↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NULL WORLD ―世界の外側―  作者: 雛
Eden ―偽りの世界―
PR
5/16

3、異能者たち

 百体の黒い影が、夜空から降ってきた。


 着地の瞬間。


 ――ドンッ!!


 道路が揺れた。


 黒い装甲。


 無機質な白い仮面。


 胸元には、赤い文字で《ADMIN》と刻まれている。


 レンは息を呑んだ。


「……百体って、本気かよ」


「正確には百二十七」


「数えてる場合か!」


 隣でユナが笑った。


「大丈夫」


「何が?」


「あなたなら勝てる」


「いや、俺まだ能力の使い方すら――」


 言い終わる前に、一体のADMINが消えた。


「……え?」


 次の瞬間。


 目の前。


 拳が迫っていた。


「レン!」


 ユナの声。


 レンは反射的に右手を上げた。


「《反転》!」


 拳に触れた瞬間。


 ――グンッ!!


 ADMINの身体が後方へ吹き飛んだ。


 しかし。


 それだけでは終わらない。


 吹き飛んだADMINが空中で姿勢を変え、再び突っ込んでくる。


「嘘だろ!?」


「普通のプレイヤー用じゃないから」


 ユナが手を伸ばす。


 黒い亀裂が空中に走った。


 ADMINの身体が、その亀裂に触れる。


 ――消失。


 まるで最初から存在していなかったように、姿が消えた。


「……今のが《NULL》?」


「違う」


 ユナは首を振る。


「私の能力は《削除》」


「削除?」


「触れたもののデータを消す」


 レンは少し黙った。


「……それ、かなり強くない?」


「だから追われてる」


 その直後。


 大量のADMINが一斉に動いた。


「来る!」


 レンは構える。


 右から三体。


 左から二体。


 正面から一体。


「多すぎる!」


 拳。


 蹴り。


 刃。


 次々と攻撃が飛んでくる。


 レンは避けながら考えた。


 《反転》。


 ただ方向を変えるだけ。


 それなら――


「……!」


 レンは足元を見る。


 道路。


 そこには、ADMINたちの影が落ちていた。


「試してみるか」


 レンは地面に手をついた。


「《反転》」


 瞬間。


 世界が反転した。


「な――」


 ADMINたちの身体が、突然空中へ引っ張られる。


 重力。


 その方向を反転させた。


 敵が一斉に空へ浮かび上がる。


「今だ!」


 ユナが手を振る。


 空間に無数の亀裂が生まれる。


 ADMINたちが次々と消えていく。


 十体。


 二十体。


 三十体。


 だが。


 残りの部隊が一斉に距離を取った。


 その中央から、一人の男が歩いてくる。


 黒い装甲。


 だが、他のADMINとは違う。


 顔を隠していない。


 銀色の髪。


 鋭い目。


 右手には青白い光がまとわりついている。


「……下がって」


 ユナが言った。


「こいつは普通のADMINじゃない」


「知ってるのか?」


「うん」


 男が口を開く。


「久しぶりだな、ユナ」


「……カイ」


 男――**神崎カイ**は笑った。


「そして」


 カイの視線がレンへ向く。


「黒瀬レン」


 レンは構える。


「俺のことを知ってる奴、多すぎないか?」


「当然だ」


 カイが一歩進む。


「俺は五年前から、お前を知っている」


「……五年前」


 レンの頭に、また白い部屋が浮かんだ。


 だが。


 今回は違った。


 少年の自分。


 ユナ。


 そしてカイ。


 三人が並んでいる。


 笑っている。


 まるで――


 友達のように。


「……俺たち」


 レンが呟く。


「昔、会ったことがあるのか?」


 カイの表情から笑みが消えた。


「違う」


「え?」


「俺たちは――」


 カイが拳を握る。


「**一緒に戦っていた**」


 ――ドン!!


 カイが消えた。


「速っ!」


 レンが振り向く。


 だが遅い。


 カイの拳がレンの腹部へ迫る。


 レンは右手を突き出す。


「《反転》!」


 触れる。


 ――はずだった。


 しかし。


 カイの拳がレンの手の直前で止まった。


「……!」


「俺の能力は《加速》だ」


 カイが笑う。


「速度を上げるだけじゃない」


 拳が動く。


 世界が遅くなる。


 レンには、カイの腕がほとんど見えなかった。


「**相手の認識速度まで操作できる**」


 次の瞬間。


 レンは吹き飛んだ。


「レン!」


 地面を転がる。


「ぐっ……!」


 痛い。


 立ち上がろうとする。


 だが。


 カイが目の前にいる。


「終わりだ」


 拳が振り下ろされる。


 レンは咄嗟に右手を掲げた。


「――《反転》!」


 今度は拳ではない。


 **速度そのもの**を狙った。


 カイの拳が止まった。


「……何?」


 カイの目が見開かれる。


 レンは笑った。


「速度を操作できるなら――」


 拳を押し返す。


「その速度を、反転させればいい!」


 ――ドン!!


 カイの身体が後ろへ吹き飛ぶ。


 ビルに激突する。


 だが。


 カイは壁に足をつけ、そのまま立ち上がった。


「……なるほど」


 口元が笑う。


「少し思い出してきたな」


「何?」


「お前は昔からそうだった」


 カイは拳を構える。


「自分の能力を理解する前に、敵の能力を理解して勝つ」


「……」


「だから――」


 カイの周囲の空気が震える。


「俺はお前が嫌いだった」


 次の瞬間。


 カイが消えた。


 レンは目を閉じた。


 見るんじゃない。


 感じる。


 風。


 音。


 地面の振動。


 そして――


「そこ!」


 レンが振り向く。


 カイの拳とレンの右手がぶつかった。


 ――バァン!!


 衝撃波。


 二人が同時に吹き飛ぶ。


 レンは片膝をつく。


 カイも数メートル後退した。


「……互角?」


 レンが呟く。


 カイは答えなかった。


 代わりに。


 空を見上げた。


「時間だ」


「何が?」


「この世界の管理者が来る」


 ユナの顔が青ざめる。


「……まさか」


 カイが笑う。


「そうだ」


 空が黒く染まった。


 今までのADMINとは比べものにならない。


 都市全体を覆うほどの巨大なシステム画面が出現する。


 その中央に。


 たった一つの文字。


 **《ADMINISTRATOR》**


 そして。


 無機質な声が響いた。


『対象:KUROSE REN』


『存在レベル:NULL』


『危険度:測定不能』


『処理を開始します』


 レンは拳を握る。


「……処理?」


 ユナがレンの腕を掴んだ。


「逃げるよ!」


「でもカイは?」


 振り返る。


 カイは立っていた。


「俺はここに残る」


「なんで?」


「お前たちを逃がすためだ」


 カイが笑う。


「レン」


「……」


「次に会うときは――」


 青白い光がカイの身体を包む。


「**敵として会おう**」


 レンが叫ぶ。


「カイ!」


 だが。


 ユナがレンの腕を引いた。


「今は行く!」


 二人の足元に黒い亀裂が開く。


 その瞬間。


 巨大な光が都市を貫いた。


 ――世界が白く染まる。


 レンが最後に見たもの。


 それは。


 こちらを見つめるカイの姿だった。


 そして、その口が動いた。


「――思い出せ」


 世界が暗転する。


 ***


 再び目を開けたとき。


 レンは知らない場所にいた。


 古びた部屋。


 壁一面にモニター。


 その中央に、一枚の写真が貼られている。


 写真には三人の少年少女。


 レン。


 ユナ。


 そしてカイ。


 その下には、こう書かれていた。


 **《NULL PROJECT》**


 レンは写真を手に取る。


「……俺たちは、一体何だったんだ?」


 ユナは答えなかった。


 ただ。


 モニターの一つを見つめている。


 そこには五年前の映像が映っていた。


 白い研究室。


 そして。


 画面の中の幼いレンが、誰かに向かって言っていた。


 ――「僕が世界を作る」


 レンの手から写真が落ちた。


 **第五年前の自分は、すでにEdenを知っていた。**


 そして――


 **Edenは、レンが作った可能性があった。**


**――第三章・終**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。