第15章、レフィアの指導➀
やっと新しい章です。今回も長くなりそうです。
「あの魔法陣の上に立ちなさい。アタシが次の修行場に送ってあげるわ。」
ロッドが庭の一角を指差す。そこには、魔法陣が描かれた大きな紙が広げられていた。
ギアとイーラはその中央に立ち、ロッドとその魔獣たちとひとりひとり目を合わせる。
「ありがとう。とてもいい修行ができて、感謝しています。」
「勉強になったし、楽しかったわ!ありがとう!」
ギアとイーラが感謝の言葉を述べると、ロッドとその魔獣たちは、それぞれニヤリ、ニコリと笑った。
「ま、せいぜい頑張りなさい、ギア。」
「次に会った時は、さらに成長なさっていることでしょう。そのお姿を楽しみにしていますね」
ロッドとツーデルトが別れの言葉を掛ける。その他の魔獣は、「楽しかった」や、「ご飯がおいしかった」など、口々に感想を述べる。
「次の魔女のところでも頑張りなさい、ギア。」
ロッドが魔法陣に魔力を流した。
「「行ってきます!」」
ギアとイーラがそう言った次の瞬間、ふたりは別の場所にいた。
(次の修行を指導してくれる魔女は誰だ?)
ロッドは、修行をつけてくれるのは全員、ルートノーダの魔女だと言った。しかし、ギアが思いつくルートノーダの知り合いなんて、そう多くない。というか、真っ先に思いつくのはロッドとエデリオンくらいだ。
(……いや、もう一人いたな。)
ギアが何気なく振り向いた先にその魔女はいた。
「―――レフィア。」
「…久しぶりだな。」
昔と変わらず、感情が抜けたような淡々とした話し方、そして、人を寄せ付けない冷たい雰囲気を醸し出している。
「…大きくなったな、お前。」
レフィアがつま先から頭まで見てそう言った。感傷どころか感情が一切こもっていない。
きっとレフィアは、懐かしさや切なさなどからそう言ったのではないだろうとギアは思った。レフィアは時の流れなど気にしない。ただ、ほんの少し前に出会った少年がいつの間にか成長していた、その事実を口にしただけなのだろう。
「お前に修行をさせるから指導してやって欲しいと、ロッドを通じてルウシャという魔女に頼まれた。本当は最初、師匠が指導する予定だったが、師匠は今、手が外せない用事があって、わたしが替わりにお前の面倒を見ることになった。師匠が組み立てたプランに沿って授業をしてやるから、安心しろ。」
(師匠…エデリオンさんのことだな。)
エデリオンの姿を思い浮かべ、また、レフィアと初めて会った時のことを思い返す。確かに二人は、出で立ちや話し方、雰囲気が似ている。
いつぞや、二人が師弟と聞いて大した驚きはなかったし、今も納得する。
簡潔に話を終わらせ、レフィアは手招きする。
「ついて来い。まずは、家に案内する。」
荷物を背負い、ギアはレフィアについて行く。
「レフィアはここに一人で住んでいる…んですか。」
ギアが敬語を使う違和感を感じたのか、レフィアが静かに視線を向けた。
「何だ、お前、話し方を変えたのか。」
ギアとレフィアが出会ったのは、ギアが幼い頃で、レフィアの第一印象は強烈だった。
幼いギアは、人助けや制裁のためとは言え、人に容赦なく力を揮うレフィアの過激さを見て、子供心に、レフィアに恐れを抱いた。そして、自分を守るように、強がって生意気な言葉をレフィアに向けていた。
レフィアはそのことを覚えているのだろう。
「あの頃は…ナマイキなガキで…すみませんでした。」
「別に」とレフィアは視線を戻した。
「わたしに丁寧な言葉も態度もいらない。お前の好きに話せばいい。」
「じゃあ…その言葉に甘えるよ。」
ギアはイーラと話す時のように楽な口調に変えた。
(何だかやりにくいな…。)
レフィアは、ほとんどの者が知らない、ギアの秘密の過去をよく知っている。そして、レフィアはほとんど変わっていないようだが、ギアは自他共に認めるほど、成長した。変わっていない者に、変わったことを指摘されるのはこそばゆい。
これからの修行を考え、ギアは心の中でため息を吐いた。




