22 別れ(2)
初めて会った時から、夜になるとセレスティナの所に会いに行っていた。
最初は彼女も驚いていたけれど、今では自分が触れる事を許してくれるので、離れるのは嫌だった。
他の雄が側に来るのはもっと困るので、絆を結んでしまいたいけれど、この国は先に約束が必要だと、ザィードにも言われている。
「ティナ」
「サイラス様」
彼女を見つけると、「ティナ、可愛い」と言って抱きしめる。
「どうしたのですか?」
「ザィードがガルスに戻るから、僕も一緒に戻るんだ。しばらくティナに会えない」
「今から?」
「うん。ティナ、寂しい? 僕に会えなくなるの、寂しい?」
彼があまりに真っ直ぐに気持ちを表してくれるので、ついつい自分まで考えている以上の言葉が口から出てくる。
「会えなくなるのは、さみしいです」
「良かった、ティナは僕のだからね」と額や頬に触れ、最後にキスをする。
「ティナ、もう少しだけ、少しここ開けて」
また唇を重ね、キスが少し深くなると、体の中に暖かい物が流れてくる。
今までこんな風にキスされた事は無かったので、顔は赤くなるし、恥ずかしい。
それに何が自分の中に入って来ている。
「ティナ、ごめん、怒らないで」
「怒ってないわ、びっくりしたの」
「ティナ、かわいい」
恥ずかしいけれど、サイラス様は腕の中から解放してはくれない。
「これなに?」
「僕の力を少しティナに入れたの。ティナ、気持ち悪い?」
「力?」
「そう、こうすると離れていてもティナの事が判る。ティナがどこに居ても、見つけられるし、何かあればティナを守る」
「サイラス様が獣人だから出来るの?」
「みんなは出来ない、ザィードは、多分出来る。それにこれだとそんなに力を移せないから、少しだけ」
「これ?」
「うん、キス。体を繋げるともっと移せる」
「えっ?」
「ティナ、顔が真っ赤になってる。大丈夫、ザィードが約束するまでダメだって言ってた、だから今はしない」
そう言ってはまた顔のあちこちに唇が触れる。
「行かないと、タルパスの街でザィードが待ってる」
「戻って来る?」
「うん。ザィードの番がここに居るしね、ザィードが僕の王だから」
「それにこんな事、ティナにしかしない。もう少し力移すから、ティナ、もう一回」
真っ赤になる。
数週間前に初めて会った人、婚約している訳でも無いのに、夜になると温室にやって来てずっと自分の側に居た人。
「何故、私なの?」と理由を聞いても、
「ティナだから」と答えるだけで、全く判らないが、滞在している領主の屋敷からここまで、馬車でも半日以上かかる道のりを、ほとんど毎日の様に通われては冗談にも思えない。
それに知ってしまうと、彼の愛情表現はとても素直で、態度にも言葉にもすぐ現れる。
最初にキスされた時は驚いたが、いつもは必ず
「ティナって呼んでもいい?」
「髪に触れても大丈夫?」と何でも聞いてくる。
「大丈夫」と言えば、嬉しそうに触れるし、
「まって」と言えば、「わかった」と守ってくれる。
気持ちを伝えられ、甘やかされて、最近ではこうして抱きしめられていたので、とっても恥ずかしいのに離れたく無いと思ってしまう。
「ティナ、離れたくない?」
「どうして?」
「そんな気がした。戻って来たらいっぱい一緒にいる、待ってて」
人と関わるのが苦手で、友人と呼べるのは、リディアやリオンなどほんの数人。
いつも温室にいて、植物を育ててばかりだった自分にこんな事が起こるなんて予想してもみなかった。
いつも一人で平気だった場所が、なんだか広く感じられて寂しくて仕方がない。
暖かくなるまで、こんな気持ちでここに居るなんて、絶対出来ない。




