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侵略者を撃て

 2003年9月12日午前5時。三ツ島遊郭浜風屋正門前。ビル制圧に向かう日の朝。始がユリを助け、不死鳥会に応援要請の挨拶に向かった次の日の明朝。愛する男を待つ女一人。

「始様・・・」

「太夫。もう朝でさぁ。今日は店に泊まって行きなされいぃ」

「そうしようかな・・・」

「タマぁにこうやって旦那が帰ってこねえ日があるってぇのにぃ、この子と来たらずーっと待ってんだからぁなぁ」

「だって・・・心配だし」

「ちゃーんと帰ってくるからぁ。帰ってきたら起こしてあげまさぁ」

「むー・・・」


 パシューン・・とよく聞く音。独特のエンジン音が奏でられとある車が止まったことを示すブレーキの音が鳴る。

「!」

「どげんしたぁ?」

「ロータリーエンジン・・・入間組のFD3S!大悟君!始様だわ!」

「うええ!!?」














「じゃあ兄貴。ひとまずはお休みください」

「大悟もな。色々付き合わせてすまん」

「良いんですよ。じゃっ」



「始様ああ!!!!!」

「うわっ、栄。起きてたのか」

「お待ちしておりましたわ!ご飯にします!?お風呂にします!?それとも!」

「お風呂。流石に靴下の中ムレムレ。肌も限界目も限界。早くスッポンポンになりたい・・・」

「やぁだ始様ったらスッポンポンだなんてハレンチぃ!!」

「ハレンチの擬人化が何言ってんだ・・・」

「まっ、始様ったら私の事そーいう風に見てたの!?」

「だってハレンチじゃん。存在がエロいじゃん栄って」

「ヒドーい!!!」

「だからあんまり周りの奴等に見せたくないからちょっと遠めで降ろしてもらったのに・・・」

「?」

「なんでもない。栄は寝なさい。もう朝だぞ」

「始様と一緒に入ってからー!!!」

「はいはい」
















 三ツ島遊郭浜風屋大浴場。珍しくはないが栄と一緒に風呂に入る。

カポーン

「ブクブクブクブク」

「お湯加減如何ですか?」

「バッチリ。栄は?熱くない?」

「私もバッチリ♪」

「あー久々に走り回ったー・・・」

「もうお仕事は終わりましたの?」

「いや・・・まだ」

「まあ」

「あー・・・」

「?」

「・・・」

「・・・」

「栄」

「はい」

「おいで」

「・・・!」






























「死ぬつもりなんてサラサラ無い。でも生きて帰れる保証なんてそんなもんこの世には存在しない。だから苦労はかけるけど。ちゃんと帰ってくるって。信じて待ってて欲しい。ここが今の俺にとって帰るべき場所だから」

「勿論ですわ!貴方を信じて・・・帰ってこなくても帰ってくるって信じてますから。ずっと、待っています」

「すまんな」

「私専属じゃ無かったの?」

「栄専属だよ。だから・・・栄のところに帰ってくるんだ」















そして











 手塚ゴルゴスビル屋上。

「野郎共。用意は良いか」

「目標はビル制圧並びに中の人間全員の無力化。一人も逃してはならん。風のように行こう」

「時計合わせ!」



 10時になるとともに作戦が始まる。目標のビル地上周辺を固めるのは彩雲会直系響一家の受け持ち。隣接する建物には入間組が待機。突撃部隊は不死鳥会と俺。

 予定通りの屋上からの侵入。レーザーで屋上ドアの鍵を焼き切る。踊り場から下の階を覗く。一人の見張りが立っている。最上階の部屋は祭壇となっているが実際はタダのヤリ部屋で出来るだけ天に近いところで心を解放することで天から降り注ぐ快楽のエネルギーに包み込まれるらしい。阿保臭。

 




 キュッ♡と即座に見張りを絞め落とす。声を出させないように手早く。

 ドアをソッと開ける。三人ばかり部屋の掃除を行っている。昨日見た奴等と同じ格好をしているので掃除業者ではない、ということを確認してからこちらは六人がかりで無力化する。絞め落とし、裸にひんむいて縛り上げて屋上に転がしておく。当然目隠しと猿轡も抜かり無し。風邪ひくかもしれんが知ったことではない。

 トイレや隠し部屋の捜索も抜かり無しと流石にプロだけの事もある。関心してその手際の良さに思わず見入る。

「中森さん。こんな感じで・・・大丈夫か?」

「ああ・・・手際の良さに見惚れちゃって」

「見惚れるようなもんじゃねえだろこんなもん」

とは若頭で今回の行動隊長の相原龍。


 



 この調子で地下を除く全階をあっという間に制圧。捕縛した敵は全部で二十人ほど。呆気ないとは正にこの事。










 手塚ゴルゴスビル一階。

「あっれーもうちょっと苦労して二階制圧する頃には異変に気付いた奴等が騒ぎ出すと思ったんだけどな・・・」

「あんたの立てた作戦が俺達にばっちり嵌まっただけじゃねえの。不殺ってのは中々難しいもんだが・・・」

「まっ、俺達も一応はプロって事だ、アミーゴ」

と幹部の斑鳩譲二。

「龍さん。屋上の捕虜は全員反対側のビルに移送完了しています」

「おお未来。これであとは・・・」

「親玉の大僧正ってわけね」

「万里奈。異変は無いか」

「うーん・・・逆に静かすぎて不気味だわ」

「中森さん。次の地下室がこれで最後だが今まで通りで良いか」

「地下は他の階と違って複数の部屋に別れているワケじゃない。あるのはエレベーター乗り場と集会場みたいなだだっ広い部屋のみ。その奥には僧正用の脱出孔がある」

「なんか単純な作りだな」

「元々は飲み屋が入る雑居ビルだからね。」

「始さんはなんでこのビルを敵が選んだと思います?」

「?選定理由ってこと?うーん・・・町の外れだから目立たないように?かなあ」

「未来。なんでそんなこと聞くんだ?」

「気になったんです。中のお店全部追い出せるくらいの財力があるのになんでわざわざこんな端っこを選んだんだろうって」

「大っぴらにやると目立つからじゃねえか?」

「未来はどう思うんだ?」

「分かんなくって。それで始さんに聞いてみたんです」

「多分・・・」

「お」

「目立たないってのも一つの理由なんだけど、もう1個多分理由がある」

「それって?」

「それよりもまず」

「そうだな。最後を制圧せんと」

「宗教団体絡みだからな。防毒マスクつけていこうぜ」



















 


 手塚ゴルゴスビル地下一階。地下のドアを開けると一人の男が部屋の真ん中に鎮座していた。高橋徳太郎その人である。

「高橋徳太郎ってのはおまえか」

「ようこそ社会のゴミ共。私は君たちが来るのを待っていたのだ」

「なに?」

「歓迎するぞ。なんなら外で見張ってる連中も呼んだらどうだ」

「貴様の企みは全て暴かれている。潔く降伏しろ!」

「ハッハッハ。まあまあとにかく座ってくつろいで。折角ここまで来てくれたんだ。冥土の土産に私の真の目的を教えてやろうじゃない」

「真の目的?」

「そうだ。わざわざ色んな勢力犇めくこの黒刻町に再び騒ぎを起こしたその理由とは!?どうだ、気になるだろう」

「龍さん。他のメンバーを外に出して。嫌な予感がする」

「奇遇だな中森さん。話の内容なら俺の通信機で聞ける。これで筒抜けさ」

「じゃあ龍。私達は外にいるわ」

「いつでも飛び込めるように扉は全部開けて出ていくからな」

「おう、なんかあったら頼んだぜ」

「龍さん!僕も残してくれませんか!」

「未来・・・何が起こっても知らねーからな。良いよな、中森さん」

「若頭が言うんなら文句は無いよ」












「なんだ皆で居てくれないのか、残念」

「聞かせてもらおうじゃねーの。テメーの目的ってやつを」

「私はね、今まで個人でこの聖快教を世に教え、伝えてきた。三年前に神からの啓示を授かり急速にその教えを世に広めてきたのだ。神は言った。私の力をもって全ての女性達に快楽を与えることで人々の心を解放し永久なる世界、ユートピアへと誘うことこそが増えすぎた人類の未来を救う事になる、と。私の洗礼を受けた男達によって女たちはユートピアに誘われる。だがこの国はありとあらゆる邪教が蔓延っている・・・正しき行いをする我ら聖快教とはいえその邪教の力たるや凄絶なモノ。正面突破、正攻法では人類を導く事は不可能。その為に静かに、出来るだけ目立たぬように今まで活動してきた。全ては明日の人類救済の為に」

「ふん」

「ある日の事だ。とある団体が私に接触してきた・・・我々は道を同じくする同志である、と。最初は邪教と疑った・・・しかし!彼らの行く道は我々と大きく似ていたのだ!立ち上がった大首領に集いし優秀な幹部達が人類救済の為に日夜奔走している・・・なんと素晴らしい!」




「大・・・首領?」

どっかで聞いた。どこだっけ・・・。




「私は感動による涙で目が見えなくなった!その涙が収まった時、私は彼らと同志の契りを交わした。私は言った。我々の目的は貴方達のゴール、何かあった時はご助力差し上げると。彼らはこう言った。我らの崇高なる願い、その障壁が存在する」

「むっ、未来。この部屋、換気ダクトはあるか」

「あります」

「片っ端から手榴弾投げとけ」

「分かりました」









 









そういえば最初のスキンヘッドが言っていた。



大首領、と。










「その障壁は大国でも軍隊でも無い。一人の青年、ヤツこそが最大の敵」

 ドカンッッッッッッ!!!!!






「高々若者。只の人間。しかしてその力は強大」

 ドカンッッッッッッ!!!!!







 換気ダクトに仕掛けられた爆弾を処理する不死鳥会の二人。邪魔な換気扇を無理やり銃撃でぶっ壊し片っ端から手榴弾を放り込む。その音を聞きながら・・・。









 





 大首領、その言葉を最初に聞いたのはいつだ。昨日今日の話ではない。俺は・・・。









 






「日本に住むそれを叩けるのは今、聖快教しかいない」

 ドカンッッッッッッ!!!!!









 







思い出す。いつそれを聞いたのか・・・

「その男こそ」

 ドカンッッッッッッ!!!!!












「中森始。お前なのだ」

なんと・・・









 




「BLACKSUTURN・・・」

「思い出したか」

「奴等は・・・」

「まだ存在するぞ」

「Mr.タイタンはもういない!ヤツは祖国で死刑に処された!」

「おい中森さん。Mr.タイタンって・・・いったい何の話だよ」

「そう。彼は死んだ。だがあれは大幹部。大首領は潰えてはおらぬ。大首領あるかぎりこの世から教えは無くならない」

「・・・!」

「驕ったな若人よ・・・我らのこの町での活動はお前を誘き寄せる為のものでもある」

「だからこの場所だと」

「そうだ。お前が毎日、最後にたどり着くこの場所で我々はお前を待っていたのだ・・・私達にとって黒刻町、彩雲会など取るに足らん」

「なにっ」









 














「怖いのは中森始。君だけだ」









 














「通気孔に仕掛けた爆弾も処理されたか」

「やっぱり仕掛けてやがったか。てめーの身は彩雲会で預かる。二度と日の目は見られない事を覚悟してもらおう」

「私の役目は終わった。我等の教義は彼等と融合し、より高きところを目指していくだろう」

「役目は終わった、だと?」

「中森始よ。私はこの町に来て暫くお前の行動を見ていた。お前は現状に満足しているのか」

「あ?」

「彼等がお前を恐れる気持ちがよく分かる。身に纏うそのオーラ、内に秘めるその力、只の人間でも勿論分かるのだろうが我々のようにある道を極めた者にしか分からないお前のその凄さ・・・なぜお前が我等の同志では無いのか・・・とても残念だ。お前程の力があれば。お前程の能力が備わっていれば。この世の中ごとユートピアへと持ち上げる事が出来るというのに・・・」

「・・・」

「中森さん・・・」














「ユートピア・・・それはな、人それぞれの心の中にしか存在しない」

「なんだと・・・?」

「ユートピア・・・理想郷か。それは自分自身だけで目指すモノだ。周りの人間は巻き込んじゃ駄目だろ。俺の思想では他人のいる理想郷ではそれぞれの感情に差異が無くなる。皆同じように笑って喜んで・・・」

「それの何が悪いんだ。皆がずっと笑ってられる世界!素晴らしいじゃないか!!悲しみのない世界!素晴らしいじゃないか!!」

「それはもう人間じゃないよ。生きる屍だ・・・悲しい事があっても笑うのか?違うだろ。悲しい事があれば悲しくて泣いたり勝負事に負ければ悔しくて怒ったり・・・感情の起伏こそが人間を人間たらしめるんじゃないのか?天国って行かせて貰うところなんかじゃない。精一杯誠実に生きた結果なんだ。それが出来るのは自分自身しかいない」

「今の世界でそんな生き方が全員出来るわけがない!だから神が存在する!その神の言っている事を理解出来る人間が神の存在を感知出来ない人々を導いてやるんじゃないか!!」

「神はそこまでお節介焼きじゃねえよ。それに神は人間だけに肩入れしてるわけじゃない。まるで人間が世界を導く存在みたいに言うがそれは俺達人間のイメージさ。カマキリが世界を導く存在だったらお前は文句言うのか?もし俺に世界を導く力があるなら・・・そうだな、お前らみたいに自分の願いや欲望の為に人々の自由と平和を脅かすようなヤツを潰して回って戦いの中で死んでやろう」







 













「世界を導くのは・・・大首領だ」

「そうか、ならば潰す」



















 






「若頭」

「ん?」

「行こう」

「ああ」








 





手塚ゴルゴスビル前道路。

「中森さん。あんた中々高尚な考え持ってんだな」

「高尚か?」

「高尚さ。俺はそこまで考えらんねえ。日々必死こいて生きていくのが精一杯さ」

「それで良いんじゃないか?」

「そうかな」

「笑って泣いて・・・喜んで怒って・・・悩んでスッキリして・・・それが人間だろ」

「そこまで出来てんのかねえ、俺」

「出来てるから今も生きてる。あんたは人の生き死を強制的に選ばせるのが仕事なんだろ?だったら迷ってほしくはないな。もっと笑ったり悲しんだり出来た人たちの為にも」

「俺の仕事は・・・下卑た笑いをやる奴等にもう笑えないようにさせることだ。迷いなんてねえよ」

「覚悟を持つ良い目だ。またやろう」

「中々変わった仕事だったぜ。あんたとやる仕事は刺激的だな」

「俺にとっては心配事が増えただけなんだけど」

「こうやってドキドキすんのも人間らしさかな」

「そういうことだろう」

「またなんかあったら言ってくれよ。困ったことがあったら・・・微力ながら尽力させてもらうぜ」

「ちゃんと自分の仕事しといてくれたらね」

「ぬかせ」




























 

 ランカスターマンション206号室。ピンポーン

「誰だあ?」

「俺です。大悟です」

「お休みなんですけど」

「この時間なら起きてると思いまして」

「ピンポンで起きたわけじゃねえから。そこんとこよろしく・・・で何」

「色々と報告が」

「今晩事務所寄るだろ、そんときじゃ駄目か」

「急ぎでお耳に入れたいことも・・・」

「しょうがねえなあ、上がれよ」

「お邪魔します」











「オレンジジュースしかねえぞ」

「お構い無く・・・太夫はいないんですか?」

「仕事行った。俺が動き出すの夕方からだし、栄も気使って起こさず行くんだ」

「寂しいでしょ」

「まーな。ま、明日は1日中一緒に居るし・・・で、報告って?」

「ああ、えーっと、聖快教の事から。構成員は全員北の農場に送り込みました。今頃は馬糞と牛糞と土にまみれてると思います」

「ふーん」

「あと教祖の高橋ですが」

「うん」

「死にました」

「ふーん」

「あれ、興味なさそう」

「うん、興味無い」

「取り敢えず死因は爆死です。もともと服の中に仕込んでたんですが・・・」

「俺が仲間になると思ってその当てが外れたから呆気にとられてあの時死ねなかったんだろ。だからあんな台詞しか吐けなかったんだ、くだらねえ」

「地下牢への移送三十分後に比較的小規模な爆発で死んでいるのが発見されました。火薬量から推察するに最初から自害する気だったみたいです」

「最後まで阿保だな」

「おかげで業者呼んで火葬して・・・大変でした」

「ご苦労様」

「あと」

「ユリだな。これからどうすんだ」

「他の被害者たちも含めて響一家のあしながの会やZEROの方でメンタルケアを進めていきます。で、ユリなんですけど・・・」

「なんだよ」

「その・・・」

「ハッキリしねえなー」

「始の兄貴からも説得して頂きたく・・・」

「?」

























 

三ツ島遊郭浜風屋玄関。

「栄っ、栄はいるかっ」

「旦那ぁ」

「串田っ」

「待っとりましたあ!」

「新しい女の子が入ったと・・・」

「その件、保留にしてますぅ」

「ほっ、保留・・・」

「太夫と一緒でっさかい案内しまさぁ、なんせ私らも急な申し出やったさかい・・・」


「栄っ」

「始様!」

「ユリは」

「こちらに」

















「ユリ・・・」

「初めて名前を言うね、中森始」

「体は?もう良いのか」

「うん、だいぶ良くなった」

「何でここにいるんだ」

「私の事、助けてくれるんでしよ」

「ああ」

「じゃあちょっとでも近くにいた方が始も楽じゃない?」

「ほほう、そう来たか、想定外。どうしよう栄」

「自分の蒔いた種!」

「成る程確かにここにいたら俺に守られやすい。誰から聞いた」

「大悟」

「俺も大悟に聞いた。お前がここにいるってんで慌てて飛んできた」

「あたしの為に?嬉しいな」

「そうさ、お前の為だ。ここはお前の居場所じゃない」

「もう家は無いんだよ。お母さんもどっかへ連れてかれた。あたしはもう一人。居場所なんて」

「なに言ってんだよ。あるよ、帰る場所」





















 

黒刻町南地区児童養護施設あしながの会。

「ここは?」

「あしながの会。ここが今日からお前の家だ」

「私の・・・」




「あっ、始お兄ちゃんだ!」

「「「お兄ちゃん!!!」」」

「おーう、愛しきチビ助達。元気にしてたか?」

「してたー」「ねー遊んでー?」「バスケ教えてー」「ねーこのお姉さん誰ー?」「すっげー美人!」

「美人・・・」

「・・・明日からここでみんなのお世話をすることになったユリ先生だ」

「えっ!?先生!!?」

「ホントー?」「やったー!!」

「ほらっ!皆なんか忘れてねーか?」

「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」

「・・・!!!?」

「ユリ先生は皆とこれから一緒にも暮らす事になったんだ。よかったなー」

「!!!!?」

「やったー!!」

「よーし、じゃあみんな。この施設をユリ先生に案内してあげてくれ!」

「「「「はーい!!!」」」」

「こっちだよー!」「ちゃんとみんなでいくんだよ!」

「???」

「取り敢えず行ってこい」

「???うん?」




「始」

「響さん」

響一家組長響郷輔。ヤクザとして海外勢力への抑止力として君臨する鬼。反面この児童養護施設あしながの会や更生支援組織ZEROを運営している。

「この件、お世話になります」

「しょうがねえなあ!ここはいつでも人手不足!ああいう若い子が来てくれて、俺達も助かるぜ」

「この子達とおんなじ立場で世話になるのも有りだとは思ったんですけど、それだと成長しないかなあって。色々あって自分の殻に閉じ込められた子なんで」

「まっ、仕事つっても文字通り子どもたちと1日中遊んで貰うのが当分の内容になる。まっ、中々ハードだが、心身ともに健康になる筈だ」

「今のユリにはそれが必要です。俺といることよりも、ああやって色んな感情を抑えないで出す事が」

「週一くらいで様子見に来いよな。それもお前さんの」

「責任ですよ。伸ばした手を掴んだ者の責任。俺はこれからも掴み続けるし、また新しく掴んでいきます」









「まあまずは環境に慣れるところからだな・・・」

「始、なんで子どもってこんなにパワフルなの!?どんだけ走っても疲れないんだけど」

「走ってるつもりがねーからだろ。ほらユリ先生!子ども達が呼んでるぞ」

「「「「「「「先生!!!!」」」」」」」

「教職免許なんてもってないっつーの!ていうかあたしまだ17だし!!!先生じゃないしーーーー!!!!!」

「うん、健康的」



 再び三ツ島遊郭浜風屋。

「はーただいま」

「始様!お帰りなさいませ!」

「なんとか放り込めた」

「お疲れ様でした。あのままですと私達は雇い入れなければならない方向でしたから・・・なにせ始様がお助けになられた人ですが状況が状況ですからあまりこういう仕事はさせたく・・・」

「よく踏みとどまってくれた。恩に切るよ」

「・・・っ!はいっ!私、とっても我慢しましたわ!!」

「自分で言うのかよ」

「我慢したご褒美~!」

「はいはい」






「ふう」

久し振りの大仕事を終えた。血を流さないように頑張ったつもりだ。だがどうやら人一人分、血が流れたらしい。やはり完璧に仕事をこなすというのは・・・難しい。死んだのは一人。色んな人間を陥れ、色んな人間の人生を滅茶苦茶にした、そんなヤツ。だけども。












「あいつも人間なんだよな」

残念なのか?悔しいのか?悲しいのか?

スッキリしたのか?達成感を感じたのか?喜ばしいことなのか?

 なんだこの感情は。こうやって自分の近いところで人が死ぬというのは・・・なんなんだ。

 若頭に迷わないでと言った手前。俺自身が迷っている。

 横では栄が眠っている。スヨスヨと安心しきった寝顔を俺に見せながら。

 

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