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図書室で吹いた風に導かれて  作者: tomsugar


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12/33

風の巫女の不在

夏の光が残る放課後、私はふたたび郷土資料館を訪れた。

記憶と記録をたどるために。

私は自転車のペダルを踏みながら、待ち合わせの場所へと向かっていた。


           *


町の中心にある郷土資料館。

「こっち」

資料室の奥から、御守颯(みもりはやて)が手を振った。

机の上には、新聞の縮刷版、複写された地図、年表のメモ――散らかったままの記録たちが、風の痕跡を待っているかのように置かれていた。


「結風ちゃん、来てくれてありがとう」

「ううん……私も、気になってたから」


二人は昨日と同じ席に腰を下ろす。

結風は、祖母・志乃の話を静かに語り始めた。


「おばあちゃんは昭和五十年に、隣町の佐伯剛のもとに嫁いだの。

ほんとは、次の風の巫女になるはずだったんだけど……ひいおじいさんが、半ば無理やりお見合いをまとめちゃって。

それで急きょ、代わりに千代さんが選ばれたらしいの」


「風の巫女に内定……」

颯の目がわずかに見開かれる。

「君のおばあさん、もしかして『風ノ宮』の家の出なのかい?」


「うん、そうだよ。なんでわかるの?」


「今、僕が調べてるのが――その『風ノ宮』についてなんだ。

昔から風の巫女は、代々『風ノ宮』の娘が務めていたって言われてる」


颯はしばらく黙ったまま、まっすぐにこちらを見た。


「なら……この問題を解く手がかりを、君が知っているのかもしれない」


その言葉を聞いた瞬間、

胸の奥に、小さなざわめきが広がった。


それが何なのかは、まだわからない。

けれど確かに、

何かが、静かに動き始めている気がした。

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