↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瞬きのフィーリア  作者: 芳乃千里
第三章
PR
18/21

第18話 闇夜の戦い

双子の正体を確かめるべく動き出した魔法使い達。フィーリアは魔族探知に動き、ガレットは双子が身を寄せているという家屋の調査に赴く。


しかし、その行動は敵に読まれていて……?

 

「ガレット殿!」


 夜道を歩いていると、不意に男の声に呼び止められる。


「ディーヴァ。悪い、遅くなったな」


 呼び止めたのは筋肉系魔法使いのディーヴァだった。しかし、相方のセレンの姿が見えない。


「セレンはどこだ?」


「セレンは先んじて周囲を見回りに行っている。――我々も合流するぞ」


「了解!」


 二人が向かったのは、とある家屋。例の双子はそこに滞在しているらしい。


 ――数時間前。


「闇討ちぃ!?」


「しィッ!――まだ確証は無いと言っただろう」


「でも、なんでそんなことを……」


 ガレットの問いかけに、セレンは指を二本立てた。


「理由は二つある。一つは、単純にあの幼子が魔族だった場合だ。のさばらしておく理由がない。すぐさま策を練り、叩く必要がある。――そして」


「問題は二つ目だ。幼子が操られていた場合。――これが何を意味するか、わかるか?」


「……近くに魔族が潜伏している可能性がある」


「その通りだ」


「更に、操られているとしたら早々に解放せねば……彼女らの意識が戻ってこられなくなる。魔族の魔法とは、それほど恐ろしい」


 もしあの双子が操られているだけだとしたら、魔法をかけている元凶である魔族を倒さなければ、解放されることはない。


 そしてディーヴァの言う通り、長い間魔族の魔力に晒されてしまえば、たとえ魔法が解けたとしても、彼女達の意識が戻ってこられなくなる可能性がある。


「魔族との……戦闘」


 ガレットが息を飲む。魔族の恐ろしさは幼い頃に経験しているが、まともに戦ったことはない。


 その恐ろしい姿と力は、しばらく経った今でも忘れることはない。あの頃より力をつけたとはいえ、戦って勝てるビジョンはまるで浮かばない。


「その反応は正しい。……仮に魔族がいたとして、単独とも限らん。勝てる保証のない戦いになる」


 ディーヴァは淡々と語る。まるで、ガレットを諭すかのように。


「それでも、やるよ。操られてるかもなんて聞いて、放っておけない。それに……あの子たちが人を殺すところなんて、見たくない」


 俯きながらもガレットは強い意志を示した。それを見て、セレンとディーヴァは笑みを浮かべる。


「うむ……やはり見込みどおりの男だ!」


「勇敢な若者……良し!」


 決行は街の静まる深夜になった。下手に町民に見られれば、ただの不審者でしかない。タイムリミットは日が昇るまでだ。


 ◆


 ――ガレットとディーヴァが合流しようとしていた頃、時を同じくしてこの二人も動き出していた。


「ごめんねぇ、エルフちゃん。巻き込んじゃって……」


「ううん、僕も許せないから。それに……魔族の息がかかってるなら、叩くチャンスは今しかないよ」


 二人は魔法で飛びながら会話を続ける。既にミュールが《コート・ミラジア》を発動させているので、堂々と飛ぶ二人の姿を認識する者はいない。


「私は十中八九、精神干渉の魔法を使える魔族が潜んでいると思ってるけど……あなたはどう?」


「うん、僕もそうだと思う。あの場では確信は持てなかったけど、あの子達から感じたのは魔族の魔力だけだった。……あれだけ強力な魔法をかけるんだ、遠くにいるとは思えない」


 そう語るフィーリアの表情はやはり硬い。


「エルフちゃん。あなた、魔族に何か個人的な恨みがあるわね?」


「――うん、あるよ。そんなに顔に出てたかな?」


「ええ、とっても分かりやすいわ」


「そっか……僕もまだまだだね。でも、安心して。怒りで我を忘れるほど、若くはないから」


(やっぱり声をかけて正解ね……対魔族において、これほど頼りになる魔法使いもいないわ)


 ミュールは軽く笑いながら口を開いた。


「それなら安心だわぁ。じゃあ――手筈どおりにいきましょう」


「わかった。コート・ミラジアの持続時間中に、僕が魔力を辿って隠れている魔族を見つけ出す……だね」


 彼女達もまた、魔族討伐に向け動き出していた。


 そして――各々の作戦が始まる。


 ◆


「ディーヴァ、ガレット殿!」


 ディーヴァの案内の元、辿り着いたのは街の外れにある、一軒の家屋を見下ろせる丘。


「あそこに……いるのか」


 ガレットが家屋を見下ろすと、僅かだが禍々しい魔力を感じる。


「ディーヴァ!ガレット殿!」


「セレン!」


 少しするとセレンが合流した。周囲を見回してきたものの、魔族の気配は感じられなかったらしい。


「ってことはやっぱり……」


「いや、断定するのはまだ早い。魔族とて、襲撃が予測できぬほど馬鹿ではないだろう……確かめに行くしか、あるまい」


「そのようだ……気を引き締めよ」


 二人はローブを脱ぎ捨て、杖を変形させる。圧倒的な力を持つこの二人ですら、油断する素振りは微塵も見せない。


 ガレットは深く息を吸って、気持ちを落ち着かせた。


「ああ――潜入開始だ!」


 三人が揃って丘を降り始めた頃、家屋から外を眺める影が二つあった。


 それは――双子の魔法使い・アリスとエリス。


「やっぱり来たね」


「都合がいいよ。この辺りは人気もない……邪魔者を消すにはもってこいだね」


 怪しく笑う二人の目には、黒い魔力が光っていた。


 ◆


 その頃、フィーリアは街の見渡せる上空を飛行していた。地上で探知を張り巡らせるより、上空で行った方が逆探知のリスクも低く、簡単に反撃を貰うこともないからだ。


 もっとも、コート・ミラジアが持続している間はその心配もないのだが、これはミュールの提案だ。


「保険みたいなものよ。探知に力を割いている時に、もし私が突破されれば、即座の対応は難しいでしょう?」


「うーん……確かに。でもそれはミュールも同じでしょ?」


「私は分身もあるし、どうとでもなるわ。間違ってもあなたに傷を負わせたくないのよ」


 それなら、とフィーリアは納得し作戦を受け入れた。そして、杖を構え魔力を練り始める。


(……範囲は街一帯とその周辺。経験上、これ以上離れたら流石の魔族も精神操作は難しくなるはず。探知する魔力を魔族のものに絞って――よし)


 地上でミュールが頷く。


「探知……全開!」


 それを合図に、フィーリアの魔力探知が広がり始めた。距離と条件を絞っているせいで普段よりも時間がかかるが、それは作戦に織り込み済みだ。


「頼むわよ……エルフちゃん」


 ミュールが呟いた、その時。


「やはり動き出したな」


「!!」


 闇の中から聞き覚えの無い声が聞こえた。


「……お前らほどの手練だ、こうすることはわかっていた。……探知には時間がかかるだろ?その前に、消えてもらうぞ」


 姿を現したのは口元を布で隠した男。しかし、その頭には……角が生えている。


「やっぱりもう一匹いたわね……魔族さん」


 ミュールが構える。


「我が名はグリべー。この名を聞いた事、光栄に思い死ぬがよい」


 ◆


 ガレット達は魔力を極限まで抑え込み、家屋を囲んでいた。玄関付近をセレン、裏口をディーヴァ。そして、全体が見える位置にガレットが配置についた。


 セレンとディーヴァは自身の魔力を抑えているため、魔力探知が使えない。二人は目視で、やや離れてガレットが探知を行っている。


(探知は確かに得意だけど……これだけ離れちゃ、すぐ戦闘にも参加出来ない。結局あの二人任せになっちまうな)


 しばらく二人が外から家屋を探っていると、ガレットがふと違和感を感じた。


(なんだ……探知に何かが引っかかった!)


 慌てて周囲を探るも、異変は見当たらない。ガレットは冷や汗をかきながら、探知範囲を広げる。


「!ガレット殿の魔力が荒ぶっている……」


「なにか見つけたか!?」


 セレンとディーヴァもガレットの異変に気づく。


 ガレットは必死に探知を続ける。そして――その魔力の正体に辿り着いた。


「セレン!ディーヴァァァア!上だあああああ!」


 力の限り叫ぶ。こんな声を出したことは今までにない、それだけの脅威が二人に迫っていた。

 二人はその声を聞き、即座に空を見上げる。目に飛び込んできたのは、巨大な魔法陣。


「むっ!こ、これは!」


「探知が使えないとはいえ、気づかないとは……!」


「避けろー!!!!」


 ガレットが叫ぶと同時に、魔法陣から一筋の光が発射された。


 そして地上に降り立った瞬間――


 ドゴォォォン!!!!


 巨大な球体に膨れ上がったエネルギーが、家屋の一帯を吹き飛ばした。


 無論、爆心地にいたセレンとディーヴァはもろに巻き込まれる。


「ぐああああ!!」


「くっ……無念!!」


 土煙が晴れ、目に映るのは瓦礫の山。


 そして……静かに近寄る二人の人影。


「こんな罠に引っかかってくれるなんて、馬鹿なのかなあ」


「なんにせよ、手間が省けたよ。ありがとね」


 アリスとエリスだ。もはや隠すつもりも必要もないのだろう、堂々と魔力を漲らせている。


「セレン!ディーヴァ!」


 二人に声をかけるも、反応はない。


「あははは!見たでしょ!もう死んでるよ!」


「粉々になって溶けちゃったんじゃない?うふふ!」


「ぐ……くそっ!」


 双子の醸し出す圧力に、ガレットはやはり身動きが取れなくなる。


(どうする……)


 ◆


 ガレット達が魔法攻撃を受けたのと同時刻。魔族の魔力にのみ探知を限定していたフィーリアも、その異変を感知していた。


(誰かがあの双子と戦ってる……でも今は、それが誰かまでわからない)


 始まったもうひとつの戦いも気になるが、今はそれどころではない。


「早く見つけないと……」


 空を飛ぶフィーリアの下でも、戦いは始まっていた。


(ミュールの言った通りになっちゃった。……何とか耐えて!)


「どうした。そんなものか、人間の魔法使い」


 グリべーの眼前には、膝をつき息を荒らげるミュールの姿があった。


「はぁ……はぁ……うふふ。やっぱり魔族は強いわねぇ……楽しくなってきちゃった」


 逆境に立たされながらも、ミュールはなお笑う。


「お次はこちらからいくわよ……私、こう見えて器用なの」


 その目は魔族にも引けを取らないほど、怪しく輝いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。