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06 温室 - リオン

「リオン」


「元気そうだね、ティナ。

 それからアルフレッド、ここまで来ているなら、こっちにも顔くらい見せろよ」


「悪かったよ」 アルフレッドが渋々答える。


 リディアが温室に来ていても、アルフレッドは、魔道具の工房に行ったり、リオンの所に来るのが殆どで、温室にいるのは珍しい。


 それが見かけぬ二人の所為だとすぐに分かる。

 ここ数日、ガルスから来た人の話を聞かない日は無いが、その客人が温室にいる。


 何故かと疑問に思う必要は無かった。

 明らかに客人の一人が、ティナに寄り添ってこちらを警戒しているし、もう一人はその獣人を抑えている。


 獣人が女性に固執する理由は一つだけで、それ以外は無い。


 ティナに紹介され、ちょうどハーブの植替えが必要だったから手伝って貰っていると、本人は全く気が付かずニコニコしているが、側から見ればこれ程分かりやすい主張はない。


 自分の気持を知っているアルフレッドが、心配そうに見ているが、残念ながらティナと自分の間に何かがある訳では無いので、どうする事も出来ない。


「ダリウス様の商隊が来ていたから、いくつか変わった物を持って来たんだ」


 持ってきた袋をティアに渡す。

 そこには暖かい所で取れた果物がいくつか入っていた。


「ありがとう。リオンの好きそうな紅茶が出来たら持って行くわね」

「うん、楽しみにしてる。ティナが作った紅茶がやっぱり一番美味しいよ」


 こちらが出来る牽制をしてみても、彼が新しいおもちゃでも見つけた様に、袋を覗いて匂ったりする様子を見て、ティナがまた笑っている。


「リオン、今度は屋敷の方に来てくれよ。姉さまが頼んでいる事もあるんだろう?」


 アルフレッドが自分達はすぐに屋敷にもどる事、そうすればいつ迄もティナの側に彼がいない事を教えてくれる。


 同じような立場の自分を気遣う彼に礼を言って温室を出る。

 アルフレッドが温室にいるなら、リディアはもう一人の獣人と一緒にいる事になる。

 いくらジャルドがいても、アルフレッドがそれを許しているのは、自分のためでもあるので感謝するしかない。


 お互い面倒な恋をしていると思う。

 ティナやリディアにとって、自分達は弟で、それ以上でもそれ以下でもない。

 自分達は、彼女達の一番近くにいるようで、実は一番遠くにいる。


 結局、手に入れた場所を失いたく無くて、それ以上近づけなかった自分が一番悪いのだが、今さら動く勇気もない。


『ずるいよなぁ』


 分かっていても、どうする事も出来ない。

 弟というこの居心地の良い場所は、一度手に入れてしまうと、なかなか手放すのが難しい。



 リオンが温室を出ていくのを見送る。


 最初は、半信半疑だったサイラス様の事も、何日か様子を見ていれば、どういう意味を持っているか分かる。


 自分と違いリオンは、サイラス様が居なければ、セレスティナと結ばれる可能性が高かったので、色々思う事があると思う。


 リオンに少し同情するのと同時に、サイラス様にも驚かされる。


 最初、ザイード様にセレスティナだけで無く、周りにも気を遣えと言われても納得していなかったが、それがセレスティナの為と分かるとあっさり承諾した。


 おかげで本人だけでなく、ローエングルグ家の使用人でさえ何も気が付いていない。

 さすがに突然やって来たリオンには反応したが、常にセレスティナを中心に動いているのに、それを殆ど他人に気取らせない。


 温室の植替えもほぼ終了し、ザイード様の案内もそろそろ終わる頃なので、イリノアの街から移動すれば、サイラス様はセレスティナから離れる事になる。


 それで落ち着けば良いが、そうで無ければリオンも面倒な立場になるだろう。


「イグルス様、サイラス様、今日は、姉がフレの工房にザイード様を案内すると聞いています。少しそちらに行ってみませんか?」


 セレスティナ様にも聞こえるように声をかける。


「まぁ、是非行ってみて下さい。この街の工房は、見るだけの価値がありますから」

「それならば」


 セレスティナ様に勧められ、イグルス様が頷いても、


「僕も、ティナって呼んでもいい? ダメ?」


 サイラス様は聞く耳を持たないが、


「呼んでいいわ。だから少し街も見て来てね」


 結局、セレスティナ様が折れ、それで満足したのかやっと温室を離れる。


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