3話 次元の違う日本と、史上初の運勢占い
【8次元/神界】
「話がそれたけど、その映像を見て。地上部分は基本的には3次元と変わらないから、何が起きてるかは理解できるでしょう。おっと『小人が動いてる!』とかの面倒な説明をさせないでね?」
信長は2話で『小さい人』とか驚いていたが、注意前なので許された。
その上で、ファルファッラが定番ネタに釘をさすが、信長と帰蝶はもっと低次元の事に引っかかっていた。
「も、もちろんじゃ! (えいぞう? 誰だ?)」
「は、はい! (エイゾウ? 栄蔵さん?)」
ファルファッラの神性に驚き、2人は態度を改め余計な質問はやめた。
直感で『怒らせてはならない』と理解したのだ。
もちろん小人の理屈は全く分からないし『栄蔵さん』も誰か分からないが、今見えているものが『下界の様子を見せる歌術』だと己を無理やり納得させた。
「これは館……室内か? 一体何を、と言うより!? アレは!? 親父殿、なのか!?」
信長が驚く。
自分の知っている清須城とは少々違う感じがするし、父の織田信秀らしき人物達も知っている様で何か違う。
記憶と一致する部分、記憶と違う部分が混在している人物が複数人いた。
「これは……儀式……ですかね?」
「ご名答! そう。歌術儀式ね。歌だけで発動できる術もあれば、限界を超える歌術を行う場合、供物や術式紋章、宝玉、祝詞に触媒など色んな工夫で更に補強できるのよ」
ファルファッラが手を叩いて褒め称える。
「あれだけの供物? 良く分からない物に熱心に何かしているので『儀式かな?』と思いました」
帰蝶の言う通り、室内は異様だった。
壁には札、床には複雑な家紋の様な紋章、四方八方に建てられた篝火に、中央には生き物の死骸から果実、酒、金銀財宝に、遺髪らしき物。
四方には巫女が一心不乱に神主が振る大幣(お祓い棒)を掲げている。
中央には信秀(らしき人)が立派な杖を振るい歌術を熱心に唱えている。
密室と熱気と煙のお陰で酸欠状態なので、全員極めて顔色が悪い。
「何の儀式かは分かりませんが……」
「アレは、戦死した織田信長を生き返らせようとしてるのよ」
「ほう。……って戦死したワシ!? ワシはこれこの通り……あっ魂か。……えっとつまり? この世界のワシは死んでいて、蘇らせる!? そんな事ができるのか!?」
「できるわ。でも人の行う蘇生歌術は超高等歌術。アレだけの供物や人員の補助があってもアレでは失敗するし、事実失敗する世界が続いていくわ。でも今回は成功させる未来を創る。私が介入して貴方達をあそこに送り込んで蘇らせるわ」
「はぁ……はぁ!? この8次元世界のワシではなく、3次元世界の、このワシをか?!」
「い、一体なぜ!?」
「まぁ、色んな理由があるのだけど、失敗する世界だと困るのが神の都合なのよね。それと、どうしてもこの次元の織田信長と斎藤帰蝶は蘇生できない。そこで『どうしようか?』と神々と相談してたら貴方達が迷い込んで来た訳ね。『これは利用できる!』ってね。この次元の織田信長は失敗した。でも『違う次元の織田信長ならどうか?』って所に貴方達が来た。つまり貴方達の諺で言う『渡りに船』って所かしら?」
「よ、蘇らせて、一体何をさせたいのじゃ!?」
「あれこれ説明しても良いけど、あえて止めましょうか。貴方達が感じたままに、必要だと思った事をしなさい。それが魂の成長につながり、ひいては、元の3次元に戻れる魂に成長し肉体を奪い返す事もできるでしょう。神々が導いては意味がないわ。操り人形じゃ成長しないしね」
「つまり、神々にとって都合の悪い世界を改変し、かつ、我々の魂も鍛え元に戻る一石二鳥の計画であると?」
「帰蝶ちゃん賢いわね! そう、まさにそうして欲しいのよ!」
(ちゃん……)
帰蝶は褒められたが、言わされた様な気がして、余り嬉しくないが、怖いので笑顔は作った。
「勿論タダとは言わないわ。歌術も教えるし、いつでも私と交信出来るようにするわ。知らない事が多すぎるでしょうからね。それぐらいのサポートはしてあげるわ。それに何より神々が結果に納得すれば元の時代に戻る手助けはするわ。それに、元の次元でここでの成長も役立てられる! どう?」
「『どう?』って言われても……どうせ行くしか無いのじゃろうから行くが……」
本当はファルファッラが怖いから、という理由もあるが、信長は黙っておいた。
「しかしそれよりも、何やら儀式は終わりそうじゃないか? 歌術を覚える暇も無いんじゃないか?」
「私は時空神よ? 地上の時間を止める、戻すなんて訳ないわ」
ファルファッラは、まるで呼吸と同じ、と言わんばかりの当然の余裕をみせつつ言った。
「そ、そう……」
もう無茶苦茶すぎるが、信長と帰蝶は『これが8次元なのだ』と諦める事にした。
「その止めている間に、必要な神に会わせて必要な歌術を学ばせる……前に、運命神シュメッターリングの加護を貰っておきましょうか」
「運命神?」
「しめったーりんぐ?」
「貴方達はある意味選ばれし者なのよね」
「お、おぉ、さすが天下を取ったワシよな。……という記憶があるだけじゃが」
「その正妻として添い遂げたのが私ですか」
2人は褒められたと感じたが、勘違いである。
「そうだけど、そう言う事では無くて、貴方達、運が悪すぎるわ。0を振り切ってマイナスにいきそうよ? こんなに不運な人間がいるんだって神々でも噂よ?」
「ふ、不運!? どう言う事じゃ!? 天下を取ったワシじゃぞ!? 記憶じゃが!?」
「そうですよ! こうして8次元に導かれた幸運な人間なのでは!?」
マイナスの意味は理解できなかったが、とにかく、想像を絶する不運であることを2人は即座に理解した。
「ポジティブねぇ。成長した貴方達はその通りなのだけど、今の貴方達は『宇宙開闢以来、史上初の肉体を自分自身に乗っ取られ行き場を失った可哀想な魂』なのよ。そりゃ世の中には不幸な人は沢山いるわ。でも肉体を乗っ取られたのは貴方達が『全次元史上初』よ。見なさい『真実の 天秤来たれ! 真理天秤法! 運命神シュメッターリング!』」
その歌術と共に、薄っすらと現れたシュメッターリングが手を掲げた。
すると、歌術通りの天秤が中空に表れた。
その天秤の右側には『信長』『帰蝶』と書かれた石があり、左側には何も乗っていないのに均衡を保っている。
そこにファルファッラが『運』と書かれた石を取り出し、左側に乗せるとガクンと信長達の乗った天秤の皿が下に落ち、『運』の石は遥か彼方にすっ飛んでいった。
『説明不可能の超凶。禍人。ある意味貴重。数値にして0。地上に立てば、数歩で地割れや隕石に巻き込まれる恐れあり。放し飼いにしてはならぬ。速やかに殺せ』
残酷な言葉が無常にも響いた。
遮る物の見当たらない雲上なのに。
「今のはシュメッターリングちゃんの予言ね。言った本人も驚いているわ。『何この悍ましい不吉な予言は!?』って」
「」
「」
信長と帰蝶は白目を剥いていた。
真理天秤法。
あらゆる事のバランスを測れるが、石が飛んで消える程の勢いで傾いたのは初めてだ。運命神シュメッターリングが驚くのも仕方ない。
「ま、こう言う事ね。ここは神界だからいくら運が悪くてもニュートラルな状態、というか創造神パルヴァーネ様のご加護のお陰よ。必死に貴方達の運の悪さを押さえつけてるわ。あのパルヴァーネ様をここまで手こずらせる運勢。凄いわよ貴方たち」
ファルファッラは憐憫の情を込めて、そう告げた――
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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)大先生だ!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)
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