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暗黒の信長と帰蝶 ~異次元の信長Take3~  作者: 松岡良佑
第1章 愚者

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10話 Primogenitor Werewolf YOSHIMOTO(ウェアウルフ真祖、今川義元)

【時空神ファルファッラ様のお言葉】


「そろそろ私の親切に感謝の言葉があっても良いと思うのよ?」


「●●●●●●」通常会話。誰にでも通じる言葉。

《●●●●●●》神言語3。信長と帰蝶と神にしか理解できない神言語含む3次元語。

【●●●●●●】場所や地名。

【8次元世界下界/尾張国 清須城 広間】


 まだ時間が止まっている最中である。


《『『3次元の常識で考えるな』と言いたいのだろう?』って自分で言ってたじゃない。変化ぐらいで何を慌てふためいているの?》


《ぐらい!?》


《ぐらいって……!》


《3次元人は変化(へんげ)もできないの?》


《できるか!!》


《そう? 3次元の英雄の方の貴方達は、変化してるけどね? いや貴方達に限った話じゃないけど?》


《何じゃと!?》


《それは事実なら呪いか何かにかかったのでは……》


 違う次元や同じ次元でも、種類の違う3次元の話だったら理解できるが、同じ次元、同じ次元の『自分達』が変化できるのは、想像を絶する言葉である。


 だが、実はファルが言っている『変化』とは、殺気や覇気で恐怖恐慌状態にさせ幻覚を見せる事を言っている。

 相手の勘違いなので、厳密には変化と違うが、対峙する者にとっては、信長や帰蝶が悍(おぞ)ましい何かに変化して戦っている様にしか見えない。


 だが『その変化』ができるのは、一回殺された経験がある帰蝶と覇王信長、及び美濃の蝮、海道一の弓取り、越前の武神、相模の獅子、越後の龍、甲斐の虎、安芸の謀神、日本の副王など同程度の人間なら多かれ少なかれできる。


 しかし8次元にいる信長と帰蝶は『殺された記憶』があるだけで『経験』はしていない。

 その差は大きく、今の信長と帰蝶には理解不能の感覚だ。


《ともかく、8次元では変化ができる者がいる。いい? その前提で話を進めなさい! じゃあ少し時間をもどすわよ!? いいわね!》


《はい……》


《承知……》


 また全員の動きが逆再生して信秀の言葉が始まった。


「そう! 変化ともいう。あの義元を変化させず倒したのか、させた上で倒したのか? それは重要事項なので確認しておき……? どうした、疲れたのかね? 違う次元から来たのじゃ。何か不都合があれば遠慮なく言うがいい」


 疲れは勿論、ファルと交わした『変化』についての激論である。

 時間停止中だったので信秀達には突然、信長と帰蝶が疲労困憊になった様に見えている。


「あぁ、大丈夫です。次元を移動した後遺症でしょう。今、時空神の奴が教えてくれました」


《『奴』? 聞き間違えかしら?》


「間違えました時空神様(●)です。それで今川義元の変化ですが、我らの次元では変化はしません。良くて殺気や覇気が幻覚を見せる程度ですが決して歌術ではありません。ここの今川義元はその見た目が誰にでも理解できる変化があるので?」


「その通り。ウェアウルフ、ライカンスロープ、人狼、呼び名は様々あるが聞いた事はあるか?」


「うえあうるふ、らいかんすろぷは分かりませんが、ジンローは『人の狼』と書くので?」


「その通り。ではそちらの次元にも居るのだな? 人狼が」


 信秀がやっと話が通じたと思い安心するが、残念ながら違った。

 余計な混乱を招いただけだった。


「居ません! 妖怪の一種としても知りませんし、何なら『狼』は『大神』とも呼び、害獣を駆除してくれる神として祭られている地域もあります!」


「狼!? そっちの義元は狼そのものに変化するのか!? しかも神!?」


「神の狼は見たことがありませんが……ややこしいわね! ええと……獣の狼がいるだけです!」


 とんでもない誤解をする信秀と、必死に誤解を解く帰蝶。

 信長は本当に疲れてきた。


「獣の狼と人狼は明確に違うぞ!? 人の知性と狼の戦闘能力を併せ持った、文字通り人狼であり化け物じゃ!」


「化け物……何がどう化け物なのです?」


 信長は頭痛がするのを必死に耐えながら聞いた。


「色々あるが、人狼義元の最大の特徴は術も刃も効かぬのだ――」


《ファルゥゥゥッ!!》


《はいはい。時間を止めたわ》


 ファルは、信長の要請を見越し、先に刻を止めていた。


《術を叩き込まれた、あの100年間は何じゃったんじゃッ!?》


《そうですよ! 術が効かないって、術で成り立つ次元で反則では!?》


《そう言われてもねぇ……。術以外も鍛えたでしょ?》


《身体能力の話か!? 獣を狩るとは訳が違うぞ!? 人が走って狼は当然、鹿も当然、全力で走る犬や猫に追いつけるか!? それでいて人の知能と狼の戦闘力とか言っておったぞ!? んでもって術無効って! 舐めてんのか!?》


 散々術をコケにされつつ100年頑張ってきたのだ。

 その本番が始まり、多少なりとも前向きにやる気が出て来たのに、学んだ事が全部無効は酷すぎる。

 バランスの調整ミスとか、ラスボス前のボスとかなら分かるが、初戦の相手がコレでは戦いにもならない。

 麻雀なら酷すぎる配牌とでも言えば伝わろうか?


《うるっさいわねぇ!? その頭は飾り!? 考えなさい! 知恵を絞りなさい! 英雄なんでしょ!?》


《それは将来の話で、今はまだ何でしょ!?》


《うっさい! 勝てないなら負けて死ね! そしたらまた100年間、もっと激烈に鍛えてやる!》


《え、それはちょっと……》


《がんばります……》


《再開!》


「色々あるが、人狼義元の最大の特徴は術も刃も効かぬのだ。全身の毛一本たりとも燃やせぬ。刃も通らん。奴は水属性メインで水が強い故に火が弱点なのじゃが、ウェアウルフはそもそも術を受け付けぬ」


「そうですか、じゃあ勝てません。降伏しましょう」


 さっき『それはちょっと……』と100年の再特訓が嫌がった信長が言った。

 どう考えても無理なのだ。


「おぉい!? 何の為に復活させたと思っとる!?」


 信秀が次元の違う息子の潔すぎる態度に絶叫する。


「ワシなら勝てると!? 無茶を言わんで下され! 人は武器を持って獣と互角なのです! それなのに人間の知性を持った獣など、ナニで勝てと!?」


「そりゃ術じゃろう!」


「だから我らの術は未熟だと! その上、奴に術は効かぬのでしょう!?」


「勝家を見よ。髪も目も赤だ。つまり火燎(かりょう)神ケレベックの申し子ともいえるが、人間形態の義元には善戦できても、変化されたら手も足もでぬ。勝家、腕を見せよ」


「はっ……」


 勝家が袖をまくると人とは明らかに違う、獣の歯形がくっきりと残っていた。


「これはウェアウルフの呪い。勝家以外にも、織田家の使い手は全員噛みつかれた。これがどういう事かわかるか?」


「分かりません!」


 信長は若干怒りを込めていった。

 別次元の来訪者に分かる訳がない事を聞く、違う次元とはいえ、信秀らしからぬ迂闊な発言に腹を立てたのだ。


 だが信秀は信長の怒りを流して話した。


「勝家らはウェアウルフの呪いに感染した。15日前に負ったが、あと10日以内に倒さねば、義元の眷属になってしまう。逆らい難い欲求によってウェアウルフになってしまうのだ。命令に逆らう事も逃げる事も出来ぬ。ウェアウルフになる前に自害させるしか織田家を守る手段がない」


「呪い? 呪いが感染するんですか?」


「義元の場合はな」


「病ならともかく呪いが感染とはいかなる原理で?」


「眷族になった者に噛まれても、同様に人狼になってしまう。これが感染といわれる所以。強大な力を持つ人狼になってしまう」


「それは厄介ですね……」


 イマイチ信じられない現象だが、自分が住む次元と違うので信じるしかない。


「しかも義元はその強大な歌術で自らウェアウルフに変化した真祖。呪いに感染した者とは別格じゃ」


 信長は絶望的な状況に眩暈を覚えるが、少し流入した覇王の記憶を手に入れた頭脳はフル回転していた――

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【読む方法】

分割連載WEB版:https://x.gd/Euxzi (ファンレター待ってまっておるぞ)

分割連載アプリ『マンガBANG!』

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または、各種電子書籍サイトで買うがよい。


作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)大先生だ!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)

八坂先生の作品一覧→https://x.gd/Gj9zO

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挿絵(By みてみん)

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