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図書室で吹いた風に導かれて  作者: tomsugar


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28/33

風の庭に呼ばれて

古い家の庭に眠る記憶が、ふたりを導く。

沈黙する土の下で、風はまだ、囁いていた。


           *


放課後の図書室。

斜めに差し込む夕方の光の中で、私と颯は並んで机に向かい、「風の迎え」について集めた情報を整理していた。


「この儀式を復活させるには、いくつかの要素が必要なんだ」


颯はそう言いながら、ノートに要点を書き出していく。


一、祭壇

一、四方に立ち、祝詞を奏上する神職者

一、中央で風呼びを行う風の巫女

一、祭壇に据える、丸い鏡


「巫女の人選については、父さんに相談すれば候補は集められると思う」


そう言って、颯がこちらを見る。

私は、ゆっくりと首を横に振った。


「……でも、あの鏡だけは……」


言葉が続かなかった。

探しても、探しても、どこにも手がかりがない。

胸の奥に、どうにもならない行き止まりの感覚が残っていた。


「うん。鏡については、どの資料にも記録がない」


颯の声も、低かった。


「戦争で失われたのか、それとも……誰かが意図的に隠したのかもしれない」


静けさが、ふたりの間に落ちた。

ノートの文字だけが、淡い夕陽に照らされている。


颯と別れた帰り道、スマートフォンが小さく震えた。

母からのメッセージだった。


――今日、実家跡地の空き家、賃貸契約できたよ。

少しずつ片づけて使えるようにするつもり。

いずれは購入も考えてる。


「……風ノ宮家が代々住んでいた、あの家」


かつて、神事に関わる巫女の家系として、長く守られてきた場所。

望みは薄い。けれど――何かが、まだ残っている気がした。


週末。

母とともに空き家を訪れ、ひと通り室内を確認したあと、私はふと、庭の奥へ視線を向けた。


その瞬間、背筋をなぞるような感覚が走った。


――見られている。


理由はない。けれど、はっきりとそう感じた。

ゆっくりと目を向ける。


そこに、ひとりの少女が立っていた。

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