呑みたいなどと抜かしよった。ここ一か月トークショー以外で外には出ていないらしい。うーん・・・たまにはガス抜きが必要か・・・。
「分かった。じゃあ準備してもらうから彩希子も外出る準備しろ」
「準備?」
「そう。ちょっと電話借りるぞ」
電話をかけるのはいつもの三軒+一組。先ずは
「もしもし」
「始様!!?」
電話口の声で当てやがった。こいつ絶対詐欺に引っ掛かる。
「ホントに俺で良かった・・・」
「始様!!?始様でしょ!!?」
「そうだよ」
「始様!!!!!!!」
ねー、嬉しいねー。
「今からお客さん連れてくから、ご飯の用意お願いできる?」
「元カノ?」
「怒るんじゃねえぞ」
「大丈夫ですー」
「二人分だけで良いから」
「?もっと他にも護衛の人いるんじゃないの?お弁当くらい用意するわよ」
「いいの?助かる。もう少ししたら行くから」
「お待ちしております♪」
「三沢さん着いてくる?」
「今回の外出はトップシークレットですから。出てった事を知らない賊が来たら返り討ちにしてやります」
「分かった。浜風遊廓が弁当作ってくれるって。店の子に届けてもらうよ」
「やったー!ちゃんと1個下の階で下りてそこから階段使うように言っといてくださいね」
「わかったー」
ヘンメルマウスマンション501号室アトリエ。
「こちらハリー・ホプキンスでございます」
「中森ですけど」
「おお、始か」
「支配人」
「聞いてるぞ。太夫ほっぽって元カノのところに今いるんだってな」
「ちゃんと言ってから来てます」
「で、どうした?」
「その元カノともう少ししたらお伺いします」
「飯食ったか」
「浜風で食べてからそっちに行くつもりです」
「分かった。広めの席抑えとこうか」
「いや、いつも通りで」
「分かった。待ってるよ」
ヘンメルマウスマンション501号室キッチン。
「はいバー・バンシィ」
「中森ですけど」
「あら始クン。暫く」
「ええ暫く」
「太夫とも暫く?」
「一週間会ってないっすね」
「かわりに頂いとくわね」
「駄目です。俺のなんで・・・じゃなくて」
「うふふ・・・今日来てくれるの?」
「そうそう、日付変わるか変わらないかくらいに」
「どっかで呑んでくるの?」
「浜風で食べてからハリー・ホプキンスへ」
「それからウチ・・・黄金パターンね。マンネリじゃない?」
「何をおっしゃる。今回はいつもと違うメンツです」
「誰?元カノ?」
「なんで当てるかな・・・取り敢えず行きますからよろしくお願いいたします」
「分かった。店開けて待ってるわね」
「じゃあ後程」
「始くーん、準備出来たよ」
「おーう、ちょっともう一件電話かけ・・・」
「?」
「お前可愛いな」
「馬鹿ッ」
「ホントだって。可愛いよ」
「分かったから早く電話」
「ああ、わりいわりい」
ヘンメルマウスマンション501号室リビングルーム。
「声色がピンク色ね始」
「気のせいじゃないですか組長」
「元気になった?」
「大悟のおかげです」
「ならよし。で?復活早々なんの相談?」
「実は・・・」
「なるほど。うん、出せるよ。町内ぐらい固めてあげられる」
「助かります」
「久々に二人で遊ぶんでしょ?楽しみなさい」
「はーい」
ヘンメルマウスマンション地下駐車場。彩希子も出かける準備ができ、こちらも各方面への根回しが完了した。折角なので最近動かしてなかった彼女のボクスターで行くことになった。運転はもちろん俺だが。
浜風屋到着。
「近いね。10分じゃん」
「大学もここから歩いて行ける距離だったからな」
「旦那!お待ちしておりましたぁ!」
「こんばんは串田。久しぶりだね」
「一週間たあ長いもんですなぁ!!」
「彩希子、この人が串田。この町に来て最初に声かけられた人。ずっと世話になってる」
「お初にお目にかかりますぅ、串田ヒロム言いますぅ。ようこそいらっしゃいましたぁ」
「富永彩希子です。始君がいつもお世話になってます」
「旦那ぁ、別嬪さんだねぇ。あんたの人生の女の子は美人しかいないのかねぇ」
「それが俺の恵まれてる所か・・・いってえ!!つねるな彩希子!!!」
「ふーんっ」
「仲良さそうだあねぇ」
雷電紫電兄弟も顔を見せたので顔合わせ。三人が挨拶を交わしているそんな中、串田が俺に囁く。
「旦那ぁ」
「なに?」
「エエんですかぁ、今の女と前の彼女さん合わせてぇ」
「そこなぁ・・・俺も心配。でもお互いが是非にって言うんだ・・・」
「なんかあったらワシら止めに入りますからぁ」
「助かる」
三ツ島遊郭浜風屋中央エレベータ前。15階、俺と栄がいつもいる場所へ連れていく。
「栄・・・太夫で良いの?」
「そう」
「何処にいるの?」
「太夫はここの最上階にいられますんでぇ。お食事もそちらにご用意しとりますハイぃ」
「上までどうやって行くの?」
「このエレベーターで上がる」
「千と千尋みたい」
「意外と近代的なんだよな」
「緊張してきた・・・」
「俺も緊張してきた、別の意味で」
浜風屋15階甲の間。
「こちらの大広間ですぅ」
「ありがとうございます」
「いらせられませ。当三ツ島遊廓浜風屋主人、栄太夫でありんす。本日はよくこそいらして頂きました」
「富永彩希子です。いつも始君がお世話になってます」
壮観だった。まさかこの二人が顔を合わせる日が来ようとは思いもよらなかった。
「始様」
「?うん?」
「お座りになられては」
「ん?ああ。どっこいせ」
「彩希子様も、どうぞお崩しになって」
「失礼します」
「栄」
「はい、始様」
「お茶が飲みたいな。喉が乾いた」
「かしこまりました。もし!」
パンパンと手を叩くと二人の禿、銀河と飛龍が茶道の道具を持ってきた。しかもフルセット。
「そこから!!?」
「ええ、ちゃんとたてたお茶の方が・・・」
「いや普通!普通でいいから!そこまでじゃなくていいのよ!!」
「そっ、そうですか・・・?では」
「「お持ちしました」」
「いや、普通の急須っ!ちゃんと用意してるんかいっ!!」
「粗茶です」
「しかも沸かしてるんかいっ!!」
「頂きます」
「どうぞどうぞ」
「・・・」
「・・・」
「お腹空いた」
「・・・あ、はい!ただいま!」
パンパン、と手を叩く栄太夫。銀河と飛龍が三人の前に膳を運ぶ。
「遊廓とは思えないくらい・・・庶民的ですね。豚カツ御膳ですか」
「その方が始様がお喜びになりますゆえ」
確かに、山盛りのサラダが添えられたアグー豚の豚カツ御膳。大根の味噌汁に
「始君ご飯多いね・・・」
「そうか?これくらい食うだろ」
銀河がよそってくれたどんぶりに山盛りのご飯。
「薄々気付いてたけど胃も大きくなったねえ・・・」
「・・・前はこれほどではなかったのですか?」
「?はい。もう少し少なかったかなー?」
「多分まだ食うぞ」
「なんで成長期終わってから食べる量が増えるかな~」
「さあ。よし、食べよう」
「「「いただきます」」」
「やっぱり野菜から?」
「先ずはね」
「・・・」
「豚カツ豚カツ~、上手いっ」
「・・・!」
「この揚げ方は栄だな」
「・・・!はいっ!」
「美味しい美味しい。うん、ご飯が進むね」
「ホント、お料理も上手だなんて」
「始様に喜んで頂くためですわ!」
「これさあ」
「「?」」
「栄が全部作っただろ」
「えっ、凄い」
「がっ、頑張りました!」
「ご飯上手い。銀河ちゃん、おかわりちょーだい」
「お味噌汁も美味しい~!」
「・・・っ!」
「飛龍ちゃん、野菜まだある?」
「まだ少し余ってます」
「食べていい?栄」
「もちろん!食べ尽くしてください!」
「切ってるやつだけで良いから持ってきてくんない?」
「かしこまりました」
「銀河ちゃん、ご飯何合炊いた?」
「一升くらいだったと・・・」
「ふーん。モリモリモリモリ」
「やっぱり栄太夫はさ」
「はい」
「始君の食べてるところ見るの好き?」
「ええ!こんなにご飯を美味しそうに食べる人は今までお会いしたことはございませんわ。食事にこそ人と成りが現れるとは言いますが・・・始様はそれを体現なさってます」
「わかる。始君が食べてるところ見ると楽しくなるよねー!」
「そうか?」
「そうよ。そこに惚れられてるんじゃない?」
「とってもキュート。お可愛らしいの」
「わかる~。私もさ、昔は料理全然出来なかったけど」
「カップ麺の作り方知らんかったもんな」
「それは置いといて。頑張って作るようになったのは始君がいたからだもんね」
「ご馳走さま」
「もう食べたの!?」
「食べた。これから酒呑むし、腹五分目くらいで抑えとかないと」
「絶句」
「流石始様ですわ!」
「褒めるのか~」
三ツ島遊郭浜風屋15階甲の間。暫し三人で談笑したのちに次の予定があるので移動を始める。
「栄はついてくるか?」
「うーん、今日は二人でどうぞ。最後に帰ってきてくれればそれで良いですわ」
「そう。腹ごしらえも済んだし、彩希子、そろそろ行くか」
「うん。栄太夫、今日は美味しいご飯を用意して頂いてありがとうございます」
「またいつでもいらしてくださいね。今度は二人でお話してみたいわあ」
「あたしもあたしも!落ち着いたらまた」
「是非に!」
「彩希子ー行くぞ」
「うん!では」
「また!」
三ツ島遊郭浜風屋大玄関。見送りに来てくれた栄に声をかける。
「栄。ありがとな」
「一週間ぶりに会えたと思ったらお食事だけだなんてつれないお方」
「ちゃんと帰ってくるから・・・あと栄、はりきりすぎ」
「それは勿論!恥ずかしく見られたくありませんから」
「・・・」
「・・・?」
「ありがとな」
「・・・はい!お気をつけて」
「行ってきます」
三ツ島遊郭浜風屋正門前。玄関を出るとハリー・ホプキンスより迎えが来ていた。愛車のベンツ190Eを乗り付けた総支配人本多英二その人である。
「支配人直々にお迎え頂けるとは」
「なんだよ始。早いな」
「ご飯食べただけだしね」
「久々に串田のオジキと喋ってたんだからちったあ気使えや・・・ねえオジキ」
「まあワシもお前さんと会うのも久しぶりだったしなぁ。おんなじ町にいるのになぁ」
「まっ、こうやってたまに会うのも良いもんでしょ。じゃ、始連れていきます」
「今日はもう一人いるよ」
「こんばんは・・・」
「おっとそうだった・・・初めまして、クラブ、ハリー・ホプキンス総支配人本多英二と申します。以後お見知り置きを」
「富永彩希子と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「ではご案内します。楽しい時間を過ごす為に、最高の世界にお導きさせて頂きます」
「いつもそんな事言ってるの?」
「うるせ」
クラブハリー・ホプキンス玄関。
「「「「「いらっしゃいませ!!」」」」」
「ハリー・ホプキンスにようこそ!」「支配人一行、ご案内します!」「上の階へ階段でどうぞ!」「お荷物お持ちします!」「足元の段差お気をつけください!」
「すっごい賑やか!すっごいワイワイしてる!」
「お気に召しましたか」
「すごーい!こんなところに来るの初めてー!」
「初めてが我々の店で良かった。そこの席です」
「どうぞ!」
「はーい」
「丸椅子持ってきてくれ。俺がそれに座る」
クラブハリー・ホプキンス二階テーブル席。
「案外こじんまりした席だね」
「俺が座るのはいつもここなんだ」
「ここなら一階の座席とステージも含めて全て見渡せることが出来る。モニター室以外じゃここが全体見るのに最適だ」
「何かあったら直ぐ飛び出せる」
「ふーん」
「折角だから彩希子さん。始の向かいに座ってみませんか」
「?はい」
「支配人」
「折角初めてのお客様、しかも始のお連れ様なんだからこの店を堪能してもらわんと」
「ったく・・・」
「失礼します」
「!」
「来たか」
「ん」
「初めまして彩希子様。神宮寺彩と申します」
「坂田ルミです!」
「・・・あーなるほど。お隣、失礼致します」
「!」
「ルミちゃんは始君の隣に」
「どうぞ」
「失礼します!」
「!!!めっちゃ美人っ!凄いね始君!こんな人と知り合いなの!!?」
「まあー、な」
「えー、この方は始君の・・・」
「フィアンセです!」
「「「「!」」」」
「どや」
「・・・はあ」
「かましたなー、なあ始」
「なんすか・・・」
「ふぃっ、ふぃあんせ・・・」
「大丈夫?ルミちゃん・・・」
「こんなことを堂々と・・・始さん凄い」
「何がだよっ!」
「まあ追々だ、とりあえず飲むぞ。始、今日は呑んで良い日なんだな」
「ええ。ビールと柚子小町を」
「ボトルはまだ残ってる。ゆっくり呑むか」
「彩希子様・・・あ、奥様は何を呑まれますか?」
「彩さん!?」
「始君!奥様だってえ~!エヘヘヘヘ!!」
「・・・何呑むんだよ」
「ヴーヴください!」
「えっ、いきなりシャンパン!?」
「はいっ!お願いします!みんなで一緒に!」
「おっほほほ。ご相伴に預からせて頂きましょうか」
「お願いしまーす」
「・・・」
「それではっ」
「支配人」
「何年振りかの二人の再開と、彩希子さんの我がハリー・ホプキンス初来店を祝してっ」
「乾杯!」
「「「「「乾杯ー!!!」」」」」
「はー!美味しー!家とかパーティーで呑むのとはやっぱり違うなー!」
「ご自宅でも呑まれるんですか?」
「作品書き上げたり、なにかしら一区切りついたら呑みますね!折角良い原稿料頂いてるんですから、折角だし!」
「いつもシャンパン開けるの?」
「そうですね!ヴーヴが多いですね」
「はー、よく呑むんだ」
「賞頂いた時はドン・ペリ空けました」
「ほー」
「意外と呑むな、俺とは大違い」
「始君はここに来るときは何呑んでるんですか?」
「始さんはお仕事でいらっしゃいますから・・・」
「いっつもジンジャーエール」
「そういえばプライベートとか太夫と来る時もジンジャーエールだな」
「へえ」
「車乗るからね。プライベートだとバンシィの方がよく行くから」
「ウチ高いもんな」
「でも高いなりのお店じゃないすか。自分の懐は弁えてるつもりです」
「一応黒刻町一番だしな。彩達のおかげで」
「わかってるならよし」
「でも柚子小町のボトル置いてるのはなんで?」
「ついてくれる女の子用」
「ウチに置いてある中で一番味が優しい」
「私達の為に置いてくれてるんだよね」
「そのかわりスイスイ呑めるから二回に一回卸してるけどな」
「へー私呑んだことない」
「お作りしましょうか」
「ルミちゃん、彩希子に作ってくれる?」
「かしこまりました!」
「あ、ほんのり柚子の味がする・・・」
「でも焼酎なんだよ」
「うん、確かにスイスイ呑める。おいくらなんですか?」
「割と安め」
「でもここで卸される方あんまりいないです。リピーターだと始君とあと片手で数えられるくらいしか」
「皆様女性ですよね」
「そうだな。まあゆったり呑むにはちょうど良い。酔いは回りづらいけどな」
「俺の席ついたらその後また他のところにいくんだし、ちょっとでもクールダウンになれば良いだろ」
「優しいねえ・・・」
「それは別問題」
「いや、お優しいですよ?」
「お優しいエピソードあるの?」
「初めてついた時にグラスのジンジャーエールを始さんの服に溢したけど怒りませんでした」
「ああ、あれな。あのスーツ防水だもん」
「あたしのせいでお勘定一万円間違えた事あった」
「そんなこともあるよ」
「仕事関係無いのにトラブルの仲裁に入ってくれたな」
「距離近かったんで状況は把握出来たから」
「優しー」
「たまたまだろ」
「そういうとこだぞ」
「いつも助けてもらってる」
「たまたまだよ」
「いやいやいや」
「昔からねー始君はねー」
「昔からなの!?」
「誘拐されたの助けに来てくれた」
「「「誘拐!!?」」」
「あったな」
「小学生の時。あの時ちょっと距離開けたんだよね」
「喧嘩吹っ掛けられ続けてな。いつも一緒にいたけど間に合わんて思ったからちょっと距離置いたんだ」
「あ、ごめん始君。それ関係ない。あとそれ幼稚園の時」
「あれ、そうだっけ。あ、そっか」
「そうよ。不審者があたしの家の周りをうろつき始めてさ」
「こいつ遂に捕まったの」
「「「うえー」」」
「それが連続誘拐犯でさ。家連れてこられたらあたしくらいの女の子が三人いたの。それを始君が助けに来てくれたの」
「中森家でな」
「小学生でしょ。太刀打ち出来たの?」
「切り込み隊長始君だから。あたし覚えてるよ、最初ひっそり侵入してさ「助けに来た」だって!」
「「「カッコいい~!」」」
「それでドア開いて野郎が入ってきたら確認して顔面にドロップキック!」
「「「おおー・・・」」」
「倒れた相手の顎に更に蹴り!」
「「「おおー・・・」」」
「大の字の相手の腕をふんづけながらマウントポジションでタコ殴り!ヤバかったけど・・・嬉しかったな・・・」
「始君ヤバ・・・」
「そんなに今と変わんねえな」
「変わるわ」
「えっ、さっき言ってた距離開けたってなんですか?」
「ああ、彼すっごい喧嘩吹っ掛けられてたの」
「年上バッカリに」
「元々道場行って拳法やってたんだけどワケあって辞めて・・・そしたら他の門下生が裏切り者扱いしてきたんだよね」
「武勇伝語るワケじゃないけど当時は1対3なんてザラだからな」
「そんな環境でさ。小学生の男の子が一人の女の子を守れるかっつったら守れないでしょ!!」
「いつも一緒にいたの?」
「ホントにいつもです。だから一緒に戦ってた」
「一緒に!!?」
「でもさ。嫌じゃん、女の子が男と喧嘩するんだぜ?味方が増えたのは良いことだけど流石にな・・・」
「で、一回別れたと」
「幼稚園以来のカップルだったのに。そしたら私が狙われちゃって。私を襲えば中森が出てくるだろって・・・そしたら」
「そりゃ行くだろ」
「「「カッコいい~!!!」」」
「それからずっと一緒だったよね」
「小中高ずっと。だって心配だもん」
「あたしだって心配だったよ!」
「だって俺おば様に・・・あ、やめとこ」
「何よ!いーじゃんこの際!!」
「えー」
「言ってよ!!」
「叔母様から・・・「あの子の事守って頂けますか」って言われた」
「母様から!?」
「俺覚えてるよ。お前ん家遊びに言ったとき叔母様から呼ばれてさ、正座して」
「う、うえ~・・・」
「小六の時」
「そっ、そうだったんだあ~・・・」
「高校だってあの流れだと普通とっとと転校だぞ」
「「「高校?」」」
「いや、あれはさ~・・・」
「高校はどんなだったんだ」
「漫画みたいに荒れ果てててさ。ホントに」
「私達が入学する半年前に急にドロップアウトしてて」
「説明会の時は良い学校だったのに・・・」
「そんな中で不良の仲間入りで喧嘩三昧?」
「いや、その逆」
「「「逆?」」」
「生徒会が潰れてたの。生徒会もドロップアウトしてたから」
「それを始君がさ「無いなら俺らで勝手にやりますね」って校長先生の前で啖呵切ってあたし達で生徒会やりますーみたいな」
「えっ、もしかして生徒会が新しい勢力として・・・」
「そういうこと。そんでやっぱり一番強いの」
「所謂テッペン・・・」
「取っちゃった」
「そこから学校改革」
「忙しかったねー」
「ずーっと忙しかった」
「黒刻町にも一回来てるもんね」
「えっ、そうなの?」
「関東関西ヤクザの大抗争があってその中心にいたのはウチの後輩だったの」
「えっ」
「そいつに責任能力ないんだからさ。色々話し合って組の皆様に集まってもらったのが黒刻町だった」
「そこで彩雲会の先代・・・沢井さんと出会うんだよね」
「先代・・・沢井宗一郎さんか。もう亡くなられたが」
「大物じゃん」
「俺が今入間組に世話になってるのも沢井さんのおかげさ」
「あ、シャンパン切れた」
「柚子小町呑むか?」
「も、呑むけど・・・」
「あ?」
「モエシャンドン!」
「「「「!!!!」」」」
「おい、大蔵省は始か?」
「いや、俺のつもりだけど・・・」
「いいよ!あたしが払う!」
「おいおい大丈夫かよ」
「大丈夫!任せなさい!!」
そんなところから更に呑み・・・流石に四本目開けたようとしたときには止めた。
会計が終わり・・・。
クラブハリー・ホプキンス玄関前。
「よく呑んだな彩希子ちゃん。凄いなお前のフィアンセは」
「フィアンセじゃない・・・呑むっつーか高い。ありがとうございました」
「始君、今日の事全く気にしないで良いからまた来てね」
「気が引けるよ全く・・・彩希子行くぞ」
「この度は大変楽しい時間を過ごさせて頂きました。これからも始君をお願いいたします」
「うん。またゆっくり来てな」
「それでは」
「「ありがとうございます!」」
黒刻町メインストリート。
「呑んだねーっ!!」
「呑み過ぎだよ」
「折角だしねーっ!!」
「いっつもこんな呑み方してんのか?」
「いや?だってそもそも外に呑みに行かないもん。居酒屋さんすら無いよ。そういうパーティーと家だけ」
「そういう店でお金使ったことは無いのか」
「無い。今日が初めて」
「そうかあ」
「次は?どうするの?」
「次で今日はおしまいにする」
「そっかー」
「ここの九階」
マチルダビル九階、バー・バンシィ。
「いらっしゃい。待ってたよ」
「こんばんはマダム」
「わー綺麗なお店」
「カウンター席へどうぞ♪」
「どうもー」
「お邪魔します」
「この子が彩希子ちゃん?」
「そう」
「はじめまして。富永彩希子と申します!」
「バンシィへようこそ、摩子でーす」
「始君!摩子さんも綺麗だねーっ!!!」
「あらあら」
「そうな」
「そうなって何よー。折角ワイン置いといたのよ?二人が来るって言うから」
「え、なにそれ」
「じゃーん、コルギン」
「「」」
「あれっ」
「こる・・・ぎん?」
「あれよ、島耕作で一瞬出てきた」
「へ、へー・・・」
「あれっ、知らない?」
「俺・・・ワイン呑まないから」
「あたしも・・・」
「ガビーン・・・そういえば始君、ワイン呑んだところ見たことなかったわ」
「赤白両方苦手で・・・呑めるけど」
「あたしもスパークリングワインなら・・・」
「そ、そうだったの・・・」
「でも折角マダムが用意してくれたんだし」
「どんなのか呑んでみた~い!」
「ごめんね~・・・」
「私達まだまだお子様だね~」
「大人はこれを上手いと思うのか・・・」
「大丈夫よ!これから覚えていけば良いのよ!」
「酒呑み初めて五年経つんだけどな・・・」
「新しいモノにはやっぱり挑戦しないとですよね!」
「そうねえ・・・私も呑んだことないお酒、呑んでみたいわねー」
「始君ってこの店ではいっつも何呑んでるの」
「ハリー・ホプキンスほどじゃないけどウチも仕事で来てくれてるから・・・」
「最近流行りのクラフトコーラとか」
「あとジンジャーエール」
「どこでも呑むな」
「仕事抜きで来てくれる時はバーボンのボトル置いて頂いておりますのでそちらを」
「バーボンとコーラ合わせてコークハイとか」
「呑みたい!」
「良いの?」
「好きに」
「ではでは頂きます」
マチルダビル九階バー・バンシィカウンター。
「むぅ・・・」
「寝ちゃったね」
「ウイスキーには弱いのか。勉強になった」
「どうする?だいぶ呑んだみたいだし、帰る?」
「そうする」
「お疲れ様で~す」
「大悟」
「お疲れ~」
「そろそろかな~って思いまして」
「ドンピシャだぜ、送ってくれる?」
「車回して来てます、姉さんは・・・」
「俺が運ぶよ。ご馳走さま、マダム」
「また来てね~」
大悟が運転するマークⅡで栄の待つ浜風屋へ帰る。
「楽しめましたか」
「皆に周囲を警戒してもらってたからそこそこ楽しめた・・・けど」
「けど?」
「どうもなあ・・・視線を感じるというか」
「とりあえず、兄貴に頼まれてたあれ。今日来た新参者の写真と個人情報はまとめてありますんで、明日にでも届けます」
「助かるよ、ありがとう」
「警護しながら賊も見つけなきゃいけないなんて・・・兄貴の仕事なんですか?」
「俺の仕事だよ、誰にも渡さない。一番良いのは手を出されない事何だけどこれだといつか俺達側に限界が来る、事実今日の外出はその限界が来たんだからな」
「次に良いのは・・・」
「手出される前に仕留めておくことだろ。その為には目星着けないといけないよな」
「確かに.・・・」
「まあまあ、取り敢えず今日感じた視線からして人間だってのは分かった。バケモンとかの類いじゃなくて良かった」
「広いなー、範囲が広い」
「とりあえず無力化出来るから」
再び三ツ島遊郭浜風屋正門。
「着きました」
「ありがとう、助かった」
「何かあったらいつでも呼んでくださいね。出来ることなら力になりますんで」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
「旦那ぁ」
「串田、ただいま」
「それを聞くのも久々ですなぁ」
「栄は?」
「お部屋にいらっしゃいます。旦那を待っておられる」
「しょうがねえな。紫電、雷電」
「「はい!」」
「彩希子を寝かせてやりたい。いつものところの隣は空いてるか」
「そう言うと思って空けてあります!」
「お布団も敷いてる・・・」
「銀河ちゃんと飛龍ちゃん」
「「はい」」
「彩希子の湯浴み、任せられるかい」
「お任せください」
「お眠りになったまま綺麗にして差し上げます」
「助かるよ、風呂まで運ぶからそこから先はお願い」
「「かしこまりました」」
「兄いは風呂どうしますか!」
「栄に会ってからだ」
「分かった・・・」
浜風屋15階甲の間。
「栄」
「始様!」
「ただいま」
「おかえりなさい。ジャケット貰います」
「彩希子のヤツ滅茶苦茶だ。シャンパン3本も空けやがった」
「流石は流行作家ですわ」
「にしても空けすぎ。自分で払うからって・・・」
「楽しかった?」
「楽しかった・・・このまま風呂に入るよ」
「彩希子様は?」
「銀河ちゃんと飛龍ちゃんに風呂入れてもらってる」
「・・・一緒に入るの?」
「・・・?・・・いや、一人のつもりだった」
「お一人で入られますか?」
「栄、今日は自重して。ごめん」
「ふん、ごゆっくり」
「栄」
「なんにもありませんわ」
「なあ」
「フィアンセとか元カノとか別に気にしてませんしー」
「さっき仲良さそうにしてたじゃん」
「それとこれとは別ですわ」
「・・・」
「始様」
「はい」
「どっちの方が好き?」
「うわっ」
「うわっ、て何よ。真剣に聞いてるのに」
「なんとなく聞かれると思ってたんだけど…」
「迷うんだー」
「栄が好き」
「え・・・?」
「栄が好きだ」
「即答するとは思わなかった・・・」
「風呂入ってくる」
「あっ・・・」
「なんだよ」
「いっ、いえ・・・いってらっしゃいませ・・・」
「うん」




