21話 You cunty fucking bitch! (このクソ女が!!)
【時空神ファルファッラ様のお言葉】
「今回はいつも以上に、画面の色はノーマルの標準設定でお願いするわ。後はいつもの奴ね。言葉の種類はこれだけど、ちょっと訳せない所は申し訳ないけど処置させて貰ったわ」
「●●●●●●」通常会話。誰にでも通じる言葉。
《●●●●●●》神言語3。信長と帰蝶と神にしか理解できない神言語含む3次元語。
『●●●●●●』歌術。
【●●●●●●】場所や地名。
【8次元世界下界/尾張国 清須城 広間】
「では当面の方針が決まった所で、お主らの滞在場所を提供しよう。……と言っても、8次元の倅達が使っていた部屋だがな。四聖の巫女よ、案内してやってくれ。後は爺の触媒調達を待つだけになろう。後は頼んだぞ」
「はい!」
信秀が意味ありげに頼みごとをするが、信長と帰蝶には何の事かわからず、しかし、四聖の巫女はしっかり把握している、というより『待ってました』の方が適切な返事をする。
「え?」
「なんじゃ?」
妙に元気に返事をする巫女達に信長と帰蝶は違和感を持つ。
18話で名前が判明してきた、3次元での側室たちが元気に妖艶に立ち上がる。
15歳の信長と帰蝶も異変を感じる所作だった。
「さぁ、こちらに参りましょう」
「さぁ信様参りましょう!」
吉乃が信長の右手を己の胸に、直子が左手を己の胸に、茜が右肩に胸を、葵が左肩に胸を押し付ける。
「ちょ……!? お、おい!? そんなに厳重に案内しなくても!?」
信長が嬉しそうに困る。
15歳には刺激が強すぎるが、子を作った記憶もあるので新鮮さは――あるッ!
何の事か分からない女性読者の為に言うならば『男は本当にアホな生き物』だと説明するに留める。
とにかくガッチリ固められ逃げられないが、逃げられないのに困らない。
何の不満も無い困った状態であり、思わず殴りたくなる情けない顔だ。
「皆さん、私は誰に付いて行けば?」
一方で取り残され、額に青筋を立てた帰蝶が、存在しない憤怒神を宿らせて尋ねた。
確実に『見習い底辺姫足軽入門(仮)』から『見習い底辺姫足軽入門』が取れるレベルアップを果たした。
「あぁ、ついてらっしゃい」
記憶にある吉乃と、とても次元違いの同一人物とは思えない冷たい言葉が飛ぶ。
土壅神の巫女らしく、凍土の様な冷たい圧力を放つ。
3次元の正室と側室は、帰蝶が病気だったこともあり、帰蝶の意思もあり、名目上の呼び方はあれど壁は取っ払っていた。
見舞いに来る吉乃、茜、葵、直子と楽しく笑って過ごせた、との記憶があるだけに、この扱いは許しがたかった。
「このッ……!?」
今度は『見習い底辺姫足軽入門』から『見習い姫足軽入門』が取れた。
この短時間に凄まじいレベルアップである。
髪がバサバサと乱れ、指輪がぼんやりと光る。
風飄神と契約していないのに、この乱れ狂う髪の毛。
怒髪天と呼ぶべきか、妖気をまとい始めたというべきか、やはり憤怒神がいるのではないのか?
ファルファッラは創造神パルヴァーネに『憤怒神を誕生させてはどうか?』と進言したのは余談である。
帰蝶憤怒の問いに直子、茜、葵が答えた。
「せっくつ? 石窟? な、何故?」
「石窟……この状況で、岩を掘る訳じゃないわよね?」
信長と帰蝶には全く何の言葉か理解できないが、何となく身に危険を感じた。
「い、岩!? そんな事もご存じないと? で、お互いの術相性を高め合うのです」
「はぁ?」
帰蝶が呆れる言葉を発するが、四聖の巫女は勘違いをした。
生まれて病弱で過し、子を残せる体じゃないと判断され、教育をされなかったのだ。
「帰蝶ちゃんにも最後に順番を回してあげるわよ~」
信長と帰蝶は初対面の時から、四聖の巫女から発せられる視線と気配の正体を(帰蝶は何となく)やっと理解した。
ついでに帰蝶は、今度は『見習い姫足軽入門』から『見習い姫足軽』が取れてレルアップした。
もう髪は荒れ狂い、メデューサの頭部の如く、髪の束が蛇へと変貌する覇気と怒気を放っている。
天界で200年修行したのは何だったのかと思わせるレベルアップぶりに、ファルファッラが怒り狂っているのは余談である。
『憤怒神を創造してもいいけど、それより貴女、憤怒神を兼任する? そっちの方が早そうよ?』
そうパルヴァーネに言われたのは、更に余談である。
更に更に余談で信長は『見習い底辺小童足軽入門(仮)』にレベルダウンした。
制御できないだらしない顔が原因だ。
一方で四聖の巫女は急激な帰蝶の変化に、驚き構える。
信長を守る様に布陣し、信長は失った感触に残念無念の失意に沈む。
「敵を倒してもいないのに、ここまでレベルアップ!?」
「妖蛇メデューサ!?」
「流石斎藤家の血筋って所かしら!?」
「良いでしょう。どうせ信様のついでに偶然ついてきた異物。決して帰蝶姉様では無い! あのクソ基礎術など戦いでは邪魔なだけ! 義元の前に退治してさしあげましょう!」
吉乃は印を結び、歌術を唱え始めた。
信長は『この次元の吉乃はずいぶん好戦的だ』と思ったが思うに留めた。
残った3人に囲まれ、感触を堪能――いや、違う。
動けないのだ。
信長の名誉の為に、決して助平心ではないと付け加えておく。
「『凍土よ! 氷結の地に 集まれり!! 寒地化石法! 土壅神ボルボレッタ!!』」
帰蝶が同じ歌術で対抗する。
「『凍土よ! 寒地化石法! 土壅神ボルボレッタァァアァッ!!』」
足元から高速低温化し侵食する凍土が衝突し拮抗する。
「え!? あのクソ基礎術で3節の歌術に対し1節で互角!?」
一方、帰蝶は憤怒神のと指輪の力を借りて、同じ威力を唱え放った――と言うよりはこれが限界でもあるのだが――
しかしその瞬間、蛇の幻覚を更に強大化させ、指輪と黒髪と瞳が緑に染まり輝きだす。
一方歌術により、侵食しぶつかり合う凍土だが、こうなった場合、力のある者が押し切って勝つのが歌術の勝負である。
しかもそうなった場合は相手の威力を取り込んでの、威力が増大した歌術として相手に襲いかかる。
「黒髪、黒瞳が一瞬で緑に!?」
「見習い姫足軽がこの威力!?」
「そ、そうだった! 信長様と帰蝶姉様と一緒の三色持ちで黒! 1色持ちと同等なのね!?」
茜、葵、直子が驚愕で固まる。
「おい、お主ら! 離れてないと巻き添えを食うんじゃないか!? それか身を守る歌術を唱えてくれ!」
その様子を冷静に見ていた信長は危機を察知した。
1回目に8次元に行った時にも似たような光景を見た。
帰蝶が歌術を唱え、大惨事を起こしたが、それを利用し死んだフリ作戦が決行されたのだ。
更に基礎術はクソで、当然歌術もクソでも、感情の力がダイレクトに乗るのも知った。
ファルファッラの言う例外が信長と帰蝶なのだ。
ただ、本気で感情を爆発させるのはそれはそれで難しいので、やはり基本的にはクソ歌術に違いない。
なお8次元人も当然感情はあるが、信秀が言う様に、術に感情が乗る事が無い。
何か感情を乗せるなら、節を増やす事に全力を尽くす。
だから怒りで増すことも無いし、心身に不調があっても術に変化はない、事も無いが、3次元人程顕著でもない。
何故なら歌術は才能と資質が全てだからだ。
怒った所で、気合を入れた所で増幅などたかが知れている。
加減は節の長短と精神力で調整する。
だが3次元人は、怒りや気合、根性と欲望と殺意で戦う、まさに低次元の争いだ。
8次元も当然感情や欲望、殺意はあるが、それは術とは関係ない。
肉体の限界を超える怒りの力が、3次元の世界ならではの現象。
戦などは、個の力が集団に勝る事さえある――という記憶だけではあるが、そう言った低次元な事に慣れているのが、この場では役に立ち、3次元の信長と帰蝶の秘密の一つが解明された。
「クッ! このッ! 帰蝶姉様の紛い物なんかに……ッ!!」
「吉乃ちゃん! 貴女はそんなに私が気に入らないのッ!?」
今や『見習い姫足軽』の帰蝶が、『土壅神の巫女』の歌術を押している。
寒地化石法――
凍土で固め、一定時間動きを封じるが、5節完全詠唱で唱えた場合、文字通り化石にする即死歌術となるが3節なら、足が凍傷になるまで凍土で固められる程度だ。
「そ、そうよ! 帰蝶姉様は……!! 姉様はッ……!!」
「何かあったんでしょうけど、私はこの次元の私じゃない! 同一人物の別次元人なのよ! 受け入れなさい! 私たちは貴女達の為にも来たのよ!!」
帰蝶の目じり、鼻、唇の端から血が流れ舞いあがる。
(危険じゃが、前より明らかに制御が出来ておる様に見えるな? これは思わぬ収穫よ。それは良いとして、さてどうする?)
このままでは帰蝶が吉乃を圧殺するだろう。
「茜よ。放った歌術はもう止まらぬのか?」
「え!? む、無理です! 放出した術は戻せません! 今であれば押し切った方に全ての威力が襲い掛かるでしょう……!!」
「……仕方ない。土壅神の歌術とは言え凍土か。こういう場合は火燎神が適切か?」
「習熟度によります! 信長様が風より火が得意なら、火で行くべきかと! また土壅神は土単体の攻撃は当然、他属性とも相性がとてもよく、相反する風にさえ影響を与える歌術! ご覧の通り凍土ですので反対属性の風飄神で行くのが普通ですが、火燎神の方が得意なら対抗できる可能性が高いですが……まさか、飛び込む気ですか!?」
「その通り。治療は頼んだぞ? 『火纏いて 耐火炎琉壁!! 火燎神ケレベック!!』 ぬりゃぁ!!」
信長が全力で唱えてようやくできた1節の歌術で、2人が作った合計4節の歌術に飛び込む自殺行為。
しかし信長の指輪と黒髪と瞳は赤く輝き出した――
「殿!」
「信様!?」
「だりゃあッ!!」
信長が歌術の中心地に飛び込み、しゃがんでからのアッパーカット、もとい、拳を天に突き上げると共に、炎と凍土が巻き上げられて天に消えた――




