16 約束
リディアと気持ちが通じた後、ウエストリア伯に面会を求める。
「へぇ、来たんだ」
「遅くなり申し訳ありません」
「別に待っていた訳ではないよ。娘の婚約が解消になっても、君は我が家に全く寄り付かなくなっていたからねぇ、もう興味を失っているのかと思っていたよ」
「いえ、、、」
「いいんだよ。娘はまだ17歳だ。色々あって傷ついてもいるだろうし、しばらく一人でいるのもいいと思っていたからね」
まだ早いと言われているのは分かるが、約束が必要だった。
「承知しています、急に遠くへ連れて行くつもりはありません。ただ、側にいる事をお許しいただきたい」
「へぇ、僕の許しが必要なことを知っていてくれて良かったよ、君は忘れているのかと思っていたからね」
ここに案内されるまで、どこにいたか、自分が何をしたかどうやら知られているようで、頭を下げるしかない。
本来、何の約束も無い女性に触れることは許されていない、例えそれがお互いの合意の上だとしても。
彼女に触れる事も、抱きしめる事も、まして唇を重ねるなど許されるはずがない。
「申し訳ありません」
「認めないと言うつもりはないよ。しかし、手続きには時間もかかる。君も状況にあった付き合いをして欲しいね」
「誓って」
あれから数日、彼が敢えて自分との婚約を許していないのは知っている。
最初に約束事に反したのは自分なので、しばらく彼の言葉に従うしかない。
「あなた、いつまでこの状態で放っておくつもりなのですか?」
「どうしたのかな? リディアが何か言ってきたのかい?」
「あの娘がそんな事を言うと思いますか?」
「では、僕の奥さんは、僕に娘を一刻も早く手放せと?」
「あの子は、いつまでも娘ですわ。それにあの子が世間の評判を気にする娘だと?」
「気にはしないだろうね」
「エルメニアで許されないのなら、ガルスでと考えないとでも?」
「リディアが望んでも、彼が許さないから大丈夫だよ」
「まぁ」
「彼はね、リディアにとって良く無いことはしないよ」
「それが判っていて、困らせているのですか?」
「ちょっとした、いたずらだよ。 娘を持った父親の最後の悪あがきさ、少しくらい大目に見て欲しいね」
「婚約するだけでしょう? まだガルスに行くには時間もあるでしょうし」
「僕もまだ時間はあると思っていたのだから、少しくらい我慢して貰っても文句など言われたくないね」
「わたくし、しばらくハーフスコード家に戻りたくなって来ましたわ」
「メリッサまで僕をいじめないで欲しいな」
「いじめているのは、あなたでしょう?」
「婚約して、リディアが何時までもここにいると思うかい?」
「そうだとしても、あの子が選んだことなら仕方ないですわ」
「嫌だなぁ」
「もう、そんな事を」
「仕方ないだろう?
彼には借りを作ってしまったからね、一度、思い切り手合わせでもすればスッキリするかもしれないが、それも出来ない。僕には、今、魔道具もないしね」
「どちらにしても彼には意味がないでしょう?」
「まぁね」
「もう、仕方のない人ですね」
「君が慰めてくれるかい? 僕は今、大切な娘をさらわれそうで、とっても寂しいんだけどね」
「アルフレッドの事もどうするつもりなのですか?」
「うん?」
「リディアに付いて行きかねませんよ」
「そうだねぇ。あれもそろそろ自立は必要だが、、、、、、もう少し後で良いと思っていたんだけどなぁ」
先がどうなるか判っているのに、ダラダラと今の時間を引き延ばしている。
「嫌だなぁ」
こういう時、この人は本当に子供みたいになる。




