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暗黒の信長と帰蝶 ~異次元の信長Take3~  作者: 松岡良佑
第1章 愚者

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1話 Welcome to Another Dimension! (別次元へようこそ!)

双子座とは関係ありません。

【【【【Another(アナザー) Dimension(ディメンション)】】】】


「な、何じゃここは!? 白い……何じゃこれ!? 霧? いや、これは雲? 雲の上か!?」


 少年が慌てふためく。


「父上!? 兄上!? 母上!? ってあれ? 息苦しくない? 雲の上……? あっ、私は死んで極楽へ?」


 少女が混乱する。

 そしてお互いが、背後から聞こえるお互いの声に気が付き振り向く。


「ほほう。ここは雲の上なれば極楽じゃったか?」


 見知らぬ世界に突如現れたラッキーな光景に、少年の鼻の下が伸びる。

 2人とも素っ裸だった。


「ッ!? 見るんじゃないわよッ!!」


 ドゴォッ!!

 少女は少年の視線の向きを確認すると、その視線を左手で塞ぎ、閃光の如き切れ味の右ストレートで少年の顔面をブッ飛ばした。


「ぐぺぇッ!?」


 少年は雲の上でツーバウンドして、雲の出っ張りに引っかかって、縦回転のトリプルアクセルを決めて、うつ伏せに倒れた。

 ワンパンK.Oである。


「え、あ、あれ!? 何? 今の動きは……病は……」


 少女は、身に覚えの有る様な無い様な気がする体術に困惑する。

 人間をブッ飛ばすのは初めてだし、そもそも病気で歩くのも困難な日だったはずだ――とそこに声が響く。


「元気な魂ねぇ。と言うか、魂の状態で人をブン殴るなんて……」


 突如四方八方から声が響くと、霧が集まり人の形を作った。


「誰!?」


「ふぁれ(誰)……? ごふっ……前が見えぬぇ……」


 少女と、顔が潰れた少年が見知らぬ声に反応した。

 この頃には霧は完全に人型、と言うより人間に、女に変化していた。

 赤銅色の髪と姿形は傾奇者としか思えなかったが、一つ、信長達では説明できない背後の空間が歪む輪を背に浮かべていた。


「初めまして。私はファルファッラ。分かりやすく言えば……ここは別の(Another)次元(Dimensio)だけど……説明が難しいわね。私は神なんだけど、仏とは違うわ。まぁ解釈はどっちも似た様なモノだけど。それより貴方達は織田信長と斎藤帰蝶(濃姫)ね」


「え、えぇ。え? コイツがッ!? あのうつけの上様(●●●●●●)!? ……なんで私、上様って言ったの?」


「ほうやが(そうじゃが)……じゃ、ワヒ(シ)を『うつけ』と知るひさま(貴様)は於濃(おのう)……? 何へ(故)上様と……いやほーへん(当然)か。上様? ……ワヒ(シ)は何へ(故)ほーへ(当然)んと思った?」


 信長と帰蝶は知らない記憶に戸惑い、訳が分からなくなっていた。


「まぁそうなるわよね。本当は先に説明したかったんだけど、とりあえず治療を済ませましょうか。さすが英雄の魂ね。え~と? 左眼球破裂、眼底骨折、前歯3本欠損、頚椎損傷。重症ね。……重症なんだけど魂なのに人を殴るのもだけど、魂なのにケガするのも、結構凄い事よ?」


 現れた女、ファルファッラが手をかざしながら患部を確認する。


「む、無我夢中で、と言うか、それより着物は無いのですか!?」


 帰蝶が胸と股間を隠す。


「ほ、ほなしふ(同じく)……」


 信長も股間と何故か胸を隠した。

 怪我と状況で相当に混乱している様だ。


「ハイハイ。服ね。『現れよ 聖衣顕現光(せいいけんげんこう)! 兤陽(こうよう)神パーピリオー!』」


 ファルファッラが、妙に響き渡る怪しげな声色で喋る。

 霧が多少集まり、輪郭のハッキリしない人型の何かが現れ、衣服が浮かび出た。

 ファルファッラが指先を信長達に向けると、何となく雑な動きでまるで『シャツでもポイっと投げてコレでも着とけ』と言わんばかりに兤陽(こうよう)神が衣服をスイッと移動させた。


(コーヨーシン? 神? 誰? 誰!?)


 それと同時に、信長と帰蝶に見た事ある様な無い様な、不思議な衣類が勝手に身にまとわれた。

 もう度肝を抜かれすぎて訳が分からない。


「じゃ次は治療ね。これは重症だから……『根張り芽が 枯れた大地を 潤わす 抱擁樹地法(ほうようじゅちほう)! 土壅(どよう)神ボルボレッタ!』」


 今度は重症患者を治療すべく、集中して文言を唱える。

 さっきより多めの霧が集まり、今度は、はっきりと人と分かる人物が顕現する。

 土と樹木と花が咲き誇る衣服に、花光り咲き乱れる花輪を背に背負っている。

 そして先ほどよりも長く重く言葉が響き、信長の傷口が見る見るうちに回復していく。


(ぼるぼれぇた? お? おぉッ!?)


「最後にダメージの回復ね。『損壊し 病め痛める身 押し流し 清流治血水(せいりゅうちけつすい)! 水灑(すいさい)神ペタルデス!』」


 さっきと同じぐらいの霧が集まり、流水の衣服を着て水流の輪を背負った人間が現れ、信長の身体のダメージを、正確には傷は先に直したので、疲れた体を癒し、失った体力を元に戻した。


「お、おぉ!? 元に戻った!? 貴様呪術者か!?」


「呪術……まぁそうとも言うわね。正確には歌術(かじゅつ)だけどね」


「カジュツ?」


「あなた達、歌を嗜むでしょ?」


「カジュツの『カ』は『歌(うた)』か。歌の術じゃと……?」


 戦国時代の数少ない娯楽として『歌』がある。

 上の句の5.7.5を受け継いで後の7.7を作り完成させる連歌。

 俳句のような季語の制約もないが、連歌は一体感であったり意外な変化であったり制約がある。

 ただし、上手下手は必ずあるので、正解は無限にあるし、失敗も無限にある。

 もちろん、一人で5.7.5.7.7を読む事もある。

 なんならこんな『歌』もある。


『昔より 主を内海の  野間なれば 報いを待てや 羽柴筑前』(意訳:秀吉ィッ!! テメェは絶対に報いを受けさせてやる!)


 織田信長の息子である織田信孝が、織田信長の家臣羽柴秀吉に追い詰められ自害を命じられた時の歌、所謂『辞世の句』と言われている。

 内海は討つ身、野間はかつて源義朝が家臣に裏切られ討たれた地であり信孝が自害する場所。

 報いを待てやは、言わずもがなであろう。

 憎悪の籠ったまさに呪文、暗黒魔法ならぬ暗黒歌術だ。


「とにかく5.7.5.7.7で詠唱するのだけど、どこで切っても良い代わりに短いほど楽、長い程高度な歌術になるわ」


「なら『現れよ 聖衣顕現光』は2節か」


「ちょっと違うわね。あくまでも『連歌』じゃ無くて『歌術』だからね。『現れよ』が句の一節、『聖衣顕現光』が歌術の名称。さらにその後の『兤陽(こうよう)神パーピリオー』は、その歌術属性を司る神ね。これで術が完成するの。パーピリオーちゃんは兤陽(こうよう)神。簡単に言えば光ね。ちなみに彼女は属性神の一柱。6属性あるから後で説明するわ」


「属性神……歌を詠んで、歌の名前を付けて、神を呼ぶ?」


「そう。さすが宗教が絶対の世界からの来訪者ね。理解が早くて助かるわ」


「うむ(流石に訳が分からんが、分かったフリをしとこう)」


「えぇ(全然わかんない。何? 祈祷とか呪(まじな)いの類って事?)」


 2人は頷いたが、頷いただけであった。


 宗教が絶対の世界からの来訪者――

 そう。

 織田信長と斎藤帰蝶は戦国時代を生きた人間。


 それ即ち、戦国時代は宗教が絶対の世界の真っただ中。

 

 では戦国時代の宗教とは?

 今でいう、宗教過激派が圧倒的多数を地球全体で占める世界だ。

 この時代に核兵器があったら、遠慮なくバンバン飛び交っていただろう。

 それぐらい危険な時代だった戦国時代の日本。

 武家が武家と争うが、宗教が宗教と、武家と宗教が争う時代でもあるのが、日本の戦国時代。

 故に寺とは神殿ではなく、邪教徒からの襲撃から施設を守る為の城であり、砦であり、要塞なのだ。


 また神仏の代弁者として、高利貸し、酒池肉林、武装化、邪教徒討伐が正義で常識の時代。

 これは日本以外の全世界も、程度の差はあれ似たようなモノ。


 本来、織田信長はその常識を『世界史上初めて壊滅させた偉人』なのだが、何の因果か今は雲の上だ。

 それでもって、宗教的要素の強すぎる説明を受けている。


「聞きたい事が山積みじゃが、とりあえずその『派亜否利尾(パーピリオー)』とやらが神の宗教など知らぬ。噂に聞く伴天連共の宗教でも無さそうじゃな? あと何か記憶がおかしいのじゃが? こ奴、斎藤帰蝶とは初対面のハズじゃが知っておる気がする」


「そ、それは私も同じ! コイツがかの有名な大うつけ織田信長で私の夫で上様と知っている! それにさっきの殴った技術!」


「ぬ、くッ!」


「何なのアレは!? 知らない事を知っているわ!?」


 信長も妻だと認識している帰蝶に『コイツ』呼ばわりされる筋合いは無いが、初対面の記憶もある上に裸も見てブン殴られK.Oされたので強く出にくい。


「すっごく分かりやすく説明するとね。あなた達は元の肉体を奪われたの」


「は? 奪われた? だ、誰に!?」


「未来の貴方達自身ね」


「はぁ?」


 信長と帰蝶は同時に『何言ってんだコイツは』と表情を隠さず言った。


「未来の貴方達は、未来の結果が気に入らないから、若い頃からやり直して、結果を変えようとしているのよ」


「……はぁ」


「その為に魂が若い貴方達の肉体に入り込み、貴方達の魂を追い出した。向こうは追い出したとは微塵も思ってないけどね。ただ追い出す時、魂が接触して、記憶が形態形成場……ダウンロード……ともかく、接触した瞬間に記憶が流入したのよ」


「……はい」


「今は、その記憶が整理されてないから混乱してるだけ。人一生分の記憶だから時間はかかるでしょうが、いずれ脳が適切に住み分け処理してくれるわ」


「じゃあ、自分自身とは言え人格が変わったりしません!?」


「あっ。自分自身とは言え、知らん人生を先に歩んだ他人も同然じゃろう?」


 帰蝶と信長は、自分が自分で無くなる不安で困っていた。

 ほとんど意味が分からない話だったが、記憶が混ざる先の可能性だけは気が付けた。


「自分の記憶と入った記憶が混ざることもない。ここは8次元。3次元の記憶の次元より上位の次元。記憶は住み分けられるっていったでしょ? 使えそうな記憶だけ必要な時に利用すればいいわ。詳しくは第2話の前書きを見てね」


 ちなみに今は1話である。

 突然、第四の壁を破壊するファルファッラに信長と帰蝶は、ますます困惑する。


「……ダイニワノマエガキ? 言っている意味が全然分からないのだが?」


 信長と帰蝶は同時に『何言ってんだコイツは』と表情を曇らせながら言った――

 お互いアホ面を晒しているのには、幸運にも気が付いていなかった――

【時空神ファルファッラ様のお言葉】

「『1話の時点で2話を読め』しかも『前書き』を読めなどメタいと思うかもしれないが、それは違うわ。なにせ8次元空間なのよ? 君らの常識など通用しなわ。いいわね? あと下記信長Take3の話が、この話の予告編でもあるわ。2019年にかいた話だけどね」


https://ncode.syosetu.com/n7300el/150


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