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魔女の敵  作者: 紀ノ貴 ユウア
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第6章、魔女の墓守②

 今回も「古の魔法書と白ノ魔女」はお休みです。

「もう一度言ってみなさい、クソガキ。」

 ロッドが挑発的に返した。ロッドは本当に挑発に乗りやすい。


「おやめください、(あるじ)様、ギアさん。家の中で暴れるなんて言語道断(ごんごどうだん)ですよ。外へ出るにしても()れるばかりで(そん)するだけなのですから、落ち着いてください。」

 ツーデルトが二人をなだめる。特に、ロッドを止めようとロッドに顔を向けている。魔法で強いのはどう考えてもロッドの方であるからだ。また、かっと熱くなりさっと冷めやすい二人の性格を熟知しており、ロッドさえ静まればギアも引き下がることを分かっていた。


「うるさい。」

「止めないでツーデルト。」


 ツーデルトはため息を吐いた。そして、ふと遠くを見つめるように一点を見つめて告げる。

「ルージの足音が聞こえます。アリシア様が帰って来たのでは?」


 ルージとはロッドの魔獣だ。ちょっと間抜けな元気っ子であり、ロッドの魔獣の中では末っ子のような(あつか)いをされるが、ロッドと契約(けいやく)して意外と長い(くま)である。

 ロッドの魔獣たちは、交代で墓場を見回りしている。ちょうど交代の時間だったルージは、アリシアーレンと共に墓場に行っていた。


 そしてツーデルトの言葉通り、(まど)からルージが走って戻って来るのが見えた。しかしアリシアーレンと一緒ではない。ルージは、大型魔獣のために大きい設計にされているドアを勢いよく開けて入って来た。


「ロウ、一大事だよ!この大雨で土砂(どしゃ)(くず)れが起きて、一部の墓が土に()もれちゃった!」


 ロッドはすぐさま表情を切り替え、一言。

「すぐ行くわ。」

 そして服を着替えに家の(おく)へと()けて行く。


 その背にルージは声を掛ける。

「今はアリシアさんが他にも被害(ひがい)が出ていないか見ているよ!おれっちも戻るね!」

 そこをギアが引き留める。

「墓場にいた皆は無事か?」

 ルージは振り返る。

「アリシアさんは大丈夫。おれっちたちがいた場所とは離れたところが(くず)れたから。他の皆は…分からない。ギアも来る?」

「ああ。」

「おれっちの背中に乗って。」

 ギアはルージの背中に乗った。雨をはじく魔法を発動させる。

「わたくしは(あるじ)と共に参ります。」

 そう言って家の(おく)へと引っ込んだツーデルト。遠くで「起きてください、みなさん!」と他の魔獣に声を掛けているのが聞こえた。


「行くよ!」

 ルージが地を()った。大きな振動(しんどう)。振り落とされないようしっかりとしがみつくギア。



 ルージのおかげで、すぐにアリシアーレンと合流できた。(そば)にはロッドの魔獣である鹿(しか)が少し(どろ)が付いた状態で立っていた。

「アリシア、大丈夫ですか。」

「ええ。ただこの通り、墓の一部が()もれてしまったわ。」

 アリシアーレンが指差す方向は、酷い有様(ありさま)だった。


 大量の土が雨水を(ふく)んで(どろ)と化し、それが墓標(ぼひょう)があったであろう場所になだれ込んでいる。さらに数本の木も(おお)(かぶ)さり、瓦礫(がれき)撤去(てっきょ)は一苦労しそうだ。墓場を囲んでいた(さく)すらも見えなくなっている。


「ねえさん!」

 ロッドも追いついた。ツーデルトの他、大型の魔獣が二匹、応援(おうえん)に来たようだ。

「状況は?」

「帰ろうとしたところで土砂(どしゃ)(くず)れが起きて、上空から確認したのだけど、あそこが()もれている他はあと一か所がダメになっているわ。とりあえず、水と土から墓場を守る魔法を掛けておいたから、これ以上の被害は出ないでしょう。」


 墓場は普段、野生動物の侵入(しんにゅう)(はば)む魔法が掛けられているが、このような場面を想定した保護魔法は掛けられていない。常にそのような大規模(だいきぼ)な魔法を展開するのは大変だからだ。


「ありがとう。」

 少しほっとしたようにロッドがお礼を言った。

 しかし、アリシアーレンは表情を(くも)らせたままだ。

「でも、あなたの魔獣が一匹見当たらないのよ。」


 ロッドは基本、三匹の魔獣に墓場の仕事を(たの)んでいる。それが、この(くま)鹿(しか)以外に今まで墓場にいた魔獣が見当たらない。異常事態が発生した場合は連絡(れんらく)を取るようロッドに言われているにも関わらず、その姿が見えないということは、その魔獣は何らかのトラブルの渦中(かちゅう)にいるのだろう。もし土砂に埋まっているのだとしたら大変だ。


 ロッドはツーデルトを呼んだ。

「はい、(あるじ)様。」

 ツーデルトは差し出されたロッドの(うで)に飛び移ると、片足を差し出した。その足には、銀色に光る金属の()がはめられている。ロッドの目と同じ緑色の魔法石がはめ込まれているその()は、ロッドの魔獣全てが身に付けているアクセサリーだ。


 ロッドはそれを親指と人差し指ではじいた。途端(とたん)に、そのアクセサリーに光が集まる。発光(もと)は、魔獣それぞれが身に付けているアクセサリーの魔法石だ。


 この場や家の方角から()びている光を(のぞ)き、たった一つ、別の方向から光が(とど)いている。

 光の先は……すぐ近くの土砂(どしゃ)の中だ。


「大変だ!!」

 ルージの声で、(みな)一斉(いっせい)に動き出した。

 ~魔法使いのメモ~


☆魔獣…魔女や魔法使いと契約(けいやく)した動物。通常、契約(けいやく)(あかし)に、魔法石をはめ込んだアクセサリーを与える。簡単な魔法が使えるようになる他、寿命(じゅみょう)契約者(けいやくしゃ)と同じくらいになる。普通の動物よりも怪我(けが)や病気に強くなるが、致命傷(ちめいしょう)や重病の場合は命を落とす。また、人語(じんご)キャンディーがなくても、魔女や人間とお(しゃべ)りが可能になる。

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