0話 強奪&追放
歴史ジャンルで連載中の『信長Take3』のスピンオフ作品になります。
しかし『信長Take3』を読まなくても大丈夫です。
事前に必要な『信長Take3』の情報はこの『0話』に押し込めました。
逆に『信長Take3読者の方は必読』です!!
あるいは漫画版第一巻を読むのもオススメです!
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【天正10年(1582年) 山城国/本能寺】
「桔梗紋! 明智の謀反です!」
「光秀か!! 是非もなし!」
「上様、何かあったのですか?」
帰蝶が騒ぎを感じ取って信長の元にやって来た。
「む、於濃か。いや何でも……隠し立てはするまい……。どうやら十兵衛の謀反らしい」
しかし多勢に無勢。
信長は帰蝶と共に自害し果てた。
こうして信長は本能寺に散った。
≪信長Take1 完≫
【天正5年(1577年)近江国/安土城】
「グッ……!?」
覇気あふれる武将が手をついて、頭を押さえた。
「上様!?」
「ここは……?」
「お加減でも悪くなられましたか!?」
その威圧感に負けず劣らず、ギラギラと溢れる気迫を発揮する武将が、主君の突如の異変に驚く。
主君も人だから体調が悪い時もあるだろうが、こんな急に体調を崩す姿は見た事が無い。
――と思ったら、すぐに元に戻り、周囲をキョロキョロと見渡している。
これからの作戦を話していた主君が、突如、様子がおかしくなり2人の家臣が心配する。
「あー、筑前。たった今、お主に中国を、日向には四国を任せる話をした所だな?」
「ハッ! もう既に準備は整っております。その報告の途中、上様のお加減が……」
「それはもう大丈夫だ。よし。では命令を取り下げ新たな命を言い渡す。どうも間者に情報が抜かれている様だ」
「え!?」
「今、気配が消えた。偽の情報を持ち帰ったであろう」
「何と!」
「済まんが準備はそのまま続け、筑前には四国を、日向には中国を攻めてもらう。これでお主らの家臣に伸びている調略、間者の類も働きが無駄になるだろう」
こうして羽柴筑前守秀吉は四国攻め、明智日向守光秀は中国攻めを命じられ実行に移していく。
★★★5年後 本能寺★★★
「ワシって……そんなに嫌われておるの……?」
羽柴筑前秀吉の謀反により、本能寺は炎上し、信長は5年ぶり2回目の人生を終えた――
≪信長Take2 完≫
【天文15年(1546年)尾張国/とある武家の元服儀式】
「では吉法師よ。これよりお主を尾張守護の斯波様と織田大和守様の忠実なる家臣として、また織田弾正忠家の一員として迎えるべく、三郎信長の名を与える。抱負を述べ決意を示すがよい」
元服とは武家の男子が子供から大人の一員と認められ、それまでの幼名から新たな名前を与えられる儀式である。
その元服式に出席する面々の中でも、一際大きな覇気を発する男が三郎信長と名付けた息子に語り掛けた。
促され三郎信長と名付けられた少年は口を開こうとした――のだが何故か体の自由が効かず硬直してしまった。
「……(ウッ! 何じゃ? 景色が歪む!?)」
「どうした? ほれ、何か言ってみせい」
何やら様子がおかしい息子に怪訝な眼差しをむけると、三郎信長と名付けられた少年の目がカッと見開かれ、同時にとても年相応とは思えぬ覇気をまき散らしながら力強く決意を語った。
「決まっておる! 我が大望は天下布武! 全ての武家を我が足元に平伏せさせようぞ!」
「え……あ……?」
「さ、流石は稀代の『大うつけ』にしてワシの子よ。我が主君の為に存分に働くが良い!」
三郎信長と名付けられた少年の、親も仕えるべき主も全て下に見るうつけ極まりない発言に、元服式に出席していた面々が凍り付いたのだった。
こうして織田信長は3回目の人生を歩む事になる。
【天文14年(1545年)美濃国/とある武家の寝室】
少女が今日も変わらず寝室で寝込んでいる。
「姫は健やかか?」
「はい、お殿様」
廊下では少女の父と世話係の声が聞こえるが、その空しいやり取りに寝込んだ少女は悲観に暮れていた。
この『健やかか?』『はい』と聞くのは不謹慎な事を言霊にしない、いわゆる気遣いであり、言葉とは裏腹に症状は一進一退で、完治する気配は全くない日々が生まれた時から続いたのである。
最近は上体を起こすだけでも一苦労の日々が続いており、先の見えない病状故に将来に絶望するのも無理からぬ事であった。
少女は絶望で弱気が加速していく。
「……(今日も寝たきりの一日が過ぎていく……。あぁ目が霞む。景色が遠のく。父上、帰蝶の先立つ不孝をお許しくださ――)うぉぉぉぉ!」
気合一閃、雄叫びを上げた少女は、しっかりとした足腰で立ち上がり外に駆け出した。
勢い良く襖を開け放つと同時に、異常事態に驚き飛び込んできた父に鉢合わせてしまった。
「何事かッ!? ぐぺぇ!」
ブレーキなど間に合うハズもなく、少女の強烈なタックルを食らった父は廊下を飛び越え庭まで吹き飛ばされてしまっていた。
最初の大人と、この少年と少女の異常行動――
これは――
戦国時代の英雄である織田信長とその妻である斎藤帰蝶(濃姫)が、本能寺で共に討ち死にした後、未来人ファラージャの手によって転生を果たした瞬間の出来事である――
ついでに言うなら、信長は本能寺の5年前と元服の瞬間で合計2回で3回目の人生を。
斎藤帰蝶は、初めての転生で2回目の人生を歩む事になる。
その結果、信長と帰蝶は様々な歴史を覆し、本来であれば出会わなかった者と出会い、史実にて死んでいた者が生き残り、本当なら乱世を生き抜いた者が死に、歴史では戦いに敗れ滅んだり縮小した家が隆盛を誇り、逆に表舞台に出てくるはずの家が低迷する結果となった。
もはや通常の歴史から大きく逸脱した乱世は、転生し歴史を知る信長と帰蝶でさえ読み切れない混沌と化していたのだが、そんな歴史に信長と帰蝶と、その転生をサポートした1億年後に生きる少女ファラージャは生み出した者の責任を持って歴史に挑み続ける事になる。
挑み続けるのであるが――
その3人も与り知らない事態が進行していた――
実は――
この時、信長と帰蝶の他に、もう2人転生をした人物が居たのである――
この事実は1億年後の未来の超科学力を駆使し、転生を後押しした張本人であるファラージャすら把握しておらず、転生科学技術が未発達故のイレギュラーでもあった。
では信長と帰蝶の他に誰が転生したのであろうか?
その2人とは『信長と帰蝶』である。
これは誤字ではない。
イレギュラー転生者とは正真正銘、信長と帰蝶である。
とはいっても、これは転生人生を歩んでいる信長と帰蝶ではなく、本能寺で死んだ信長と帰蝶の転生に巻き込まれ若い肉体を奪われた形となった、転生に巻き込まれるとは露ほども想像していなかった、本来の肉体の持ち主である若い信長と帰蝶である――




