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図書室で吹いた風に導かれて  作者: tomsugar


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16/33

風の抜ける道

噂と冗談が飛び交う昼休み。

加奈の言葉は相変わらずストレートで、だけどどこかあたたかい。

そんな日常のすぐそばで、誰にも気づかれずに風はまた、静かに動きはじめていた。


           *


「……もしさ、あたしにできることがあったら言ってよ!

イケメンの御守(みもり)君ともお近づきになりたいしさぁ。」


加奈らしい冗談まじりの言葉に、私は少し驚いて、それでも胸の奥が、ほんのわずかあたたかくなるのを感じた。

「ありがとう。でも……まだ、ちょっと、どう説明したらいいかわからなくて」


「そっか。じゃあ、私が必要になったら教えて」

その言葉に、私は小さくうなずいた。


小さな町の、噂のネットワークには正直驚いた。けれど、不思議とそれが嫌じゃなかった自分にも、少し驚いていた。

そのあと、いつものように図書室へ向かった。


           *


今日も、高梨葵の姿は見えなかった。

本を読んでいると、不意に強い風が吹き抜け、カーテンがふわりと大きく膨れ上がった。

驚いて立ち上がった私は、すぐに違和感に気づく。


――すべての窓は、ぴたりと閉じられていた。


冷房の音だけが、静かに鳴っていた。

ぼんやりと外を眺めていると、後ろから椎名先生が声をかけてきた。


「どう? 調査は進んでる?」

「いえ、今解決策をいろいろ探してます」

「そう、くれぐれも気を付けてね」

「はい」


帰り際、いつもの会話を交わして図書室を出た。


教室へ戻る途中、私は何度か振り返った。

何かがついてきているわけでも、見られているわけでもない。

けれど、確かに気配だけが、背中に残っていた。


教室の空気がどこかざわついているように感じたのは、

夏休みが近いせいか――それとも。


席に腰を下ろし、私は窓の外をひとつ見上げた。

雲ひとつない夏空が、まぶしく広がっていた。

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