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図書室で吹いた風に導かれて  作者: tomsugar


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18/38

風の通り道にて

日曜日の朝、私は母とともに空き家を訪れた。

祖母との同居を見据えた、ただの物件見学のはずだった。

けれどその場所は、かつて風を封じる役割を担った、

風ノ宮家の跡地だった。


           *


私は母とともに、町のはずれにある一軒の空き家を訪れていた。祖母と同居するために、もう少し広い家を探そうと、母が不動産会社に連絡を取ったのだという。

「ここが、おばあちゃんの実家があったところよ。広いお屋敷だったから、分割されて分譲されてしまったけど」

―80平米程の土地に広々と建てられた平屋は、築40年程でそれほど古くはないけれど、長い間空き家になっていたせいで、かなり傷んでいるように見えた。

母が不動産屋から預かった鍵で、引き戸のカギを開けて中に入ると、湿ったほこりの匂いが鼻を突いた。

玄関は広々としていて、立派な靴箱が備え付けられていた。

上がりかまちを上がって、部屋に入ると、畳や襖は日焼けしている。

古びてはいるが雨漏りもなさそうで、中はそこまでひどい状況ではないようだった。


それよりも気になったのは――家の中を流れる風だった。


それは黒い (もや) のような空気で、ある一定の方向から、まるで導かれるように家の中へと流れ込んでいた。

その靄の中には、人々が歩いているような気配があった。微かに話し声のようなものも聞こえる。

彼らはこちらにはまったく無関心で、ただ道がそこにあるから通っている


――そんな雰囲気だった。


私は、胸の奥がざわつくのを感じながら、奥の和室に足を踏み入れた。

その瞬間、空気が変わった。ぴたりと温度が下がり、まるで見えない誰かの視線を感じる。


頭の中で、颯の言葉がよみがえる。

「風の通り道を見張る、重要な場所」


――ここだけ、風が行き場を失って、とどまっている。

私は、そんなことを一人で思った。


私は立ち止まり、そっと呼吸を整えた。

風の中に混ざる声に、耳を澄ませるようにして。

それは――呼ばれているのか、それとも試されているのか。

ただひとつ、はっきりとわかるのは。


この家は、まだ風の記憶を手放していないということだった。

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