第11章、魔女の誕生日②
優しい色のコーンクリームスープ。
ハムとチーズ、トマトとレタスを挟んだ分厚いサンドイッチ。
葉物野菜をふんだんに使い、トマトやアボカド、卵を乗せたサラダボウル。
ハーブが香る大きなロブスター。
バターと胡椒と一緒にオーブンで焼いたポテト。
色とりどりの甘いカップケーキ。
そして、数日前にルージとヌヌからもらった果実酒とジュース。
これでアリシアーレンの誕生日の料理は揃った。
ギアは、次々とそれらを外へと運び出す。
外には、品よく飾りつけしたテーブルセットが。テーブルクロスにある小さな皺をのばしつつ、料理を並べていく。
持ってきた分を並べ終わり、他の料理を持って来ようとしたところで、ちょこちょこと忙しなく足を動かし、こちらに向かってくるイーラを見つける。イーラは、ギアが用意した橋を使ってテーブルへと上った。
「アリシア様の席はここよね?」
「ああ。」
ギアが頷くのを確認し、イーラは口にくわえていた花を置く。そして、背負っていた鞄から次々と大小様々な実を取り出し、見栄えよく置いていった。
「どうかしら?!」
「いいんじゃないか。」
キラキラとした瞳でギアを見上げたイーラ。どうやら、彼女なりの祝い方らしい。
「料理を運び終えたら、アリシアを呼んでパーティー開始だ。着替えるなら今だよ。」
「そうね!」
イーラはテーブルを下りて、家の中へと駆けて行った。
(さて、俺も早く終わらせなきゃ。)
ギアも家の中へと吸い込まれていった。
やがて、テーブルを整え、めかし込んだギアは、やや緊張した顔をしてアリシアーレンの部屋をノックした。準備が終わるまでは、部屋から出てこないようにと言っておいたのだ。
「大丈夫よ、ギア。アリシア様、きっと喜んでくれるわ。」
肩に乗ったイーラがこそっと耳打ちする。
「…ああ。」
そわそわする気持ちを抑えきれない様子で、ギアが返事をした。
今回の誕生日パーティーは、気合いを入れておしゃれを意識したパーティーを用意した。テーブルセットは、
ギアやイーラの服装も、普段はなかなか着ない系統のものである。今日のため、少し前に街の仕立屋に注文し、今日初めて袖を通した。
今日のギアのコーデは、茶系のギンガムチェックのベストに、同じ色柄のハンチング帽、無地の白シャツに、アリシアーレンの目と同じ色の石を使ったループタイ、黒茶色のスラックス、茶系の革靴である。いつもと違う、片方に流した髪が大人っぽくてカッコイイ。さすが、仕立屋に勧められた髪型だ。
イーラは、無地のクリーム色のブラウスに、黒系のギンガムチェックのリボン、それと同じ色柄のベレー帽である。リスの頭では帽子をきちんと被るのは難しいため、斜め掛けで、片耳だけ突き出るように穴が開けられている。
また、ギアとイーラの服を注文する際、アリシアーレンの服も同じ店に頼んでおいた。コンセプトだけ伝えて、細々(こまごま)としたデザインはイーラと店側に任せたため、ギアはどんな服になったか知らない。
「やっとね。」
ドアを開けたアリシアーレンは、いつもの微笑みを浮かべていた。
アリシアーレンのコーデは、イーラのブラウスと似た色形のブラウスに、ギアと同じ色柄のVネックのジャンバースカート、ヒールのあるショートブーツである。髪型もいつもより凝っている。サイドの髪を編み込んだものを後ろ髪と併せて半分だけお団子にし、残った半分はそのまま肩に流し、レースのリボンと細幅のリボンを組み合わせて結っている。全体的に可愛らしくも、大人らしい上品さが見える。
(ああ、素敵だ…。)
ギアは感動して言葉を忘れた。
「あら、素敵な格好ね、ギア。」
アリシアーレンの賛辞に、ギアははっとして、慌てて口を開いた。
「アリシア、あなたこそ綺麗です。とても…。」
やや頬を染めて言えば、アリシアーレンは微笑ましいものを見るようにクスクス笑った。
「ふふ、ありがとう、ギア。あなたはいつも褒めてくれるわね。」
「…アリシアは何を着ても似合いますから。それに、あなたは世界一綺麗だと俺は思っていますので。」
「はいはい。」
「…。」
相手にされないのは想定内。そう自分に言い聞かせ、ギアは恭しくアリシアーレンに手を差し伸べた。
「お手をどうぞ、アリシア“様”。」
アリシアーレンは「ふふ」と笑うと、すまし顔でギアの手を取った。
ファッションに詳しくないので、ぼんやりとしたイメージを元に軽く調べました…。何となくのイメージが伝われば幸いです。




