第7章、迷子の使い②
今回「古の魔法書と白の魔女」はお休みです。
「あ…ああ。俺はアリシアーレンの弟子だからね。」
師匠の名が出てきたことに驚きつつギアは答えた。
すると、二人は喜びの声を上げた。
「良かった!」
「やった!」
そして、男の子の方がギアにこう尋ねた。
「あの、ぼくたちを連れて行ってもらえますか?」
「もちろん。…ああ、もしかして今日来ると言っていたお客様かな?」
ギアは子供たちの調子に合わせるように明るく優しく尋ねた。
「ええ!ぼくたちはアリシアーレン様の弟子の弟子。レンと…。」
「リシア!クレアルナのおつかいで来ました。」
二人はそれぞれ手を挙げた。めくれたマントの隙間から、凝った衣装が見えた。
「そっか。俺はギアだよ。よろしく。」
「「よろしくお願いします!」」
元気な声が返ってきた。それに、ずいぶん礼儀正しい。
「じゃあ行こうか。」
「はい!」「はーい!」
子供たちは返事をすると、それぞれ片腕に抱えていたものを掲げた。男の子―――レンは熊のぬいぐるみ、女の子―――リシアはドレスを着た人形を。すると、それらは徐々に膨らんで大きくなり、レンとリシアをそれぞれ抱えた。
それを見てから、ギアは箒にまたがり空へと飛び立った。レンとリシアはその後ろを付いて行く。
「面白い魔法道具だね。」
ギアは、レンとリシアのぬいぐるみと人形を話題にした。
「いえ、これはただのぬいぐるみと人形です。魔法で大きくして動かしているだけで。」
「二重で魔法を使っているのか。すごいな。」
ギアは感心した。魔法使いは魔法石がなければ一つだって魔法を使えないのに、この子供たちは二つの魔法を同時に使っている。いや、さっき姿が見えなかったのは、透明化の魔法を使っていたのではないだろうか。だとすると、三つも魔法を使っていたのだろう。
(この二人、魔女か。)
瞳を覗くまでもなく、レンとリシアの正体が分かった。だとすると、見た目より年齢を重ねているかもしれない。魔女は見た目と実際の年齢、そして中身の年齢が合わない。神殿にいるチャドが10歳前後のような身体で実際は14歳、そして未だ幼子だったように。
「えへへ。」「えっへん!」
しかし、褒められたことを素直に喜んでいる様子を見ると、やはり幼そうだ。
「二人は何歳?」
「二人ともたぶん20歳です。」
(俺よりも年上なのか…。いや、でも、魔女だったら人間に換算するとだいぶ年下のはず…。)
「そういや、二人はきょうだいなのかな?同い年なら双子…とか?息ぴったりだし、ぬいぐるみと人形の衣装がおそろいだし、仲良しだね。」
ぬいぐるみと人形の衣装だけじゃない。二人のマントもその裾から覗く靴も、明らかに同じ意匠だ。
「そうです。そう約束しました。」
「約束??」
ギアは混乱した。
「リシアたちはきょうだいの約束をしたんです。ずっと一緒、死ぬまで絶対に酷いことしないって。」
「???」
「そういえば、ギアさんは何で雨なのに外に―――」
「赤い、蝶……。」
突然、リシアが降下した。地面に衝突しかねない凄まじいスピードで。
レンはリシアの様子がおかしいことにいち早く気付き、その後を追う。
「リシア…!!」
(な、何だ?!)
ギアは慌てて箒を方向転換する。
「リシア!リシア!!」
「―――。」
レンが必死に叫ぶも、リシアはスピードを止めない。むしろ、勢いが増している。
「危ない!!!」
ドガーッン!!
ギアが叫んだ次の瞬間、リシアは激しい音を立てて崖に激突した。




