4話 Extreme fuckin' bad luck. Nobunaga&Kicho(クソみたいな凶運の信長と帰蝶)
【神様一覧】
創造神パルヴァーネ
時空神ファルファッラ
運命神シュメッターリング
火燎神ケレベック
水灑神ペタルデス
風飄神ペルホネン
土壅神ボルボレッタ
兤陽神パーピリオー
暝朧神バーバチカ
【8次元/神界】
「ま、こう言う事ね。ここは神界だからいくら運が悪くてもニュートラルな状態、というか創造神パルヴァーネ様のご加護のお陰よ。必死に貴方達の運の悪さを押さえつけてるわ」
ファルファッラは憐憫の情を込めて、そう告げた。
「」
信長と帰蝶はまだ白目を剥いている。
「だけど、貴方達は仮に復活したら、その瞬間何かが起きて死ぬわね……大丈夫? ダメそうね。シュメッターリングちゃん、来てもらえる?」
ファルファッラが虚空に声をかけ、霧が集まり人型を作った。
現れたのは白銀の髪を靡かせる運命神シュメッターリングである。
揺らめく色に輝く光臨を背に降り立った。
「はいはい。彼らが今の凄まじい予言をさせた禍人ね。可哀想にバーバチカちゃんなんか気絶してたわよ? でも魂で良かったわ。地上に降ろして受肉したら地上が吹き飛ぶんじゃないかしら? ボルボレッタちゃんでも防げない火山が何故か発生して☆」
「とりあえず祝福を与えて、せめて運の数値を50程にしてもらえない?」
運の値は1~100だ。
最低でも1だが、そんな人物はいない。
どんなに不運でも35ぐらいはあるハズなのだ。
70あったら恵まれている。
しかもその運は、日々揺れ動く。
「簡単に言ってくれるわね。0には何を掛けても0なのよ?★」
なのにゼロが現れた。
不動のゼロだ。
非常事態だ。
「何それ。3次元ギャグ? それを出来るのが8次元の運命神でしょ? 早く何とかしないとパルヴァーネ様が死んでしまうわ。創造神なのに」
「はぁ。面倒ねぇ。では……★」
シュメッターリングが頬を両手で叩いて気合を注入した。
「いくわよ!? 覚悟しなさい!☆彡」
「えっ、覚悟?」
『運命は 皆平等に あるべきや 持たざる者は 持つ者にあれ 運命禍福法!! 運命神シュメッターリングが命ずる!!』
シュメッターリングが神性を爆発させ歌術を唱えた。
白銀の髪が神々しく輝く。
「ヌオォォォッ!! ダアッシャァッ!!★」
それと同時に、瞬間的に信長と帰蝶の背後に回り、輝く両手で両者の背中を思いっきり叩いた。
衣服の上からでも手形が残る、鞭の如く強烈にしなる、銀色の軌道で輝く張り手だ。
「グッハァッ!?」
「痛ッッッだ!?」
その瞬間、信長と帰蝶の体から、何か霊体らしき禍々しいモノが抜けていった――と同時に、信長と帰蝶も吹っ飛んでいった。
雲に衝突する度に側方開脚屈身2回宙返り7/4ひねり、後方伸身2回宙返り3回ひねり、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり、っぽい事をしながら吹っ飛ばされて見えなくなった。
「全く! 5.7.5.7.7全部を唱えたのは久しぶりよッ!!★」
シュメッターリングが軽く呼吸を整える。
神と言えど5.7.5.7.7は疲労が伴うのだろう。
ただし『面倒ねぇ』で済む程度の認識でもあるが。
「でもお陰で原因が去ったわ。怨霊だったのね。この8次元に来る途中、5次元あたりで、あいつらに憑りつかれていたのね。ようやく0以上にはなったわね、ってあんな遠くに。ちょっと強く叩き過ぎじゃない?」
神眼を駆使してなお、豆粒以下の信長達を見てため息を漏らすファルファッラ。
「そうでもしないと、0以上にはならないのよッ!!★」
シュメッターリングは、ファルファッラの無神経な言葉にカチンと来て言い返す。
0も異形であり偉業だが、それにプラスを付与したのは神と言えど大偉業なのだ。
「はいはい、御苦労様。『引き寄せよ 転移導線法! 風飄神ペルホネン!』よっと」
うっすらと現れたペルホネンが手をかざすと、胸倉を掴まれた様に信長と帰蝶が引き寄せられた。
2人ともぐったりしているが意識はあった。
「8次元に……『加減』という言葉は無いのか……?」
「うぅ……父上……兄上……」
信長と帰蝶は、背中側の衣服が破れ、白銀に輝く手形が残っていた。
大ダメージと共に、運勢をニュートラルに戻したのだが、この鞭の如き張り手を、神が全身全霊をもって喰らわせる程と思えば、止むを得ない運の悪さであり、神の救済(?)でもあろう。
なおやっと嵐の如く悪夢の不幸から解放された創造神パルヴァーネが、滝の様な汗をかいて座り込んだのは余談である。
「さっきも言ったけど、魂でそこまで重症になるのも凄いわね。流石特別製の魂って所かしら? まぁ良いわ。痛みぐらいは取ってあげましょう。『月明り 照らし賜うは 月光闇癒法! 暝朧神バーバチカ!』」
さっき気絶したといわれたバーバチカがぼやけた姿で、かつ、若干引き気味に現れ、信長たちに月明りを注ぐ。
「おぉ、ジンワリと癒される……!」
「私、この神様好きかもしれません! ……あっ?」
しかしバーバチカは逃げるように消えた。
「ワシらって……そんなに嫌われおるの……? ……何かどこかで言った記憶があるセリフな気がする」
まだ記憶の整理が終わってないので、不思議な既視感を感じる信長であった。
「逃げたのは嫌いって訳じゃないけど、ただ、余りにも邪悪な怨霊に取りつかれていたからね。さっき出て行った怨霊は崇徳帝、菅原道真、平将門って記録されてるけど、その怨念力だけなら我々にも匹敵するかもしれないわ」
「なんじゃと!?」
「あの怨霊たちが!?」
その名前には聞き覚えがあった。
当時の日本人なら、誰に聞いても知っている名前だ。
間違っても下半身を露出してはいけない、偉大なる怨霊神だ。
「彼らって3次元最強怨霊よね? 運0ってそれ程の快挙なのよ」
3次元の日本では崇徳天皇、菅原道真、平将門の3人を、日本最強の怨霊として、今でも厳重に祭っている。
そんなのが憑りついていては、運ゼロも仕方な――いや因果が逆か。
ゼロだから憑りつかれたのだろう。
「って待って? 今の運勢はどれ程度?」
「――じゅう★」
「えっ?」
「さんじゅう!★」
苦渋と屈辱の表情でシュメッターリングが叫んだ。
50に出来なかったのが悔しいのだ。
「30!? 5節完全詠唱の歌術で30しか上乗せできないの!?」
ファルファッラが信長と帰蝶、そしてシュメッターリング交互に見て驚愕で固まった。
「仕方ないでしょ! それだけ禍々しい存在なのよッ!! 別にいいわよ? もう一発食らわせれば60にはなるかもね!? 魂が死んで霧散するかもだけど!?★」
「あ、あの、ワシらの為に喧嘩をするのは――」
「うっさいッ!!」
「はい」
ファルファッラとシュメッターリングに神性が付与された罵倒に、信長は体を小さくして素直に謝った。
喧嘩を売ってはいけない存在だと悟ったのだ。
「ふぅ。じゃ、仕方ない。死んでは元も子も無いしね。シュメッターリングちゃんありがとう」
「じゃあね。怨霊には気を付けてね☆」
そう言ってシュメッターリングは霧散した。
「じゃ、さっそく特訓と行きましょうか」
「特訓? あ、歌術とやらか」
「それもあるけど、肉体の基礎体力も鍛えるわよ。信長ちゃんは帰蝶ちゃんより弱いしね」
「ぐッ!」
最初にこの8次元に到着したとき、帰蝶の裸を見てパンチを避けられなかった。
いくら何でも女のパンチを避けられず、しかも数十メートルブッ飛ばされるのは、運動神経に差がありすぎる。
これは5次元にいた時、肉体を乗っ取る側の帰蝶が、暇つぶしに鍛えた結果であった。
「それに歌術は精神力も体力も消耗する。下手すれば寿命すら消耗するわ。しかも運は常人以下。今の貴方達が使ったら魂が霧散してしまうわ。魂しかエネルギーにできないから、文字通り魂を削って術を発動するでしょう」
「そ、そうなんですか……」
肉体を失って魂まで失ってはもう2度と復活の目は無い。
帰蝶はそれを理解し身震いする。
「ただし、ノーリスクで唱えられる術もある。歌でもないしね。神の名前を言うだけよ。例えば信長ちゃん。指を突き出して『火燎神ケレベック』って唱えてみて」
「のーりすく? こ、こうか? え~『火燎神ケレベック!』……おぉ!」
「あっ!」
信長と帰蝶が驚いた。
信長の指から火種が落ちて雲に吸い込まれていった。
確実に指先から火を出したのだ。
「すごい!」
「これが歌術か!!」
「……喜んでいる所悪いけど、これは想定外ね。どんなに才能の無い一般人でも、石ころぐらいの火球は出せるのだけど……」
「えっ」
信長が出したのは精々お線香の先端程度の火だ。
信長は線香の灰の様に崩れ落ちた。
「じゃあ帰蝶ちゃん、同じ様にやってみて」
「は、はい!」
帰蝶は緊張している。
信長同様に失望させる訳にはいかない。
「かっ『火燎神ケレベック!』……?」
指先からは何も出なかった。
「うそ……!?」
帰蝶は錆び付いた機械の様に、首をファルファッラに向けた。
しかしファルファッラは表情を崩していなかった。
「あー、それは仕方ない。人だったのを忘れて伝えて無かったわ。火と水、風と土、光と闇は相反するから火が使える人は水が使えないのよ。神々は例外だけど人には無理ね。つまり帰蝶ちゃんは火は無理だけど水が出来るはずよ。じゃあ『水灑神ペタルデス』って唱えてみなさい」
「は、はい『水灑神ペタルデス!!』……どう!?」
気合を込めた帰蝶の指先から、フルフルと水が溜まり水滴が一粒落ちた。
帰蝶はファルファッラの顔色を窺い、水滴の様に崩れ落ちた。
「茶碗一杯ぐらいは瞬間的に溢れる勢いで出して欲しかった……。運ゼロなら術力もゼロなのね貴方達」
ファルファッラは失望を露にするが、それは仕方ない話。
本来は3次元人なのだから、呪文や気合で火や水を出せる訳がないし、そういう体の仕組みになっていない。
8次元人ではないのだ。
むしろ一発で何か出たのが凄いのだ。
「あ、あの、運は30――」
「あ゛ぁ?」
「何でもありません」
ファルファッラの神性が付与された恫喝に、帰蝶は体を小さくして素直に謝った。
「参ったわね……」
ファルファッラは頭を抱えた――
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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)大先生だ!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)
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