第15章、レフィアの指導⑤
長々とお待たせしました。
以前もお伝えしましたが、この章は、話の展開を考えるのが難しいもので…。
…頑張ります。
休憩後、授業は再開された。
「次の内容に行く前に、復習だ。」
レフィアは視線をイーラに向けた。
「魔女が死ぬ方法が失われる前、魔女が死ぬことが許されるのは何歳と決まっていたか。」
「八百歳以上!」
「それはなぜか。」
「魔女は不老不死である反面、子供が生まれにくいから…、魔女の数を維持するため!」
「では、そのために付け加えられた、年齢以外で、死ぬための条件とは?」
「えっと…子供を生むこと!」
「よろしい。」
そこでレフィアは、目線をギアへと移す。
「魔女が死ぬための方法…〈赤い光の蝶〉は、どのようにして魔女に伝えられていた?」
「口伝。代々、八百歳を迎えると、年上の魔女から教えられていた。」
「その理由は?」
「若い魔女に死なれて人口が減ることがないようにするため。」
「では―――どうしてそれが途絶えた?」
ギアは、重々しく口を開いた。何十回、何百回、何千回とうんざりするほど聞かされ、叩き込まれた内容だ。
「―――…人間が、奪ったから。」
重い空気。
しかし、レフィアは続ける。
「その具体的な方法は?」
「……死にたがっていた若い魔女たちを、…人間が唆して、…〈赤い光の蝶〉のレシピを知る魔女を襲って、魔女が死ぬ方法を強引に聞き出した。…それから、その若い魔女も、レシピを知る魔女も、全員殺してしまって、最後に、レシピを知った人間も死んだことで、誰も魔女が死ぬ方法が分からなくなってしまった。」
意地が悪い、とギアは感じた。
魔女たちは、事あるごとに、人間の罪を語る。人間に罪の意識を植え付けようとする。魔女に人間を信じるなと忠告する。
だが、それにどれほどの効果があるのか、そもそもそれに意味はあるのか、とギアは思っている。ギアだけでない。人間の中には、少なからず、魔女が本当の不老不死になってしまった歴史を聞かされることに、退屈を感じている者がいる。
魔女から死ぬ方法を奪った人間は、とっくに死んでいる。〈裏切りの魔女〉と呼ばれる、当時、人間に唆されるがまま仲間を襲撃した若い魔女たちも、亡くなっている。今 残っているのは、憐れな被害者と、大罪を犯した者の遥か遠い子孫だけ。
責任を取るべき――…罪を背負うべき当時者は、もういないのだ。
「〈赤い光の蝶〉が失われ、魔女はどうなったか。」
「…完全に死ぬことができなくなり、心を病む者が増えた。」
アリシアーレン、リシアの顔を思い浮かべるギア。
「他には?」
「他? 他…は……。」
目を泳がせるギアだったが、レフィアの射抜くような真っ直ぐな目に、はっと気付いた。
「そうだ、神殿魔女も増えた。」
神殿魔女は、元々、それほど多くはなかった。
だが、〈赤い光の蝶〉のレシピが失われた後、心を病む魔女が増え、子供の魔女に十分に目が配られなくなり、また、頼れる年長の魔女がいっぺんに喪われたために、人間の暴挙を止めることが難しくなり、魔女は弱い立場に追い込まれることになった。
そうして、神殿に閉じ込められ、人間に利用される魔女が増えたのだ。
「……この歴史を、念頭に置いた上で、魔女が死ぬ方法を探してくれ。」
レフィアはそう言うと、手をパンッパンッと叩いて、空気を変えた。
「歴史は全て教えた。これからは、〈赤い光の蝶〉のレシピに関する実験と推測について教える。部屋を移動するぞ。」
こうして歴史の授業は一日もかけずに終わり、すぐさま次の項目――魔法薬学の授業が始まった。




