13* 虐げられる異能の少女
※本話には、虐待(身体的・性的)に関する描写が含まれます。作者の表現上の意図によるものであり、過度な刺激を与えることを目的としておりません。
苦手な方は、本話を飛ばしてください。内容の要点は、「玲奈は両親に虐待され、警察と児相はそれを見逃した」。この一点を把握していただければ、物語の流れは問題なくつながります。
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玲奈は、両親に怪異が見えることを言ってしまった。それ以来、両親は玲奈を気味悪がるようになった。そして…… ことあるごとに、玲奈に暴力を振るうようになった。
山田製作所は社長の死去で廃業した。竜作は、山田製作所の取引先だった小さな町工場で働くようになった。竜作は玲奈が変なモノを呼び込んだせいで、恩人の山田社長を死なせたと信じこんだ。竜作の心に、玲奈への憎悪がつのった。
竜作は気に食わないことがあると、すぐに玲奈に手をあげるようになった。玲奈はいつも厳しいしつけを受けるようになった。竜作は…… 再び酒とパチンコに没頭した……
玲奈は荒れた。学校で気に食わないことがあると、すぐクラスメートに手を出すようになった。そのたび両親は呼び出された。そして両親は、教師と相手の親に頭を下げ続けた。
「ふざけんな!」
パシィ
「この疫病神が!」
(ああ、まただよ。なんでコイツの憂さ晴らしに、アタイは叩かれ続けなきゃならないんだろ…… くそオヤジはパチンコ行って酒飲んで…… 震災から立ち直りを夢見たって言ってたけど…… うまくいかなかったからって、アタイのせいじゃない……)
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真理子は家計を支えるため、パートに出るようになった。彼女を救ってくれた大恩あるスナックのママ・久美は入院し、夜風は休業していた。真理子は久美の病気も玲奈のせいだと信じた。彼女は何かあると、玲奈に暴力を振るうようになった。
(テメエもだよ。いつも暴力ふるいやがって。アタイが何をしたっていうんよ)
震災からの立ち直りを夢見て、希望に満ちていた竜作と真理子。その二人は、もうどこにもいなかった。牛城家はギスギスした雰囲気になっていた。
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玲奈が小学五年生になった。両親からの暴力は、止むことがなかった。玲奈はいつも殴られ、心が荒れていた。
ある日、玲奈の暴力で怪我をしたクラスメートの親が、怒鳴り込んできた。
「何してくれるんや。おたくのしつけ、どないなっとんねん」
「すいません。骨身に染みるほど、きっちりしつけますんで……」
竜作はペコペコと頭を下げた。
その夜、酒に酔った竜作は、玲奈に分からせてやると、玲奈にのしかかった。玲奈は女性らしい身体つきになっていた。竜作は玲奈をひどくぶったあと、父親としてしてはならない行為を行った。
そして…… 母の真理子は、それをものすごい目で見ていた……
それ以来、玲奈は父からの心と身体の支配、そして母からは嫉妬まじり暴力という二重地獄に閉じ込められた。彼女の心に深い傷が刻まれた。牛城家はますます、闇の底へ沈んでいった。
(勘弁してほしいわ…… 母親からはぶたれて、父親からはキモチワリイことされてよ……)
毎日が地獄だった。玲奈の心はひどくすさんでいた。家に帰りたくなかった。けれど他に行くところもなかった。ルララララ ルララララ。彼女は静かに口ずさむことでささくれた感情をやり過ごした。それで「うるさい」とぶたれることはあったが……
玲奈の泣き声を聞いた近所の住人が、警察に通報したことがあった。しばらくして、児童相談所の相談員が訪ねてきた。だが、相談員の前では、竜作も真理子もひたすら頭を下げた。手をあげたことを後悔しているかのように反省の色を見せた。
玲奈がクラスメートに暴力を振るっていたのは事実である。相談員は玲奈自身に問題があり、両親が一生懸命育てているとの説明を、うのみにしてしまった。両親の外づらにごまかされ、玲奈はセーフティーネットの網目にひっかからなかったのである。
玲奈は学校で気に入らないことがあると、ささいなことでも、すぐに手を出すようになった。学校からの呼び出しは、日常茶飯事になった。
玲奈はますます、両親から暴力を振るわれるようになった。
「この禍もんが!」
「…泥棒猫……」
ルララララ ルララララ。誰にも愛されない一人の時間。彼はこっそり唄い続けた。ルララララ ルララララ。その歌は、玲奈の両親の心を、ますますいらだたせた。
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中学になった玲奈は、通りすがりの男が振り返るほどの美人に成長していた。彼女は年齢にそぐわない、大人びた女の色気を纏っていた。その自覚は玲奈にはない。いや、あるいは目をそらしていただけなのかもしれない。
学校で玲奈はモテた。けれど近寄る男たちを睨みつけ、男を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。
「君どうしたの?ごはん奢ろうか?」
ある夕暮れ時、玲奈はフラフラと三宮センター街を歩いていた。男はそんな玲奈を見て、舌なめずりしながら声をかけた。男の顔には優しげな笑みが浮かんでいた。空腹だった玲奈は、言われるまま男について行った。
ナンパしてきた男は優しかった。男は岸本和馬と名乗った。三ノ宮のバーの店員であり、スカウトだった。彼は高校で問題を起こして中退した。その後、日雇いや夜の職を転々としながら過ごすようになった。
彼は人当たり良く、玲奈に優しく接した。思いやりがある風に玲奈の話に相槌を打ち、ときには怒りの言葉を発した。玲奈はこれほど人から理解され、優しくされた経験がなかった。
気が付いた時、玲奈は大泣きしながら岸本に抱きついていた。岸本は優しく玲奈の頭をなでていた。
(こんな優しい男、初めてやわ……)
しかし岸本の心の中では、恐るべき考えが張り巡らされていた。彼は玲奈の話を聞いて、いい商品になると、ほくそ笑んでいたのである。岸本は女性の搾取に、何のためらいもないパーソナリティーを持っていた。
玲奈は親の目を盗み、岸本と会うのが、何よりの楽しみになった。岸本は玲奈を抱きしめつつ、しかし身体の関係は持たなかった。玲奈は岸本に、誠実さを感じた。
岸本が誠実だったというのは、うぶな玲奈の思い込みである。刑法では中学生(十三~十五歳)の少女は、「被保護者」とされている。成人が性行為やわいせつな行為をすれば、同意の有無に関係なく「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪(強制性交等罪)」として重罪に問われる。
こうした犯罪行為は警察の捜査対象となるリスクが高く、業界追放にもなりかねない。岸本は女に困っていなかった。「初めて」でない女――岸本がすぐに手を出す必要性を感じなかっただけである。
「中学を卒業したら、親を捨てて俺のところに来るか?クソ親から守ってやるぜ?」
「アタイ、今すぐでもいい」
「いや、中学卒業は将来を考えると大切だ。それに中学生をかくまって誘拐で訴えられたらクソ親に有利だ。玲奈を守りたいんだ。卒業式までは我慢するんだ」
「わかった。頑張るよ」
岸本は玲奈を抱きしめながら、中学を卒業したらかくまうことを約束した。
玲奈は中学卒業の日を、息をひそめて待った。ぶたれても耐えた。気持ち悪いことをされても唇をかみしめて耐えた……
(卒業さえすれば、こんな家飛び出してやる)
ルララララ ルララララ
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そして卒業の日が来た。玲奈は卒業式を終えると、そのまま逃げ出した。
(これでようやく、あいつらから逃げ出せる)
玲奈の心には、新しい生活への夢と期待が膨らんでいた。玲奈は岸本のマンションに飛び込んだ。そして、喜んで岸本に身体を差し出した。
しかし……
ほどなく岸本は仲間を呼ぶようになった。彼らは岸本に金を払い、玲奈はそのたびあてがわれた。言葉のない暗黙の取引…… 玲奈は、自分が商品として扱われている現実を知った。
岸本の部屋に、夜な夜な見知らぬ人々が出入りするようになった。玲奈は呼ばれれば従い、命じられれば出ていった。もはや向かわされる先がどんな場所なのか、考える気力もなくなっていた。
玲奈が岸本の本性に気づいた。しかし身体は消費されても、暴力を振るわれないだけ家よりましだった。
玲奈に平穏な日々が訪れた。
それを平穏と感じるほど、玲奈は地獄の日々を生き抜いてきたのである…… いつしか、彼女は唄わなくなっていた。岸本が気味悪がったからである。彼女はすべてを受け入れ、人形のように従順になっていた。




