ロキ対教師
「ジークね…思ったよりも優秀な男だ」
少し前
ロキは堂々と校舎を歩いて進んでいく。すると部屋に生徒が固まっている。
「保険になるか…」
手を伸ばした瞬間に飛んできた弾丸が手の甲を掠る。
銃弾が飛んできた方を見ると有名な男が立っていた。
「二丁拳銃で戦う冒険者…最近は教員を始めたと聞いていたが…本当とはな」
ジーク…Aランクの冒険者。多くの犯罪者や暴力団グループを壊滅させ一部ではかなり有名になった実力者。
しかし、急に冒険者を辞めたと思ったら教員になるなんて誰が予想しただろうか。
「意外な相手だったが良かった。今日のメンツでお前を倒せそうなのが俺含めてもほとんどいなかったからな。お前を処理するのは俺が確実にやっておきたかった」
誰だこいつは?
だがこの圧は今までに感じたことがないレベル…戦ってみなければ正確な戦闘能力は分からないがどれだけ低くても俺と同じ。
いや、希望的観測になってるな。どれだけ低く見積もっても俺より圧倒的に上。
俺がやるべき事は、生徒の危害が及ぶ前に増援が来るまで耐える。
だが、攻める意識を忘れないこと。
あとはまぁ…命をかける覚悟ってところか。
「考えてはまとまったか?」
ロキは俺の様子を観察しながら話しかけてきた。
「待っててくれたのか。優しいな」
「じゃあそろそろ始めようか。時間をかけすぎても意味ないしな」
ロキは両手を軽く広げながらジークへ続ける。
「じゃあ、さっさとかかってk」
ズドンッ
言い終わる前に早撃ちで攻撃した。予備動作もほぼ無かったはず。
じゃあ何で、
「これだけの破壊力があれば不意打ちには結構使えそうだな。発砲音だけは少し大きすぎるが」
完璧に防がれるんだよ。
ロキは自分が作り出した金属の壁を触り感心している。
「だが、これはお前の本来の戦い方じゃないだろう。こんな銃弾程度、人なら意味はあるが冒険者なら魔物とも戦っていたはず。魔物相手には通じないだろう」
魔法での攻撃は不意打ちに適してないからな。
この方法なら初撃が外れても2発目も能力を使って不意打ちみたいに攻撃が出来るはずなんだが…
こちらの戦闘スタイルを始まる前からかなり分析しきっているロキは、早く撃ってこいというようにゆっくりとこちらへ歩いてくる。
もう銃弾は意味ないな。
二丁拳銃の中にある魔石を通して魔法を撃ち出す。
炎属性のジークの魔法は銃口から激しく轟音を立てロキへ襲いかかる。
何発も何発も絶え間なく二丁の拳銃を同時に撃たないようにし相手に反撃のタイミングを渡さない。
「破壊力が高く連発出来るのか、確かにこのスペックならこっちは反撃するどころか守り切ることも難しいな」
「まぁ、対処法は何個か予想つくが」
そう言ってロキは体制を低くしものすごいスピードで近づいてくる。
防ぐのではなく避けながらくるのか、だとしてもどうやってこのスピードで…
地面が歪んでいる…なるほど、地面を流動的に動かして走りにさらにスピードを足してるのか。
「だとしても守り捨てるのはいかれてるだろ」
「銃口を見ればある程度どこに攻撃くるかぐらい分かるだろ」
そう言いながら真ん前まで迫ってきた。
お互いに間合いに入った。この距離じゃ勝つ確率はほぼ0。
「確かに凄いが、この能力はこういう使い方も出来る」
ジークはロキを狙わずに地面を撃つ。
すると反動で後方へ吹き飛ぶようにジークは飛んでいく。
受け身を取りながらすぐに体制を立て直し銃口をロキへ向ける。
「へぇ」
だが距離を取っても意味はない。逃げすぎたら奴の標的は生徒になる。俺はこれ以上これは使わずに時間を稼ぐもしくは倒さなければならない。
「確かに俺から距離を取るのは正解だ。だが、どうやって攻撃を当てる?攻撃の方向も知られていて
早撃ちをしてもこれほど遠ければ防ぐのも避けるのもかなり楽だ」
吠えてろ!
再び早撃ちで二丁拳銃を撃つ。
そんな弱点を見逃すわけないだろ。銃口で攻撃の向きがバレる事は最初に俺自身が思っていた事。だが銃弾と魔法は違う。魔法は軌道を曲げる事も出来る。
ロキが首を傾ける形で避けた瞬間に真横に曲がりロキを襲う。
ズドーン!
爆発音が鳴り煙が立ち込める。
煙が晴れるとそこには壁を作り身を守っていたロキがいた。
「反射で守ったのか…」
こぼすように言うとロキが否定する。
「いや、確かにあれなら反射でも防げたがお前なら銃口の事は対策していると想定していただけだ。さっき散々そこ指摘したからな。俺が油断していると思ったら使うだろ」
完全に乗せられたのか。
「使わせる意味はないと思うがな」
「あの一部分だけ見たら確かに意味はないがお前が出来る事を把握しておいて損はないからな」
完全にあいつのペースだな。
「だが、曲射ができて連写が出来て射程距離が長く破壊力もある能力…よく出来ているな」
次にやる事…攻撃?やって意味があるのか?防がれて終わりになる可能性が高い…
だが逃げる事は出来ない。戦闘以外の時間稼ぎもこいつ相手じゃ通じないだろう。
なら、戦闘の再開のタイミングはこっちが決めさせてもらう。
もう一度早撃ちで撃ちまくる。
「もうそれは通じないだろ」
そう言いながらロキは再び早く近づいてくる。
だが、今回のは違う。
俺の魔法は90度まで曲げることができるがそれはさっきのでバレている。だから、
魔法を曲げてもう一つの魔法へ当てる。そうして当たった魔法の軌道が大きく曲がる。そうすることで180度軌道を曲げた攻撃を作り、逆に能力同士で当てない90度曲げた攻撃や軌道を曲げない攻撃を用意して擬似的な3対1を作り出す。
「能力の工夫はかなり出来ていると思っていたがここまで出来たのか」
3方面から放たれた攻撃をロキは避ける。
「俺じゃなければこの時点で死ぬ奴の方が多いだろうな」
「単純な能力だが工夫することで手数を増やす。そして仕組みがバレても対処できるやつはそういないだろう」
褒められてはいるが完全に避けられるとは思っていなかった。これならさっきの曲射も防がずに避けることも出来ただろうな。
やり方を変えようと防ぐではなく避けられている現状だとどうしようもない。あの避ける動作に防ぐ魔法が加われば俺の攻撃はまず当たることはない。
詰みか、
「ウォール!」
土の壁が生徒のいる教室と戦闘をしている空間を分ける。
あれは6組のカイン先生、
「敵は私の目の前の男、金属の壁を作る能力などから土属性の応用と思われます」
「分かりました。体制崩します」
ロキの足場が大きく凸凹に変化する。
それに合わせて再び曲げる向きを変えていろんな方向から攻撃が当たるように撃ちまくる。
ドガァン!
天井が崩れて土煙が舞う。
ロキは水の傘を持って立っている。
「水属性でもあるのか、」
カイン先生が少し動揺するが、
「いえ、さっきまで私だけではあまり能力を暴けませんでした。ありがとうございます」
傘を傾けながらロキはこちらへ向き直す。
「土属性の能力だけ使うつもりだったが…」
そして一番やばい事は複数属性を持っていることがわかったことじゃない。戦闘学科の教師は冒険者でいうBからAランクの実力は絶対に持っている。その2人が集まったのに…
勝てるイメージが…沸かない。
「土属性の教員…もうさっきの移動手段は邪魔されるか。なら、少し真面目にやるか」
そう言った瞬間に電撃が走りロキの姿が消える。
「どこに行った!」
上下左右いない…後ろ!
振り向きながら右手に銃を構えると俺の手から銃が消えている。それにロキの姿はない。
「探し物はこれか?」
背後から声がして向き直ると拳銃が奪われている。
「なるほど、中の魔石が威力を上げているのか。それに加えてさっきの能力は銃を通してしか使えないとかそういう制約で威力を上げてそうだな」
今わかっているだけでも3属性…属性は増えるほど極めるのが難しくなるはずなのにどの属性でも練度が凄いことが嫌でも分かるな。




