第2章、魔法の授業①
今回も「古の魔法書と白ノ魔女」はお休みです。
次回は「古の魔法書と白ノ魔女」も「魔女の敵」もお休みします。すみません。
「今日は午後から調合の授業をするわよ。道具を用意しておいてね。」
空になった食器を片付けていたギアは、ちょうど朝食を食べ終えたアリシアーレンに顔を向ける。
「分かりました。午前中は授業をしないんですね?」
「ええ。私は少し出かけてくるわ。この間、依頼されて採取したものが間違えていたらしいの。」
ギアはぎょっとした。
「何かこちらで不手際が?」
「いいえ、あちらのミスよ。追加分の炎華の色を間違えて注文したみたい。炎華なら近くで採れるから、すぐ戻ってくるわ。」
炎華は花火に使われる魔法植物だ。花火の持続性が高く、また通常の物よりも複雑な模様を編み出せることから、花火職人がこぞって欲しがる。
「なるほど。もうすぐ祭りがありますもんね。」
アリシアーレンとギアが住む山を下ると、街がある。頻繁には行かないが、毎年行われる祭りの際には必ず下りて行く。その祭りで上がる花火を、二人はいつも楽しみにしているのだ。
「本当は青色が欲しかったみたい。おドジな見習いさんの発注ミスらしいわ。」
アリシアーレンは少し愉快そうに笑った。
「おかしいと思ったのよね。赤い炎華は例年通りの数を届けたのに追加なんて珍しい、って。」
そう言ってアリシアーレンは去って行った。
「行ってくるわ、ギア。」
「はい、アリシア。いってらっしゃい。」
今干したばかりのタオルを手ではねのけ、ギアは顔を覗かせた。この前と同じ作業服に身を包んだアリシアーレンは、手を振って飛んで行った。
洗濯物を済ませ、掃除も済ませた頃にアリシアーレンは帰ってきた。
「ただいま~。」
「おかえりなさい…って、どうしたんです?そんな葉っぱだらけで。」
「ちょ~っと木に突っ込んじゃった!」
後ろ手に箒を持ちながら、アリシアーレンはあっけらかんと言った。
「なぜ…?」
その時、ギアは嫌な予感がして、素早くアリシアーレンの背後に回った。
「あ~!箒がっ!!」
アリシアーレンの箒は真ん中でぽっきりと折れていた。しかし、注目すべきはそれではなかった。
「えっ、リス?!」
半開きの鞄から、小動物が顔を出している。
「何連れて来ちゃってるんですか。」
「ケガをしてるのよ、この子。鷹にいじめられてて…思わず箒ごと突っ込んじゃった。木に飛び降りてから、地上で箒を操って鷹を追い払えたのは良かったのだけど……この有り様よ」
アリシアーレンはリスを胸に抱きかかえた。
リスは手足をぎこちなく動かし、体を震わせている。
「仕方ないですね…。しばらく世話をしますか。」
「そう言ってくれると思ったわ。」
笑顔のアリシアーレンにギアが一言。
「箒の件はまた後で。」
アリシアーレンは笑顔のまま固まった。
「…シャワーを浴びてくるから、この子よろしくね~!」
リスをギアに預けると、そそくさと逃げて行った。
「……。」
ギアはリスを連れてキッチンへ向かった。
「どう、ギア?」
すっきりした様子でアリシアーレンがキッチンにやって来た。
きれいに拭かれ、手当てされたリスは、アリシアーレンを見つけるとギアの手を離れた。
「軽傷ではないですが、重傷というわけでもなさそうです。…というか、野生の割には、ヒト慣れしていますね?」
「まあね。動物言語キャンディーを持っていたから。」
食べた者はどんな動物にも言葉が通じるキャンディー。アリシアーレンはそれを食べたのだと種明かしをした。しかし、ここで一つの疑問が浮かぶ。
「……そのキャンディーはなぜ持っていたんです?」
訝しげに聞くギア。動物言語キャンディーは、携帯するような物ではない。
「いつかに鞄に入れてた物がそのままだったのよ!」
「待っっってください。いつから入れっぱなしか分からない物を口に入れたんですか?!お腹壊しますよ?!!」
「しないわよ、毒でもないのに。毒でもしないけど。」
あっけらかんと笑うアリシアーレンに、ギアはため息をついた。
「そうだわ!ギア、外の竃も準備しておいてね。」
「かまど…ですか?分かりました。」
リスの頭をなでながらアリシアーレンは告げる。
「今日の授業、課題が成功すればこの子と仲良くなれるかもね?」
~魔法使いのメモ~
☆炎華…火薬の性質を持つ花。様々な色がある。それを使って花火を作ると、通常の花火より空中での持続性が高く、かつ複雑な模様を簡単に作れる。
☆動物言語キャンディー…食べた者は、どんな動物にも言葉が通じるキャンディー。動物が食べても効果はない。
たまに文を追加したり表現を変えたりしてます。よろしければ、読み返してみてください。
アリシアーレンは、大人の雰囲気を持ちながら子供のように結構やらかしますね。ギア、大変そう…。
追記 2021年11月8日
「魔女の敵」の閲覧人数がのべ100人を超えました。
とても嬉しいです。ありがとうございます!




