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暗黒の信長と帰蝶 ~異次元の信長Take3~  作者: 松岡良佑
第1章 愚者

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12話 8次元史上、最も情けない歌術と、今川群(誤字ではない)出陣

【時空神ファルファッラ様のお言葉】


「今回は分かりやすいわね。ね?」


「●●●●●●」通常会話。誰にでも通じる言葉。

『●●●●●●』歌術。

【●●●●●●】場所や地名。

【8次元世界/尾張国 清須城 広間】


「確認も含めて策があります。まずは術を披露してもいい庭に行きましょう」


 信長の提案で全員が庭へ向かった。


「まず勝家、火燎(かりょう)神ケレベックと唱えてくれんか?」


「良く分かりませぬが基礎術ですな? ……では」


 勝家は誰もいない方向に拳を向け、左手で右手を掴む。


『火燎(かりょう)神ケレベック!』


 ノーリスクの基礎術である、神の名前呼び。

 信長が煙草程度しか出来ないなら、勝家は大砲並みの火炎弾を繰り出した。

 流石この次元でも織田家随一の武将である。

 術も体力も一流だ。

 ファルファッラが、天界で信長と帰蝶を散々走らせたのも良く分かる。

 

「成程、では水の使い手は居るか?」


「では某が」


 紫の髪と青色の瞳を備えた、水と闇の術士、森可成が進み出た。


『水灑(すいさい)神ペタルデス!』


 可成が天に向けて指を向けると、凄まじい勢いで大量の水が噴射された。

 人をブッ飛ばす威力はありそうであるし、火災の時には便利であろう。

 つまり消防車の放水ぐらいは出来るのだ。


「よし。では我らの基礎術を見てもらおう……いくぞ! 『火燎(かりょう)神ケレベック!』」


 信長は人のいる方向に指を向けて唱えた。


「……えっ。 オワァッ!?」


 ギャラリーは大慌てで伏せる。

 この次元に存在していた信長が放った時の威力を知っているからだが、そんな必要は無かった。

 杞憂も杞憂、杞憂民だった。


「これがワシの基礎術だ」


 信長が得意気に、指先の煙草大の火種を見せた。


「え!?」


「き、基礎……術!?」


 史上最も情けない基礎術が披露され、ある意味驚愕の感情が渦巻いた。


「帰蝶、お主もだ」


「……どうしてもですかそうですか。あ~えーっと……名前はナンダッタカナ……もう!! 『水灑(すいさい)神ペタルデス!』」


 勝家や可成の後では見せたくないのか、抵抗して諦めて嫌々唱えた。

 やはり天界で水滴から爆発的に成長した、水道水5分の1の水流が指先から垂直落下する。

 手を洗うに丁度いい水流であろうか。


 この光景には、かつての『この次元の信長と帰蝶』を知る者達は絶句する。

 特に命がけで蘇生歌術を行った信秀は、泡を吹いて気絶寸前だ。

 蘇生の失敗を確信したのだ。


 信長はその絶望や失望の空気を十分に吸い込みつつ、話し始めた。


「分かっておる。皆の失望はよ~く分かっておる。本当に見せたいのはここからじゃ――」


 信長達はある術を見せた。

 これには先の失望を補って余りある光景であった。

 信長は、それを披露した後で、戦術を説明した。


「どうじゃ? 想定外(●●●)も起きたが、これなら希望が持てそうか? 勝てると思うか?」


 信長は勝てると判断したが、この次元の住人ではない。

 まだ見落としがあるかもしれないので、一応、確認を取った。


「か、可能性は十分あるかと……! 信秀様はどう思われますか!?」


「うむ。あんなクソ基礎術でこれほどまでとは……ッ! これで負けたら『仕方ない』と言える……な! もう止むを得まい(●●●●●●)」


 信秀も余程の確信を持ったのだろう。

 これで負けてたら仕方ない、それ程の奇想天外な策であり、負けたなら悔いはない。

 スポーツでも勉強でも、仕事でも小説でも、ここまでやってダメなら仕方ない、というラインを引いて頑張る人種がいる。

 これは、ダメだった時の後悔をしないための努力の方法の一種。

 だが信長はその言葉に驚いた。


「人狼の呪いはあるのに、言霊(ことだま)の呪いは無いので?」


「コトダマ? そちらの次元の呪いか?」


 歌術の無い次元で、呪いが存在すると思えず、信秀は思わず聞き返す。

 ついでに利用価値も見出す。

 言霊の次元から来た信長が言ったと言う事は、ウェアウルフの様な特別な存在でなくとも使える呪いだ。

 名称が『呪い』と言うのは危ないが、知らない事は知るに限る。


「呪いです。『負ける』と言えば『負けてしまう』、『死ぬ』と言えば『死んでしまう』。あらゆる不吉な言葉を口にすると、言葉通りになる。なので『諱は口にしてはならぬ』は、そこから来た概念。相手の名前と魂を支配する呪いなのが我らの次元です」


「名前を口にして呪い完成か!? ず、ずいぶん単純な呪いじゃな? 流石に迷信の類ではないか?」


「違います! 迂闊な事を言えば『お前のせいで負けた』と言われかねません」


 信長が真剣にフォローするが、晩年の記憶との食い違いに自分でも驚いていた。


(そんなモノは予言の自己成就にすぎぬ、と記憶があるな? 迷信なのか?)


「そ、そうなのか? 不吉な事を言うと処罰されるのか? これはまた随分窮屈な次元から来たのだな? 負けを想定しないのか?」


「それは大将が、全ての負けの可能性を潰しておかないのが悪いのです」


「数千、数万規模の戦いで、負けの可能性を全部潰すのか!? 大将の責任が重すぎやせんか!?」


「重いです」


 信長は言いながらも悩む。

 自分で言っておきながら、確かに理不尽だとも思う。


 所で読者の皆様は『言霊』を迷信と笑うタイプだろうか?

 笑う? 

 ならば問おう!

 受験生の目の前で『落ちる』と言う言葉を避けた事は無いか?

 末期の病気の人に向かって『お前もう死ぬよ』と見舞う事があったか?


 言ったことがあるなら、言える自信があるなら大丈夫!

 貴方は言霊の呪いにはかからない。

 安心していいぞ!



【8次元世界/駿河国 駿府城 広間】


「これより、織田家絶滅作戦の戦略を言い渡す」


 青色の髪に紫色の両眼の今川義元が告げた。

 ついに最終決戦と判断したのだ。


 海道一の弓取りたる今川義元が、威厳たっぷりに命令を出した。


「まずはいつも通り岡部元信、松井宗信、朝比奈泰能、凜恵(りんけい)(定恵院)それと太原雪斎、それに今回は氏真に北条涼春、松平元康、今川瀬奈を加える。あとは元織田の眷属共だ」


「はッ!」


 木下秀吉、佐々成政、前田利家、池田恒興、毛利良勝、服部一忠が完璧に揃って返事をした。

 義元への忠誠心はゆるぎなく、使い捨てにされても名誉と感じる元織田家の精鋭だ。


 ところで武将達は兎も角、義元の妻に息子の妻まで混じっているが、何も問題ない。

 ここは8次元空間の世界なのだ。

 歴史が同じとは限らない。

 時間の流れが平等とは限らない。

 いいね?

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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)大先生だ!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)

八坂先生の作品一覧→https://x.gd/Gj9zO

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挿絵(By みてみん)

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