9話 桶狭間の戦いっぽい戦いと、忌み名や言霊の概念が無い次元
【時空神ファルファッラ様のお言葉】
「一応おいておくわ。使われる言語に絞って掲載する事にするわ。ネタバレになる!? 何語で話してるか探しにくいでしょう!?」
「●●●●●●」通常会話。誰にでも通じる言葉。
《●●●●●●》神言語3。信長と帰蝶と神にしか理解できない神言語含む3次元語。
【●●●●●●】場所や地名。
(●●●●●●)心の声、またはヒソヒソ声。
【8次元世界下界/尾張国 清須城 広間】
「それでは蘇生術が大成功を収めた所で、希望が見えた今こそ今川家対策に入る」
信秀は疲れた様子で、玉座でグッタリしている。
故に筆頭家臣の柴田勝家が場を仕切る。
当然、みな玉座程では無いがそれなりの椅子だ。
「(物凄い床几(?)じゃ!?)って今川家!? 権六! どういう……まさか桶狭間か!?」
「信長様!? 別次元からの来訪者なのは理解しましたが、良くご存じで!? そちらでも桶狭間を!? それと、その、ゴンロクとは一体? そちらの次元の言葉ですか? どういう意味で?」
「ご、権六!? それがお主の仮名であろう!? それに信長様だと!? 諱を軽々しく口にするとは!」
いくら稀代のうつけ信長といえど許せない事がある。
それは『諱(忌み名)呼び』だ。
戦国時代のそこそこの血筋の人の名前は、真の名前が超長い。(勝手に名乗る輩もいるが)
例えば織田信長の最終真名は『平朝臣織田前右府三郎信長』である。
今は無官な上、当時は藤原氏なので『藤原朝臣織田三郎信長』が正式な呼び名だ。(そう!当の主人公織田信長は藤原氏から平氏に勝手に名乗りを変えたのだ!)
氏:平、源、藤原、橘、豊臣など、天皇から賜った氏(血筋)
姓:真人、朝臣、宿禰と8段階あり、真人は皇族しか名乗れない。(武士は大抵、朝臣)
苗字:織田、武田、毛利、柴田など大体が地名に由来する。(違う場合もある)
官位:上総介とあるが、弾正忠や右大臣など、その時々で変わる。無冠なら飛ばして読む。
通称(または仮名):諱のかわりに呼ぶ仮の名。三郎や権六など。官位があればそちらが優先。
諱:信長、帰蝶、勝家などだが、主従関係や親子間でしか、しかも上から下の者にしか使わない。あるいは敵。諱は忌み名であり、軽々しく呼べば斬られても文句は言えない。
神界では明らかに身分が上で、恐ろしいファルファッラが相手だったから諱呼びも許したが、次元が違うとは言え、父の家臣の身分で諱を呼ばれる筋合いは無いのが常識なのだ。
「も、申し訳ござらぬ??? 別次元ではそんな厳重な仕来りがあったのですか? 知らぬとは言え失礼しました――」
ここで時間が止まった。
《信長ァッ!! 3次元の常識が通用する次元じゃないっつっただろうがッ!!》
《おわッ!? じゃあこの次元は仮名が無い!? 忌み名も無い!? 術がある次元で本名が割れてもいいのか!?》
ファルファッラが時間を止め怒鳴り込み、信長が慌てる。
しかし、信長の言い分は尤もでもあった。
3次元の戦国時代は、諱で呪術を仕掛けるのが常識の次元でもあったのだ。
実際に、呪術を警戒して諱の変更を何度もした武将もいる。
諱を口にするのは、相手の魂や存在を支配すると同じでもある。
またこの信長は、宗教に見切りをつけた晩年の信長でもない。
生まれてから徐々に信仰を失い本能寺で死ぬが、この信長は12歳で肉体を奪われた身。
宗教的恐ろしさを信じている年頃でもあり、実際に術の使える次元に来てしまった。
だから諱呼びに過剰反応したのだ。
《相手の名前で発動する歌術は無いわ! あるとすれば我々神々の名よ! それか対象の血肉だけよ! あんた達が復活した時の遺髪とかね! 名前なんかバレても問題ないのよ! 全く! ちょっと時間を戻すわよ!? こんな事で失敗の道を歩まないでもらえるかしら!? あまりにも下らない失敗だから思わず止めちゃったけど、今後はこんな助けは無いわよ!?》
《……》
《返事ィッ! 忘れたかッ! 『はい』か『承知』だけっつっただろッ!》
《はい!》
《承知!》
動かない体で背筋を伸ばす2人。
天界で地獄を味わったPTSDでも発症したのだろう。
《よし! 『鼓動止め 時の流れは 逆鱗に! 星天時逆法ッ!! 時空神ファルファッラが命ずるッ!!』》
ファルファッラが怒鳴って時間を戻して再開させた。
その瞬間短時間ではあったが、全員が逆再生で戻り、もう一度動き始めた。
「それでは蘇生術が大成功を収めた所で、希望が見えた。故に対今川家対策に入る」
何事もなく説明を始める柴田勝家。
「今川家!? ごん、勝家、……まさか桶狭間か!?」
信長が言葉に詰まるが、かえって自然に見えたのが皮肉か。
「おぉ信長様! 別次元からの来訪者なのは理解しましたが、良くご存じで? 別次元でも桶狭間を?」
信長がむず痒そうに、全身にナメクジが這いまわる感覚に襲われながらも『忌み名呼び』を耐えた。
「あ、あぁ。この次元でもあるのだな」
「その言い様は経験済みであると!?」
「経験済みではあるが……」
史実信長の記憶も当然あるので、経験済みと言えばそうなる。
だが物凄く歯切れが悪くもなる。
まだ知識の融合が完全じゃないのが一つと――
「じゃが、ワシはこの次元を知らぬ! 歌術で戦うのだろう? 合戦が全く想像できんのじゃ!」
弓隊の代わりに歌術士部隊がいるのか?
この次元にも刀はあったが槍や鉄砲、弓などの物理攻撃は無いのか?
そもそも地形が、桶狭間が、日ノ本が知っている地形なのか?
分かっているのは『桶狭間という地名がある』だけだ。
故に経験済みなのに、何一つ安心材料が無いのが本音だ。
そもそも、記憶にある桶狭間だって、運良く勝ったと記憶されている。
「ワシの知る桶狭間は雹や雨で視界不良でな。運よく今川本陣を突けただけじゃ」
「何と! 天候をも操る術士が居たので!?」
「違う! そもそも術の無い次元から来たと言ったじゃろう!?」
術が常識の次元では、どうしても術が第一に考えらえてしまうのか、勝家はとんでもない事を言う。
「い、一体、信長様はどういう次元から来訪されたので? 術も無しに今川義元を倒したと!?」
「そりゃ戦略を練って効果的に動き、最後に運だな。桶狭間に限って言えば」
史実の桶狭間を超要約すればこうなる。
「戦略は理解できますが、分からないのは倒した決定打です。あの今川義元を術無しでどうやって……」
「そりゃ刀や槍じゃろう」
「刀!? 槍!? あの義元に!?」
「えっ」
「えっ」
「……」
「……」
ついに、喋る事が無くなった。
今川義元について話しているのに、認識がズレまくって、何を話すべきか困ってしまった。
「信長よ、それに勝家」
「はい、親父殿」
「はッ!」
「どうやら我らと来訪者の知る『今川義元』に随分と隔たりがあるようじゃ。まず、そこを整理しないと話が進まんな」
信秀は休憩しながらも両者の言葉から、根本が間違っている事に気づき、助け舟をだした。
「話から察するに術は無く、奇襲と武器で止めを刺したのだな?」
「ええ」
「奇襲か……。それで義元が死んだのだな?」
何やら『奇襲』に懸念をもちつつ信秀は続けた。
「そりゃ首と胴が切り離されましたからな」
そのとき数名の家臣が顔色を悪くした。
その光景に胃液が込み上げた様だ。
「く、首と胴を切り離す!? そ、そりゃそうなれば生きてはおれまいが……首を落とす……!」
どうやらこの次元では、首を切り離す風習は無いらしい。
その事実は女の帰蝶でも知ってる常識なのだから、信長にとっては驚愕の事実だ。
《……わかっとる。『3次元の常識で考えるな』と言いたいのだろう?》
《分かってるならよろしい》
そんなファルファッラの言葉が割り込んだあと、信秀がとんでもない事を言い出した。
「義元は変身しなかったのか?」
「桶狭間で返信? 書状の? 何故……?」
「書状?」
また会話がすれ違って止まった。
こんなすれ違いを3次元の人は、何というか知っているね?
そう『ア〇〇゛ャッ〇ュ状態』だね。
だが、今度は信長がすぐに場を動かした。
「……何かまたすれ違いましたな? ヘンシン……変心、変身……!? まさか変化?」
「そう! 変化ともいう。あの義元を変化させず倒したのか、させた上で倒したのか? それは重要事項なので確認しておきたい――」
ブチッ!
《ファルッ!! 時間を止めろォッ!!》
《はいはい。なぁに?》
ファルファッラが言う前に止めた。
《変化ってなんじゃ!? この次元の人は、妖怪にでも変化できるのか!?》
《出来るわよ?》
《へ?》
《出来るの!?》
我慢の限界を超えた信長が思わず叫び、ファルファッラに時間を止めさせた。
そして『変化ができる』との言葉に、今まで呆けていた帰蝶が流石に驚いた。
なお呆けるのも仕方ない話し合いであったのは、読んでの通りである――
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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)大先生だ!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)
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