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敵将バハム

 戦況はかなりまずいんじゃないか?


 ケルト坂は明るく照らされていたけど、砦周辺は松明で照らされているだけだった。

 薄暗過ぎて兵士達には魔物が見えてないだろう。

 いきなり暗闇から突進されて、為すすべなく屠られているかもしれない。


 それに、魔物の群れはあっという間に防壁まで到達する。

 ケルト坂の守備部隊は背後から魔物の襲撃を受けて大混乱に陥るかもしれない。


 嫌な予感がする。

 俺は魔境の奥まで出張っているから状況を把握できないのがもどかしい。

 それでも分かる。戦線は間違いなく崩されている。


 リブレイル司令は大丈夫か?また側近とワインを飲んでやがるんじゃないだろうな!

 このままじゃ取り返しのつかないことになるぞ!


 あの司令官にこの危機的状況を回避できるだけの才覚があるとは思えない。

 だから、このまま魔笛を探すことが正しい行動なのかと悩んでしまう。

 俺は背後が気になって仕方なかった。


 また一つ魔笛の音が消えた。リファかアリア達が討伐したんだろう。

 でもまだ不快な音色が聞こえてくる。


 魔物の群れは止まらない、というか防壁から先に進めずにその場で暴れ回っている筈だ。

 こうなると立て直しは難しい。もうどうにもならない分岐点を越えてしまったかもしれない。


 ケルト坂を敵軍に突破されるのも時間の問題か。

 となれば、やはりその阻止に動いた方がいいかも知れない。

 俺はリファの気配を探って風魔法で「ケルト坂に戻れ!」と伝えた。



 急いで戻れば、やはり戦線は崩壊していた。

 ノエリアの兵達は防壁と魔物に挟まれて進退窮まっている。そして魔物の突進を受けて次々と潰されて視界から消え去って行った。

 そんな状況だから、ケルト坂に向けて防衛に回っている者は皆無だ。

 その時、向こうでパニクった兵士が至近距離で赤玉を放って盛大に自爆した。


 だけどそれにしてもおかしい。

 6千もいた兵達はどこに行った?多くが砦に籠って防衛しているのか?

 ここにいる兵士の数では計算が合わない。それに指揮官らしき姿もない。

 既に死んだか?

 或いは殆どが逃げ出したということだろうか。


 ケルト坂では10メトルの石壁に数匹のアイアンボアが体当たりを繰り返している。

 厚みが3メトルある石壁の下側は俺の魔力で強度を増してある。しかし、それも既にかなり削られていた。

 それにしても、壁上に兵士が一人もいない。


「リファ、周辺の魔物を任せる!俺はケルト坂を死守する!」

 壁上に降り立つと、言った傍から闇フクロウが俺に飛びかかって来た。

 察知できない者には嫌な攻撃だ。俺はシールドで防いで魔力弾で撃ち落とす。


 眼下のアイアンボアに高温の極大火球を一発放りこんで、その先にいる黒狼の群れに分散爆裂仕様の火矢を大量に打ち込んだ。

 が、すぐに新たな群れが押し寄せてくる。


「キース!切りがないよー!」

 リファから泣きが入った。

 俺には応える余裕もなく、竜眼で見える魔力に照準を合わせて大量の火矢を射出する。


『キース!!』

 アリア達がやって来た。

「リファと一緒に魔物を狩ってくれ!」


 真っ黒い蜘蛛の大群が現れて、視線の先で石壁を登り始めた。

 それを風刃で薙ぎ払う。

 上空に闇ガラスの群れが現れた。

 ケルト坂をワイルドボアが突進してくる。

 どいつも数百匹単位で絶え間なく押し寄せてきやがる。


 リファ達はボア、グリーンタイガー、レッドグリズリ―などの大物を倒している。

 小さいのはまぁ無視だ。


 倒しても倒しても魔物は次から次へと湧いて出て来る。

 こうなるとやっぱり、魔笛を探して壊す方が早い気がしてきた。


「ライリー、魔笛を探して破壊できないか!」

 俺の隣で矢を放ちながらライリーが応えた。

「やるだけ無駄だ!今吹かれてる物を壊してもまだ何個も持ってるかもしれないだろ。防御が分散される位なら、ここを全員で死守する方が効率がいい!」

 それもそうかと思い直すが、すぐに倦んできた。

 このままじゃいつまでたっても切りがねぇ!


「ライリー!サルファス司令に状況を報告してくれ!」

「もうした!限界まで倒せるだけ倒せってよ!」

 くそ!軍部には人使いの荒い上官しかいないのか!


 いい加減うんざりして、増幅の魔法陣を使って1000倍魔力弾でもぶっ放してやろうか。とも思ったけど、今この程度の魔物相手に手の内を明かしたくはない。

 だから断念するしかなかった。


 相変わらずケルト坂からも魔物が上って来ては、俺の攻撃を受けて死体が積み上がって行く。

 定期的に焼き尽くしているけど、骨やら灰やらがうず高く積み上がって来た。

 足止め用に掘られたV字溝もとっくに埋まってしまっている。


 もう防壁としての役割は終わりが見えていた。


 切りがねぇ・・

 何度も呟いた言葉を俺はまた吐きだした。


 夜が明け、陽が昇ってまた傾きかけた頃。

 それまで延々と戦い続け殺し続けて、俺達4人はとっくに疲れ果てていた。



 そこに魔人族が現れた。

 漆黒のフェンリルに跨った大男が一人、ケルト坂を物凄い勢いで駆け上がって来る。

 慌てて放った魔弾の連射をフェンリルは側壁を蹴って躱すと、厚み3メトルの防壁を男が拳一つで叩き壊した。


 あっという間の出来事で、俺とライリーは防壁の残骸と共に吹き飛ばされて地面を転がった。

 ケルト坂に背を向けていたライリーに警戒の一言を告げる余裕すらなかった。


「ら、ライリー大丈夫か?」

「ぐぅ・・なにが起こったんだ」

「戦闘部族が現れた」


 ライリーの額から血が滴っている。

 リファとアリアは上空にいたから被害はないけど、その男とフェンリルの放つ異様な圧力に固まっていた。


 そいつは忘れもしないバシュラ一門のラモンと同じ三つ編みの襟巻という奇抜な髪形をしている。

 眉間に深い縦皺のあるひどい強面だ。顔面だけでもあのラモンよりも強そうに見える。

 それに溢れる覇気と貫録は圧倒的で、自然体のくせに闘気が身体を包んで揺らめいている。


「うわぁ・・」

 その強烈な存在感にリファが露骨に顔を顰めた。

 アリアもその異常な強さを感じ取ったのか、息を飲んで顔を引きつらせている。

 そして、ライリーは真っ青な顔で数歩後退った。


 いつの間にか魔笛の音は消え、魔物が一匹残らず魔境の奥へと逃げ散って行った。

 急に静寂が訪れた。


 男が地面に降り立つと、漆黒のフェンリルは伏せて男を見上げている。


「人間族か。ほぅ、まだ若いな。む、エルフもいるのか」

 男は顎髭を撫でつけ興味深げに俺達を見回した。

 俺達は誰も応えない。


「これだけの魔物をお前達だけで倒したというのか?」

 俺達4人を前に構える様子も見せない。


 俺の見る限り、この男はラモンよりも余程強い。それだけの風格がある。

 少し機嫌を損ねるだけで、瞬きする間に全員殺されそうだ。

 ライリーが大粒の汗を滴らせた。


「そう怖がるな。無駄に足掻き続ける者共に興味をもった故、少し話をしに来ただけだ」

 その言葉で、この男が敵の将軍かも知れないと思った。

 ガルハは将軍である父親が全人族最強と言っていた。もしかしてこの男のことなのか?


「お前達に問う。ガルハ、ラモン、ガモンを知っているか?」

「・・・・」


 俺達が殺したと知ればどうなるか。すぐに応えられなかった。

「応えよ」

 低い声に威圧が漏れている。


「あぁ、知ってる。その3人なら死んだ」

 俺が代表して応えると、男は俺に視線を合わせた。


「この場に来ぬ時点で予想はしていたが、やはりそうか・・」


 あれだけの強さを誇ったバシュラ一門の死をこうも簡単に受け入れたことにまず驚いた。

 それは、魔人族の国では強者であっても死が身近であるということなのか。


「では次の質問だ。皇帝竜は何をしておる。人間族の街はどれほど滅びたか」


 やはり屍古代竜や屍竜を使って人間族の国や街を破壊して回る目論見だったのか。

 もしそうなら、とんでもない事を企んでいやがった。全部討伐出来て心の底から良かったと思う。


「皇帝竜は討伐された。他の屍竜も全部だ」

「ほう。誰が討伐したのだ」

「別の皇帝竜だ」

 屍竜も屍古代竜もファスローグの力を借りて倒すことができたのだ。俺一人の力では到底無理だったのだから嘘じゃない。


「ほう?」

 ここで男の顔が憎悪?いや、歓喜かもしれないが大きく歪んだ。

 楽しみが増えたとでも言いたげに眼を細めると、その闘気も揺らぐ。


「ひぃ!」とアリアが身をすくめた。

 ライリーは思わず矢に手を伸ばしかけると、フェンリルがグルルと唸って威嚇してきた。

 リファも悲鳴こそ上げないけど、今すぐ逃げたそうな顔をしている。


「その皇帝竜は今どこにおる」

「・・皇帝竜ではなく、正式には古代竜というそうだ。古代竜の里は北の最果てにあると聞いた」

「ほぅ、良い話が聞けた。我が名はバハム。お前の名を聞いておこうか」

「俺はキース。風の旅団のキースだ」


 バハムは俺をじっと見つめた後、ニヤリと笑みを浮かべた。

「そこそこ強いな。人族相手でも少しは楽しめるかもしれぬ。ではキースとやら、次は戦場で会おう」


 バハムは無防備にも背中を見せると、フェンリルがスッと立ち上がる。

 それに跨ると、バハムがこっちを振り向いた。


「貴様ら人族に時間をくれてやる。10日後だ。10日後に我らは進軍を再開する。万全に備え我等に挑むがよい。我が敵将に闘いを楽しみにしていると伝えよ」

 そして、風のように去っていった。


 バハムが遠ざかった後、ふらふらとリファ達が降りてきた。

 ライリーはその場にへたり込む。

「ありゃやばいぜ。生きた心地がしなかった。キース、あいつに勝てるのか?」

「さぁ?やってみないと分からない」

「おい!勝つ見込みがあるってのか?」

「だから分からないって」

「いや、分からないって言えるのが凄いんだ」


「キース、あいつってそんなに強いの?」とアリア。まだ顔が青褪めている。

「アリアが想像できないくらい強いと思うよ」

「私のアロージョンでも倒せない?」

「まずあのまとっている闘気を破れないだろうな。攻撃が届く直前に霧散するんだ。空にいても撃ち落とされるし、地上戦じゃもっと話にならない。だから絶対に手は出すなよ。リファもライリーもだ。あいつは俺がやるから」


「はぁぁ、怖かったぁ。私あいつの息子殺してるんだよね。バレなくて良かったぁ」

 リファもしゃがみ込んでしまった。

「リファーヌはあいつの息子に勝ったのか?すげえな!」とライリ―が賞賛の眼を向けた。

「ううん、すごくなんてないよ。だってあそこまで化け物じゃなかったもん」

「それでもすごいよ!俺はあのフェンリルの威嚇にさえビビって竦んじまったってのに」


 ライリーの賞賛にリファが目を背けた。パルマの死でリファの心は今も傷ついたままだ。

 悲し気に眉尻を下げるから「とにかく戻ろう。ここは放棄する。撤収しよう」と話を切りかえた。


 この場に留まってもまた同じことを繰り返されるだけだ。

 絶好の襲撃ポイントと思ったけど、魔笛を使われるのなら魔境を出て戦った方がいい。

 そう割り切って俺達は撤退準備に入った。


 敵にこっちの武器や食料をくれてやる必要はない。

 俺達は放棄された赤玉や砲筒、物資を拾い集めてから、ナジフの本陣へ戻ることにした。

 転がる兵士の遺体は放置だ。可哀想だけど、そこまでしてやる余裕が俺達にはなかった。


 ただ、数か所の砦内には多くのノエリア兵が立て籠っていた。あの襲撃の最中、戦闘に加わらず身を潜めていた連中が大勢いたのだ。

 これを損耗が少なくて良かったと取るべきか、敵を前に震えていた臆病者と嗤うべきか。

 個人的には呆れ果てて、「さっさと撤退しなよ」とだけ言い置いておいた。



 その後、連合軍本陣に戻って一連の報告を済ませた。

 ケルト坂からナジフ荒野までの距離を考えると、会戦は11~12日後と予想される。

 ただし、10日後に進軍すると言った敵の言葉をそのまま信じることはできないが。


 会戦までは毎朝夕、敵軍に動きがないかを確認しに行く。

 午前中は軍議、午後は各自鍛錬や連携確認に時間を当てる。

 そんな感じで数日過ごした。


 4日後、リブレイル司令と側近が本陣に戻って来た。

 大敗を喫しての帰還だ。

 それでも本人は2万匹近くの魔物を削ったと胸を張って報告をしていたが、事前に俺達から一万にも届かずと報告を入れてある。

 過剰申告がバレバレだった。

 俺達が居残って大量に殲滅を続けたから合わせて2万匹以上は削ったと思う。

 でもそれは現地調達の魔物が主体だったし、敵は魔物を調達し放題だ。どれだけ殺したかなんて意味がない。


 せめて敗軍をまとめて帰還すれば良かったものを、リブレイル司令は側近のみ伴って真っ先に駆け戻って来たからノエリア軍の名誉を大きく損ねることとなった。

 これにはブライアン王太子がこめかみに青筋を浮かべていた。


 救いは、続々と帰還してきた兵が意外に多く4千人が無事だったことだ。

 後から知った話だけど、砦付近を抜けた魔物の群れは突進するのみで立ちはだからなければ襲われなかったらしい。

 ケルト坂の防御壁に突進することだけを命令されていたのではないか、と軍議では分析されていた。


 とにかくリブレイル司令は前線から外されて、センティアへ戻されることになった。



 その日の午後、俺はリファと戦場となる荒野に来ていた。

 そこにリファがある仕掛けを施している。ガルハを仕留めたというえげつない仕掛けだ。

 リファの考えたその仕掛けが発動することを前提に、人族連合軍は連日演習に励んでいる。

 リファって実は策士なのかもしれない。


 そんなリファを頼もしく思って眺めていたら、遠くから蹄の音が聞こえてきた。

 シャーリア聖騎士団の旗を掲げた10騎程の一団が真っ直ぐこっちへやってくる。

 戦場の視察かなと思っていたら、俺達のすぐ傍までやって来て馬を止めた。

 数人はローブを羽織っているから魔法士だろう。その護衛なのか甲冑騎士が魔法士達を取り囲んでいる。


「キース!リファーヌ!生きてたか!」

 一団の中央にいたローブ姿の男がいきなりそんな事を言ってフードを取っ払った。


「あ!シモンだ!!」

「え?シモン?ほんとだ!シモンだ!!」


 馬上に懐かしのシモンがいた。赤獅子傭兵団の仲間で、それ以前に大河川を流されてきた俺の命を救ってくれた恩人だ。

 顎鬚なんか生やして、記憶の中のシモンがずっと逞しくなっている。でも、優し気な目元は変わっていない。


 シモンが下馬して駆け寄って来たから、俺達は抱き着いた。

「久しぶりだな!二人共随分と大きくなったなぁ!」とシモンが俺の肩に手置いた。

「シモンが立派な大人になってる!ね、ベルナルデは元気?結婚した?」

「シモンもここに来てたんだ!あ、赤獅子の皆はどうしてるか知ってる?」


「あぁ、ベルナルデは子供達とシャーリアにいる。俺も今や2児のパパだ。昔馴染みはデールがこの戦いに参加してるよ。リステルの傭兵達の陣にいるからあとで会うと良い。他の連中は風の噂で聞く限りだとまだあの国で戦ってるようだ」

 デールはゴスベールの谷の襲撃で俺達を守ってくれた大柄な傭兵だ。戦斧を振り回す姿が記憶に蘇る。

 懐かしい面々の顔が思い浮かんだ。


 そんな俺達のやり取りを馬上から見下ろすシャーリアの聖騎士達が気になった。

「あぁ、彼らは俺の護衛だ。シャーリアで聖騎士団に勧誘されてな、今じゃ魔法師団のお偉いさんになっちまったんだ。あはは、俺には似合わないだろ」


 シモンは戦える治癒師だった。場数も踏んでる。あの赤獅子傭兵団で最年少の部隊長を担っていたのだ。

 シャーリア聖騎士団もシモンの実力を買ったのだろう。さすがシモンだ!

 シモンの出世話を聞いて、俺は嬉しくなった。


「俺のことよりお前達のことだ。ジルべリアには無事戻れたんだな。キースは家族を見つけられたのか?」

「う、ううん。家族は皆死んでた。妹の行方が分からなくて今も探してるんだけど」

「そうか、早く見つかるといいな。ところでお前達って、あの風の旅団なんだって?空飛んで竜を倒しったって聞いたぞ。ほんとなのか?」

 俺の悲しみに触れないように、シモンはサラリと話題を変えてきた。


「うん、ほんとだよ!キースが倒したんだよ!キースって凄いんだから!」

 リファが俺を自慢して胸を張った。

 リファは最近胸が急成長してる。その胸につい目が行ってしまう。


「リファーヌも成長したな。ミルケットそっくりだ。あぁ、あの頃が懐かしいよ」

 あれから5年か。もうずっとずっと遠い昔の出来事だった気がする。


「そう言えば、ベックのことだが・・」と凄く気になる名前がシモンの口から飛び出した。

「ベック?ベックがどうしたの!シモン、ベックに会ったの?」とリファが勢いよく食いついた。

 こらこら。話を遮るんじゃない。

「ベックが何?早く話してよ!」と俺が急かす。


「いや、何年か前にお前達を死なせてしまったって内容の手紙が届いたのを思い出したんだ。文字が滲んでたし、てっきりお前達は死んだものと思ってた。だが今こうして元気でいるから驚いたんだ」


 シモンの話では、ベックから懺悔の手紙が届いたという。

 シモン宛だというのに、ドミークとミルケットにひたすら詫びを綴った内容だったそうだ。

 あのエルベス大魔境に連れて行き、置き去りにしてきてしまったと自分を責めていたとか。


 その話を聞いて思わずリファと顔を見合わせた。

 ベックが自分を責めてる?なんで?俺達はベックにすごく感謝してるのに。

 あの時ベックの足を引っ張って迷惑を掛けたのは俺の方だ。

 ベックはあれだけひどい状態だったけど、俺達の為に最善を尽くしてくれたじゃないか。

 最後の別れ際の言葉だって心に刻みつけて今も忘れてない。

 そのお陰で俺達はエルベスを超えてジルべリアに辿り着けたんだから。


「どうしようキース!ベックが何年も自分を責めてたなんて!私、今すぐベックに会いに行きたい!」

 その気持ちは良く分かる。でも今はダメだ。


「リファ、ベックに手紙を書こう!俺達生きてるってちゃんと伝えるんだ!」

 こんな事なら、手紙だけでも出しとけば良かった・・

 国境をいくつも跨ぐ手紙は届かないとギルドで言われてそれっきりにしていた。

 後悔で胸が軋む。


「手紙を書くなら俺が預かろう。シャーリアに戻ってからになるけど、騎士団の伝達網を使えば確実に届けられるからな。その方がいいだろ」

「うんそうだね!シモンお願い!」


 リファが目を輝かせて、頭の中は手紙に書くことでいっぱいになってしまったみたいだ。

 俺もだけど。

 だからリファがチャチャチャチャっと仕掛りの作業を終わると、急いで野営地に戻った。


 今夜にもシモンの幕舎を訪ねると約束をした。

 全然話し足りないからシモンが「一緒に飯食いながら話そうぜ」ってことになって、俺もリファもウキウキして手紙を認めたのだった。


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― 新着の感想 ―
感動の再会がフラグで無い事を願うばかりです。 敵の規模がよくわからないのですが、将軍クラスが何人もいて方々の大陸を攻めてる一軍なのか、魔族の存亡を賭けた全軍なのか、いまだ見えませんが魔物を兵子に使い同…
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