第2章、魔法の授業②
今回は「古の魔法書と白ノ魔女」はお休みです。
アリシアーレンはリスを連れて物置へ。炎華を依頼者に送るために包みに行くのだ。
救急箱を片付け外へ出たギアは、ポケットから腕輪を取り出す。それを己の腕に嵌めて、大釜にトントンと触れた。すると、大釜は地面から数十㎝浮いた。それの縁を掴んで、竃の近くへ持って行った。再びトントンと触れると、それはどっかりと地面に落ちた。
そして、アリシアーレンが様子を見に来るまで、しばらく大釜と竃をきれいに掃除していた。
「このくらいでいいんじゃない?ギア。」
小包を飛ばし終えたアリシアーレンが、一心不乱に大釜を拭くギアに声を掛けた。
「そうですね…。」
立ち上がり、満足そうに大釜を眺めるギア。
「少し早いですが、昼食にしましょうか?」
「ええ、そうね。あ、この子の分もよろしくね。」
リスがしっぽを一振りした。リスはすっかりアリシアーレンになついたようだ。
「さあ、授業を始めましょう。」
それぞれ白衣をまとい、大釜を挟んで向かい合った。リスは相変わらず、アリシアーレンの肩にいる。
「今日は何を作るんです?」
そう言いながら、薬草を選び取る手つきに迷いがないギア。そう、もはやギアは作る物が何か察していた。
「人語キャンディーよ。」
「ですよね。」
人語キャンディー。それは、食べた動物が人間の言葉を理解し、話せるという代物だ。
「今回は、難易度の高い人語キャンディーに挑戦しましょう。お喋りがもっと楽しくなるわ。」
人語キャンディーは、複雑な工程をいかに正確に仕上げるかで、効果が変わってくる。普通の人語キャンディーならば、多少適当でも完成するが、今回は一つのミスも許されない。完成の精度が高ければ高いほど、それを食べた動物の知能レベルや語彙力は高まるからだ。
アリシアーレンは、人間同等の知識レベルにしてリスと話したいようだ。
「できるかしら?ギア。」
火の加減、材料の分量、注ぐ魔力量、完成までの時間…どこか間違えば、アリシアーレンからの課題をクリアできない。
「やってみせます。」
しかし、調合・調理はギアが最も得意とする分野だ。多少難しい方が、やる気が上がる。
まず、大釜に火をつける。火加減を簡単に微調整できるよう、焔石で。重さをきっちり計って、大釜の下に放り込み、火を放つ。焔石は火を纏って妖しく光る。
次に、きっちり大釜半分の量の純水を注ぎ、沸騰しないうちに、予め粉末状にした数種類の乾燥薬草を入れる。そして、味を整えるために、リンゴジュースを。
こうして、アリシアーレンの時間計測を頼りに、時間通りに材料を入れていく。途中、焔石を追加して火加減を調整しながら。
(火を止めれば、後は魔法を掛けるだけ…。)
焔石を取り除くために屈んだその時、着けっぱなしにしていた腕輪が目に付いた。
「あ!」
間一髪、腕輪を外さねばならないことを思い出した。
「あら。うっかりしてたわね、ギア。」
「今までのが台無しになるところでした…。」
魔法の補助道具であるこの腕輪は、これから使う道具に力が影響してしまうため、身に付けたままにしてはいけない。準備の際に使用したまま、ギアはすっかり忘れていた。
腕輪を離れたところに置き、腰に下げていたホルダーから杖を取り出す。
いよいよ、最終工程に入る。
~魔法使いのメモ~
☆腕輪…様々な魔法石が嵌め込まれた腕輪。伸縮自在で、腕に装着すると自動的にぴったりサイズになる。ほとんどの魔法使いが所持している。簡単な魔法を使う際には重宝する。
☆人語キャンディー…食べるとどんな動物でも人系の言葉が喋れるようになるキャンディー。人系(魔女、魔法使い・人間)が食べても効果はない。
☆焔石…火を点けると、燃え続ける魔法石。使用する量によって、火の大きさを変えることができる。




