14話 how we died meeting(死亡反省会)
【8次元/神界】
「さ、それよりも何故失敗したか? 分かるかしら? かなりの致命傷をやらかしてるわよ? 幾つもね?」
「致命傷!? 幾つも!? そんな馬鹿な!?」
「そ、そんなに駄目でした?」
「駄目駄目ね。まだ英雄の方の魂との記憶の融合が済んでないから出た策だろうけど……ハッキリいって子供の浅知恵だったわねぇ」
「子供の浅知恵だと!? 元服したワシに……!」
その侮辱に思わず刀を抜こうとする信長に、殺意に凍える瞳で睨み返すファルファッラ。
信長は一瞬で肝を冷やされた上に潰された。
ウェアウルフ義元にボコされたのに、神たるファルファッラに敵うわけがない。
「いえ何でもありません……」
信長も元服した以上(制度上)大人なので『子供の浅知恵』と言われるのは心外で怒るが、いくら未来の超天才英雄でも12歳では知恵もたかが知れている。
記憶の融合も、なぜか不完全だ。
だから、すぐに意気消沈した。
「素直でよろしい。もし私を斬れたら、その時点で大英雄になれるわ。いつでも挑んで来なさい。神界では武士道騎士道は無いわ。卑怯卑劣大いに結構」
「そ、それはいずれ挑むとして、何故あの策はダメなのじゃ? どう見ても内輪揉めの後にしか見えなかったはず!」
失敗したので浅知恵呼ばわりされるのは仕方ないとして、失敗の理由は知りたい。
内輪揉めに見せるために、建物の一部を燃やしたのだ。
義元達に何かあったと伝えるために。
そこで乗り込んできたところを血塗れの部屋で、義元達を一網打尽にする手はずだった。
だが、部屋に入ってきた義元はいきなり死体のフリした信長たちに攻撃を仕掛け、皆殺しにしてしまった。
余りの手際の良さに不意を突くつもりが、完全に不意を突かれてしまった。
「ウェアウルフの説明は下界でもされたでしょ? 狼よ? 犬の先祖なのよ? 鼻が良いに決まってるでしょ!!」
「あ」
「あ」
信長も帰蝶もド忘れしていた。
ただの犬でさえ人の100万倍以上、物質によっては1億倍を嗅ぎ分ける。
野生の狼ならそれ以上だろう。
なら歌術で超人獣化したウェアウルフなら、もう人間形態でも匂いには敏感だ。
「いい!? ウェアウルフよ!? 最強の嗅覚を持っているに決まってるじゃない! 普通予想つくでしょ!?」
「あ、その、普通と仰られましても……」
「3次元世界にはあんな化け物はおらんので……!?」
「口答えするなッ!」
「は、はい!」
「承知!」
100年前にここで言われた『返事は「はい」か「承知」だけ』のルールを思い出し背筋を伸ばし返事をする2人。
だが信長と帰蝶は、狼の嗅覚が人間の何倍なのか当然知らないが、優れていると知識としては知っていた。
しかし、8次元への召喚が、現実離れしすぎた光景が、未だに信じられない現実が、狼の嗅覚を忘れさせた。
「しかもよ? 生きているか死んでいるか、ウェアウルフ義元にとって、死んだフリでも血の種類は1種類だけだし、血流の匂いの動きを察知してしまえば、或いは脳のニューロンの動きを嗅覚で察知してしまえば生死の判別は付くのよ!? その上、寝転がって死んだふりの圧倒的に不利な体勢をしている人間を葬るのなんて路傍の石を蹴るのと一緒よ!?」
義元は、死んだフリをしている織田家の人間を、容赦なく殺戮して終わった。
反撃する暇も無かった。
ただ、今川義元としてもビックリな光景だった。
生きている人間が、この緊急事態で寝ている。
今川群が攻めてきているのを知っているはずだ。
ならば死んだフリしかない。
そのみっともない足掻きには感心するが『バレているぞ』と声をかける義理もない。
武士道を汚すなら、それ相応の対応をするまで。
「あれじゃ清須城があっという間に血の海になるのも仕方ない話ね。良かったわね一撃で苦しまず殺してもらえて」
「……」
「何か言え!」
(えぇ……)
(理不尽すぎる……)
「……じゃ、じゃあ『にゅうろん』ってなんですか」
「あ、それそれ! しかも血の匂いを嗅ぎ分けるのはともかく、血流の匂いを判別する!? どういうことじゃ!?」
信長と帰蝶が知らない知識の解説を求めた。
血の匂いは人間でも理解できるが、嗅ぎ分けなど不可能だし、血流の匂いはもっと意味が分からない。
ニューロンなど謎の言葉だ。
「……そうだったわね。戦国時代の人間ですものね。ニューロンは体内に張り巡らされた神経を電気信号で命令するのよ。手足を動かしたり、痛みの情報を脳に送ったりね」
「デンキシンゴー? シンケーってなんでしょう?」
「……。体内で雷が行き来しているのよ」
「体内って、この体の中に雷が!?」
「ソウヨ(メンド臭ぇ!! 3次元のモニター前の貴方はAIで調べなさいね!? ここは8次元で3次元常識カクカクシカジカ!!)」
「それに雷にも匂いが!?」
「あるわ。あるのだけど雷の匂いと言うよりは……オゾン、二酸化窒素……って、その腕の匂いを嗅いでも分からないわよ!?」
「あっそうなんですか」
雷の匂いは、落雷現場のすぐ近くじゃないと感じ取れない。
しかも雷の匂いではなく、雷の影響で発生した、青臭い、焦げた匂いなどがあるが、オゾンの匂いであったり、窒素と酸素の化合物の焦げた匂いだが、ニューロンは電気信号であって、破壊をもたらす稲妻ではないので、感じとれるのはウェアウルフ義元だけだ。
「じゃ、じゃあ糞尿でも撒いて鼻を潰すとか……」
「う~ん、それは50点ね。嗅覚に優れる者に、嗅覚を潰す仕掛けを作る。悪くはないけど、ウェアウルフの今川義元が、その程度を想定していないと思うの? 仮にそうしても間違いなく悪臭の中から全員の匂いを嗅ぎ分けるわよ?」
「人間と狼が半分ずつなら、ちょっと匂いに敏感な人ぐらいじゃないのか?」
「歌術を使ってるっつってんだろ! 足して割ってるんじゃない! 強烈なバフがかかってんのよ!」
「ばふ?」
「馬糞が掛かってる?」
「貴様ら……そんなに私を怒らせたいのね?」
ファルファッラの神性が竜巻を作り始める。
嵐となって炸裂寸前だ。
「バフデバフを馬糞なんてふざけてると思わない? そうでしょうモニター前の君達!?」
「馬糞と泥馬糞!? い、いや、知らん言葉で説明されても!? それに誰に許可を求めておるんじゃ!?」
「バフデバフは常識でしょ!? あ、戦国時代か! なんて面倒なの!? 3次元の人!! ねぇ画面の前の人!? 感想欄でもいいから教えてあげて!!」
「か、かんそーらん!? ばふでばふも含め、何を言っているのか本当に分からんのじゃて!!」
「うるさい! 次の話までには何かしら教えてもらえるはずよ! それより! 特訓をするわよ!」
「次の話ってなに……え? 特訓!?」
「当たり前でしょ! アンタ達、一撃で蹴り殺され爪で斬殺されたのよ!? 不意を突く作戦は通用しない! なら正面から戦うしかない! だから鍛えなおすのよ! いくわよ! 『雲は砂 雲坂なれば 雲泥へ 起伏富みて 秘境となるや! 天地改竄法!! 創造神パルヴァーネ!!』」
また雲が見る見るうちに変質し、見覚えのあるアスレチックコースが完成された。
「次! 『人体は 鉄塊金剛 圧壊せり 鉄筋縛鎖法! 土壅神ボルボレッタ!』」
歌術と共に、鋼鉄の鎖が体に巻き付く。
「え……うおぉぉぉッ!?」
「ウググ……潰れる!!」
「流石にこれはキツイから少しだけ温情を授ける! 『そよ風よ 慈愛と共に 休息を 風舞復元法! 風飄神ペルホネン!!』 これで多少の疲れと怪我は徐々に治る! さぁ走れ!」
「こ、この状態で!? あ!? はい!」
「承知ィィィィッ!!」
こうして信長と帰蝶は再教育を受ける事となった。
足場の悪い地面をを踏み固めながら――
【時空神ファルファッラ様のお言葉】
「さぁ、だれが感想欄第一号になるかしら? 2号、3号も大歓迎よ!」
「10/21追記するわ。感想記入にアカウントはいらないわよ?」




