都市へ
私達が居た『ゲンカイトチ』から『マオウコッカ』までの道のりは長かったが険しくは無かった。
『マオウコッカ』の道中で、他の村や街の人達と会って、一緒に行くことになったり、都市に働きに出てた『ゲンカイトチ』出身の若い男達が合流したりと大所帯になってきた。
合流すればするほど人数が多くなるので、その為の狩りや釣りの時間で思ったよりも都市に着くまで時間がかかった。
ラクスしか乗ってなかった私のリアカーは大所帯が野宿する時に食べる食料置き場になった。
食料でリアカーがいっぱいになり、寝る場所が無くなったラクスも私の横を歩いている。ラクスの毛布は私のリュックの中だ。
ちなみにこの団体の中で一般プレイヤーなのは私を含めて30人だ。NPCはその何倍も多い。
大名行列みたいに長い列を作って都市を目指す。
そして村を出てからゲーム内の時間で3週間後、私達はついに『マオウコッカ』に辿り着いた。
しかしすぐ入れるわけでは無い。私達よりも先に着いていた人達の列の対応で待たなくてはいけないのだった。
『マオウコッカ』の騎士団らしき魔族達も大騒ぎである。
支援品やリアカーの置くスペースの確保、その支援品を盗まれない様にする為の警備の配置、支援品の検品作業、支援者達を泊める宿屋などの確保、などなど。
更には都市の内部から「それ今後俺らが使う奴だろ。なら今くれよ。」とか「余ってるなら私達に頂戴よ。」とか聞こえて来る。それに対して騎士団達がメチャクチャ怒ってる声も聞こえて来る。
あーこれは都市に入れるまで時間がかかる奴かな?
う〜ん、これはあと2週間は野宿かな…。根拠のない予想だけど。
とりあえず、ラクスが食べる肉を狩りに行かなきゃ。
私のリアカーは鍛冶屋のおっちゃんに見てもらおう。ほら行くよ、ラクス。
ラクス「ワン!」
鍛治「嬢ちゃんのリアカーは見といてやる、だから行って来い。
…たくっ、いつになったら『マオウコッカ』に入れる様になるんだよ。
こちとら長旅だったってのに…。」
鍛冶屋のおっちゃんの都市に対する愚痴を聞き流しながら、ラクスと一緒に動物を狩る。
肉を焼いてラクスと一緒に食べるのだ。
この世界には街灯が無いので焚き火をする。他の人に文句は言われない。
そして狩りが終わった。
『動物の肉20個、鹿のツノ2本(鹿のツノは1匹の鹿から最多2本ドロップする)、羊の毛2個、動物の皮9枚、ニワトリの羽3枚』
これを持って帰る。帰っても全然列は進んでいない。まだまだ時間はかかりそうだ。
鍛治「おお、帰ったか。さっき騎士団が来て教えてくれたが、都市に入れるまで最低3週間かかるらしい。
どうやらこの列の1番前の商人、その商人が1番最初にこの都市に着いたらしいが、まだ入れてないって話だ。
ちなみにその商人は俺たちが着く1週間前にはこの都市に辿り着いていたらしい。」
うへぇ…そんなに掛かるのぉ〜?
と、落胆して居ると鍛冶屋のおっちゃんが周りを見渡して私に近づく様にジェスチャーする。そして私が近づくと小声で理由を話してくれた。
鍛冶「どうやらこの停滞の原因を閉じ込める準備と実行に3週間掛かるらしいんだ。
なんでも停滞の原因は、騎士団がどれだけ殺しても殺しても何故か蘇り戻って来る。だから一向に手続きが進まないんだと。
その原因が蘇る地点を割り当てて、その地点をデカい壁で囲むらしい。」
ほう、リスポーンで隔離とな!確か都市部は噴水前だったから何人か殺せばすぐに特定は出来る。
あとはvtuberプレイヤー達にバレなかったら余裕で隔離できる。
それなら3週間待ってやろうじゃ無いの。捕まって喚いてるvtuberを見るのが楽しみね。
その夜、私達は肉を焼いて食べていた。すると都市の方から聞こえていた騒がしい声がこちらへと近づいて来る。
??「見て下さい皆さん!これがこれから俺らに物資をくれる心優しい人達です!
いや〜見窄らしい格好ですね!本当にコイツらの物資が俺達の助けになるのでしょうか!?」
あ?なんだあの虚空に話しかけてる頭のおかしい男。いや、姿もおかしいな。あれがvtuberってやつ?なんと言うか品の無さそうなやつだ。
??「あ、もしかして俺のこと知らないの?
はぁ〜これだからゴミどもはよ〜。
俺は万能優銘だ!お前らの物資ありがたく使わせて貰うぜ!感謝しろよ!」
訂正、「品が無さそうな奴」じゃなくて「品の無い奴」だ。コイツの声聞いてるだけで不快感がせり上がってくる。vtuberって知らなかったけどこう言うのがなるんだ。
優銘「おっ!コイツら生意気にも肉食ってるじゃん!俺が飯にありつけないのに!この見窄らしい奴らは生意気にも肉を食ってる!許せねぇ!」
その言葉を吐いたかと思うと私達の夕食の肉を掠め取った。
何するんだこのゴミクズカス野郎!
思わずゴミクズカス野郎に掴み掛かろうとする…がその前に動き出した者達が居た。
「おいテメェこの野郎!」「死になさいこのカス!」「おい!コイツを殺さない程度にリンチしろ!」「このカス男を逃すな!」
手続き待ちしていた人達が、ゴミクズカス野郎を取り囲む、様々な村や街から来ていた人達だ。
ただでさえvtuberのせいで停滞していてイライラしているのだ。そんな時にノコノコと私達の前に現れて貶したのだ。
ついに待っている人達の堪忍袋の緒が切れた。
ゴミクズカス野郎「な、なんだよ!このカスどもが!お前らが俺を殺しても俺は何度でも蘇るんだよ!
そしてお前らは俺を殺した罪で捕まるんだよバ〜カ!」
その言葉に、待っていた人達が「そんなの知るか!」と言わんばかりに更に詰め寄ろうとすると、都市の方から沢山の金属がぶつかり合う音が聞こえてくる。音の方向を見ると、10人以上の騎士がこちらへと走って来ていた。
ゴミクズカス野郎「ギャハハ!早速騎士団がお前らを捕まえに来たぜ!ざまぁ ねぇな!
お〜い!ここです!ここ!俺を取り囲んでる暴徒どもを牢屋にぶち込んでやってください!
いつも仕事しないんだから、今回俺がお前らの仕事作ってやったんだ!今回はちゃんと仕事しろよ!無能どもが!」
騎士団が走ってきた事で待っていた人達が避ける様に道を開ける。
そして1人の騎士がゴミクズカス野郎に近づいたかと思うと…。
ボコッ!
ゴミクズカス野郎が騎士に腹パンされた。
騎士1「牢屋に入るのはお前だクズ。お前のやった事は全部知っている。
お前の大好きな牢屋に入れてやる。それもとびっきり劣悪な環境の牢屋にな。」
そう言って騎士はゴミクズカス野郎を引き摺る。
ゴミクズカス野郎「はぁ!?違うだろ!俺じゃ無いだろ!アイツらを連れていけよ!無能なゴミが!
テメェらゆるさねぇからな!覚えとけ!牢屋から出たらテメェら全員皆殺しにしてやる!」
そうしてゴミクズカス野郎は連行されていった。
騎士2「ご迷惑をお掛けしました。お詫びと言うお詫びはできませんが、その代わりに準備を早めます。
大丈夫です。魔王様がこの事態を聞き他の仕事を後回しにしてすぐに壁を作ってくれるとの事なので、遅くても明日には入れる様になります!」
その言葉に、待っていた人達は喜びの雄叫びをあげる。
そして1時間後、都市の方から男女の悲鳴が聞こえてくる。リスポーン閉じ込め作戦が始まったのだろう。
その悲鳴が止んだと同時に1番前の商人がようやく都市へと入った。
それからゲーム内の時間で3時間後、私や村の人達も全員無事に都市へと入れた。
ちなみに他のvtuberは居なかったし、噴水の方角から男女の怒鳴り声が聞こえてくる。
無事に閉じ込め作戦は成功した様だ。
こうして私達の都市での活動が始まったのだった。




