第2話 額縁のなかの森(1.失われた午後の鐘篇)
真鍮のメダル
コットは飛びついた。
「やっぱり宝物だった!」
「まだ分からないでしょ。」
MYUはしゃがみこんだ。
埃の中から出てきたのは、
丸い真鍮のメダルだった。
手のひらほどの大きさ。
少し緑色に変色している。
けれど中心だけは、なぜか磨いたように光っていた。
「文字がある。」
MYUは指でなぞった。
ぐるりと縁に刻まれた文字。
けれど読めない。
知らない言葉だった。
「古代王国の宝だ。」
コットが断言した。
「なんで分かるの?」
「だって読めないもん。」
「それだけ?」
「それだけ。」
MYUはため息をついた。
けれど少しだけ楽しくなってきた。
メダルを裏返す。
そこには木の絵が刻まれていた。
一本の大きな柳の木。
枝が長く垂れ下がり、
風に揺れているように見える。
「きれい。」
思わずそう言った。
その瞬間だった。
かちり。
どこかで音がした。
MYUとコットは顔を見合わせる。
「聞いた?」
「聞いた。」
今度はコットも真面目だった。
かちり。
また音。
額縁の方からだった。
二人は振り返る。
空っぽだった額縁。
その下の部分に、
小さなくぼみがある。
今まで気づかなかった。
丸い形。
メダルと同じ大きさ。
コットの口がぽかんと開く。
「え。」
「え。」
MYUも言った。
「まさか。」
「まさかだよ。」
「そんなことある?」
「冒険だからある。」
コットは真剣だった。
MYUはメダルを持った。
そして、
そっと額縁のくぼみに当てる。
ぴたり。
まるで最初から、
そこにあるべきだったみたいに。
はまった。
次の瞬間。
ごうっ。
屋根裏の空気が揺れた。
小窓は閉まっている。
なのに風が吹いた。
古い箱が震える。
旅行鞄の金具が鳴る。
埃が渦を巻く。
「うわあああ!」
コットが長靴を抱えて転んだ。
「長靴王は!?長靴王は無事なの!?」
「今それどころじゃない!」
MYUが叫ぶ。
額縁の中が光っていた。
真っ白な光ではない。
森だった。
木々。
草。
風。
鳥の声。
額縁の向こうに、
本物の森が広がっている。
「……。」
MYUは言葉を失った。
コットも黙った。
珍しく。
本当に珍しく。
数秒。
二人とも動かなかった。
やがてコットが小さな声で言う。
「MYU。」
「なに?」
「これ。」
「うん。」
「絶対怒られるやつだ。」
MYUは吹き出した。
「たぶんね。」
「でも。」
コットは額縁の向こうを見つめた。
その目は、
今まで見たことがないくらい輝いていた。
「絶対行かなきゃいけないやつだ。」
森の奥で、
何かが光った。
金色だった。
まるで誰かが、
二人を待っているみたいに。
(第2話・終わり)




