19話 ワシの評価ってどうなってんの!?
【時空神ファルファッラ様のお言葉】
「はい。おなじみの一覧表よ。」
「●●●●●●」通常会話。誰にでも通じる言葉。
≪≪●●●●●●≫≫神言語2。信長と帰蝶にも通じる言葉。
《●●●●●●》神言語3。信長と帰蝶と神にしか理解できない神言語含む3次元語。
【●●●●●●】場所や地名。
(●●●●●●)心の声、またはヒソヒソ声。
【8次元世界下界/尾張国 清須城 広間】
大胆にも大切な会談の場に乗り込んできた四聖の巫女、坂茜、瑞林葵、塙直子、生駒吉乃。
蘇生呪文の成功を見届けた後、全員気絶し、外に運び出され、治癒歌術を受けて戻ってきたばかりのタイミングであった。
「どういう事ですか信様……あれ? 信秀様? え……信長様? ですよね? これは一体……!?」
吉乃が異変に気が付いた。
知っている信長と違いすぎたのだ。
「確かに。帰蝶様も若い……? 『蘇生回帰法』は亡くなった直後の肉体で復活するのでは?」
「あぁ。そうなのじゃが、パルヴァーネ様やファルファッラ様が顕現なされてな。元の信長は復活できぬのだ。その代わり別次元の魂を呼び寄せ復活したのが、今の信長と帰蝶殿で共に15歳じゃ」
「10代!?」
「って何故帰蝶様も復活を!?」
「信長様しか復活出来ないのでは!?」
「パルヴァーネ様とファルファッラ様が!?」
彼女たちは混乱し、がなり立て信秀に詰め寄るが仕方ない話。
そう。
彼女らには信じられない現象であった。
まだ信長達が3次元からの来訪者であるとも、8次元の信長は復活できないとも知らされていない。
そもそも信長復活の儀式で、成功率激低歌術で、2人復活とは前代未聞だ。
帰蝶に至っては肉体の欠片さえも無いので、無から生み出された事になる。
という一連の話を、彼女らは術後の疲労で気絶していて、創造神パルヴァーネと時空神ファルファッラの言葉を、聞いていなかったのだ。
≪≪(ぬおぉぉッ!)我は時空神ファルファッラッ!! 四聖の巫女よッ、聞きなさいッ! また文字稼ぎと思われるでしょうッ!? 『中略!!』 分かったッ!?≫≫
≪≪そういう事でしたか、まさか時空神様から言葉を賜るとは……≫≫
≪≪喧嘩するなとは言わないけど、協力してこの信長と帰蝶を導いてあげなさい! 良いわね!? 貴方達が、いや、貴方達も頼りなのだから!≫≫
≪≪時空神様が我らを頼りと……! はっ! 御心のままに≫≫
また面倒な展開になると察したファルファッラが、割り込んで場を収めた。
「そう言う訳で、次元違いの同一人物じゃ。よろしく頼む」
信秀が改めて頼んだ。
「帰蝶共々よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
信秀の後に続いて、信長と帰蝶が挨拶をする、が――
「えッ!?」
四人の巫女が同時に驚き、信長は信長で何かを察した。
「その反応……何か不味いコトを言ったかな? まだ8次元の常識が分からんのでな。気に障ったなら許してほしい。決して悪意はないのじゃ」
「ッ!!」
「あ、いえ、そういう事では無いのですが……」
信長と帰蝶の謝罪に四聖の巫女達が驚く
「その何と言いましょうか……」
「次元違いの同一人物なのは理解しましたが、8次元の信様は……」
茜、葵、直子が吉乃をそろって見た。
「え? 私が言うの?」
3人が同調して頷いた。
余程、自分では言いたくないらしい。
「あのその……信様は……もう! あ、悪鬼羅刹、傲岸不遜、傍若無人、唯我独尊、眼中無人、奸佞邪智、酒池肉林、残虐非道を体現した方だったので……」
吉乃がその言葉を一気に言った時、吉乃含め四聖の巫女全員が顔を赤らめたのを、帰蝶は見逃さなかった。
絶対に言葉の中に別の感情があるのを見抜いたのだ。
一方、信長は8次元の己に呆れるしかなかった。
「お、お゛、おぉ……それって本当にワシなの? 親父殿?」
とんでもない人物評に戸惑う信長。
これは『うつけ』の次元をブッチギリで通り越している。
絶対に家臣にも悪ガキ仲間にも、何なら領地にすら居てほしくない人間だ。
3次元なら、存在すると分かった時点で討伐対象だろう。
「あぁ。今のお主の年頃にはもう『うつけ』すぎてな? 性格にも難があってのう。じゃが、実力も歌術も本物じゃ。じゃから、お主が別次元とは言え品行方正じゃ。本当に信長なのか正直疑う自分がいる」
品行方正なのは借りてきた猫状態だからだが、それにしたって酷い評価である。
「その人物評で『うつけ』で済むのですか? ……ともかく、ワシは信長です。出来れば8次元のワシとは別人と思って頂きたい……」
信長も8次元に来てしまったので、あと頭の上がらないファルファッラ等の神々が居るので、無茶せず大人しい。
8次元の我が家であるが、どうも他人の家に入った気分がぬぐえない。
3次元だったらば、今頃はうつけ策で穀潰し共を集めて、うつけつつ野盗に喧嘩を売っては戦の技術を学んでいるハズであった。
それでもって、家臣の目が届く場所で復活してからは、もう何をするのが正解か全くわからない。
分かっているのは頼れるのは、彼らだけだ。
「吉乃は3次元の世界で、もっと幼いころから知り合いじゃが、茜、葵、直子と言ったな? 記憶にはある名前じゃがワシから見ても容姿が一致せん。勿論吉乃もじゃ。髪色や眼の色がこうも惑わすとはな。帰蝶はどうだ?」
「そうですね。記憶にはあります。3次元では病弱の私と仲良くしてもらった記憶があります」
「病弱!? 帰蝶様が!?」
「えっ? この8次元では違ったの?」
「悔しいですが、お似合いのカップルだったと思います」
《カップルは、恋愛関係、夫婦関係の意味よ》
「そ、そうだったんですか……え!? 悪鬼羅刹、傲岸不遜、傍若無人、唯我独尊、眼中無人、奸佞邪智、酒池肉林、残虐非道の信長と!? 《ファル、ちょっと時間止めて!?》」
《なぁに?》
《3話で『アレは、戦死した英雄織田信長を生き返らせようとしてるのよ』って言ってなかった? 幾ら政略結婚でも、そんな奴が相手なら8次元の私でも即離縁して逃げるんじゃない!?》
3次元の結婚は余程の権力者でなければ離縁も割と自由で、当たり前の行為でもあった。
帰蝶も信長との結婚は再婚との説もある程だ。
《『3話』ときましたか。帰蝶ちゃんも第四の壁を破りだしたわね。で質問だけど……そうよ。あんな評価でもそうよ。英雄なのよね、これが。そして離縁もしていない。一応補足するなら、この次元の帰蝶ちゃんと信長ちゃんは似た者同士だったからねぇ。でも3次元の信長ちゃんも数百年後には、だいたい合ってる評価よ?》
《似た者同士!?》
帰蝶が時間が停止している中で精一杯仰け反った。
《大体あってる!?》
まだ信長も驚いた。
こんなのは、次元の違いによる事が原因だと思っていたからだ。
3次元の後世の評価が、そんな事になっているとは思いもよらなかった。
悪鬼羅刹、傲岸不遜、傍若無人、唯我独尊、眼中無人、奸佞邪智、酒池肉林、残虐非道。
モニターの前の皆様も、どれか一つ以上当てはまる信長像を、ゲームや漫画、ドラマなどで見たり学んだり聞いたり勘違いした人は多いと思う。
実際、少なからずそんな部分を併せ持ったのが信長だ。
都合が悪ければ土下座してでも命乞いをするし、干殺しからの虐殺も行ったし、傍若無人で唯我独尊な部分もあったが、それは評価不可能な程の絶大な結果を残し続けたからこそ許された面もある。
そこからエンターテインメント方面で、もう数多の織田信長が作られた。
ちなみに歴史ジャンルのスピンオフ元の『信長Take3』はクソ苦労人の信長と、天真爛漫(?)の帰蝶がいる。
《ま、どんな英雄も中身を開いてみればそんなモノよ? そうでしょ? モニターの前の君達?》
《モニター前の諸君! ワシは礼節を重んじるし『うつけ姿』は世を忍ぶ仮の姿じゃからな!? 後書きにも書いておくからよく読むように!!》
《さぁ、再開するわよ》
「あっ……えっと、貴女たち四聖の巫女も8次元の信長とは、いわゆる側室……側室の概念があるのか分からないけど、妻だったのでしょう? そんな評価の奴を愛していたの!?」
帰蝶が一番気になる事を聞いた、と同時に四聖の巫女達は頬を赤らめた。
この物語が現代をテーマにしているなら『マジかよ……』との言葉が最適だが、ここは8次元の戦国時代。
(あの人物評でその態度! 正気かコイツら……!?)
(8次元の信長がうつけなら、近寄る女もうつけなのかしら……。私は政略結婚だから違うけど。それでも……何で離縁してないのよ!)
信長と帰蝶は、理解できないモノを見た気分だが、四聖の巫女も幼い信長に対し熱い視線を送っているのに気が付き寒気がした。
《嫌な予感がする》
《私もです》
信長と帰蝶は、なにも予測できない8次元で、これから良くない事が起きそうな気配だけは感じ取ったのだった――
【信長様の供述】
崩壊した京の都を復興したのはワシだし、光秀の頭を殴ったこともないし、羽柴家の夫婦喧嘩の仲裁をしたし、うつけ姿を辞めた後は礼節には厳しく、猪武者に礼儀作法を覚えさせるために茶の湯を指導したし、上洛の時には金銭を盗んだり女子に乱暴した奴は叩き斬ったしな!?
……という記憶があるんじゃ!
まさか未来で歌術を使ったり一人で大軍を滅多切りにしたりする遊戯があったり、タイムスリッパーを大量に抱え込んだ物語や、ワシらの様な肉体を追い出される被害者がでる物語が氾濫しておらんよな!?
その目の前の機械のAIで『信長が大暴れするゲームや漫画、小説を教えてください』と問うてみよ!
あと『織田信長の体を乗っ取る系のマンガ、小説、織田信長の下にタイムスリップする系のマンガ、小説を教えてください』と調べてみよ!
それはさすがに無いじゃろ!?
【筆者の供述】
そんなのある訳ないっすよ。
『スポンオフ元小説』
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