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3話 防音だから、自己紹介を

「負けましたよ先輩。でも、完敗じゃないっすから」

「あはははは……。しかも、これじゃあどっちが勝ったかわからないよね」


 時と場所を移し、ここは夕方の保健室。

 カーテンで区切られている中で、ベッドには逸勢はやなりが横になっている。

 そして、その周りを、ようやく上靴を回収した大仁だいじ

 パイプ椅子を二個使って寝転がっている武留たける会長。

 会長の上に本を乗っけて読んでいる丸坊主男子が囲んでいる。


「さて、ここで大仁くん。結果をお知らせする」


 声は真剣そのものだが、だらしなく横になっている姿と、本を乗せられている状況で、どうにも締まらない。

 だが、それに触れず、というか気づかず、大仁も真面目に居直る。


「大仁くん。君を、生徒会役員として認定する」

「まじっすか!! ありがとうございます!」


 なんども反復させられたあの動きより、さらに深々と頭を下げた。


「うむ。君の能力とその腕っ節に期待しているよ」

「はい! 任せてくださいっす!」


 うおおおおおおおおおおおおお!

 と叫び、力強く手を上げる。


「ちょっと落ち着いて」


 歓喜の雄叫びを上げる大仁をなだめる。


「君の委員会章は後日、渡すとして……。

 晴れて生徒会の一員になった大仁くんよ。

 ここらで、ちゃんとした自己紹介をしようじゃないか。

 互いの名前と、能力を、しっかり認識しよう」

「え、でもこんな場所でいいんっすか?

 能力を秘密にすることって、重要なんっすよね?

 まあ、会長は全校生徒に知られているみたいですけど」


 大仁がそのように思うのも、もっともである。

 今いる場所は保健室のカーテンで仕切られただけのベッドの周り。

 保健室は全校生徒、及び教師が利用する場所だ。

 今日は他の場所でも戦いがあったようで、大仁が逸勢を運ぶ間にも、数人とすれ違っている。

 そんな秘匿性も何もないような場所なのだ。

 しかし会長は、安心しろと言って起き上がる。

 会長の上に乗せられていた本は回収済みだ。


「この保健室の先生は、防音の能力を持っていてな。

 カーテンで締め切られているだけで、外に音は聞えないんだよ。

 そうじゃなかったら、君が叫びだした時点で強く止めている」


 大仁を指をさして愉快そうに笑う。


「といった感じで、学校で一二を争うほどに、ここは秘匿性の高い場所なんだ。

 だから、ここで紹介を済ましてしまおう」


 そう言うと立ち上がり、天井の一点を光らせ、スポットライトのように床を照らした。

 その光の中に入ると、眼鏡を直して、話し出した。


「改めて、私は桓市かんいち 武留たけるだ。

 この学校の生徒会長をしている。

 能力は、発光・照射。

 生物、無生物を問わずに、なんでも光らせることが出来る。

 光の強さも色も、今みたいに光の種類っていうか、そんな感じのも自由自在だ。

 あと、光らせているとだんだんその対象が熱を持っていってな。

 それによって暖を取ることも可能だ。

 ま、要するに! なんでも光らせられるってことだ!」


 途中で面倒になったのか、適当に切り上げた。


 次にスポットライトの中に入ったのは、丸坊主小柄男子だ。


「私は、ひろ 空海くうかいと言いますー」


 穏やかにゆっくりと話し出す。


「さっきの会長が三年生でー、私と逸勢くんが、二年生ですー」


 大仁がじれったそうに話を聞いている。

 間延びする話し方にむずむずしているようだ。


「それで、能力は、行間読み取りですー」


 さっき会長に乗っけていた本を取り出す。

 それをペラペラめくり、一枚の紙を手に取る。

 それはどうやら、テスト用紙のようだ。

 名前は……。


「あ、それ! 俺の入学テストじゃないっすか!」


 取り返そうと手を伸ばすが、それをヒョイと避け、説明を続ける。


「私の能力をお見せしますー」


 大仁のテスト用紙をじっと見つめると、書いてある文字がうねり始めた。

 だが、それ以外に変化は見られない。

 

 武留会長は椅子に座って、のんびりと眺めているが、大仁のほうは、たまったものではない。

 なんせ、そのテスト――教科は国語――の点数は、程度で言えば微妙。

 10段階で評価をつけるならば、4であろう。

 それをじっと見つめられているのだから、なんともいえない不快感があった。


「ちょっと、本当に返してください!」

嵯峨さが 大仁だいじ


 一歩踏み出したとき、丸坊主の空海が口を開いた。


「身長、178cm。体重、53kg。

 視力、両目共にA。虫歯なし。聴力良し。

 アレルギーなし。運動神経よし。

 腕を組み、直立するクセあり。

 髪の毛、剛毛。

 家族構成、母一人、父一人。

 ペット、なし。

 能力――」

「ストーップ! わかりました! 先輩の能力わかりましたって!」


 用紙を奪い取ると、懐にしまった。


「わかってくれたなら良かったー。

 でも、一応ちゃんと話すよー。

 えっと」

「あー、大丈夫っす!

 あれですよね、文章を読んだだけで、その人の事がわかる的なやつですよね!?」


 しびれを切らした大仁が、説明をさえぎる。


「ちょっと違うかなー」


 首をかしげて、説明を貫こうとする。


「ちょ、会長! 会長が説明してください!」

「ふぃ?」


 半分寝ていた武留会長は、間抜けな返事を返す。

 よだれを拭き、頼まれたことをする。


「そうだな。文章を読んだだけで、その文字が含みうる全ての情報が読み取れるんだ」

「と、いうと?」

「簡単に言ってしまえば、あれだ。

 書いた状況とか、そのときの書いたやつの気持ちとか、その他諸々だ」


 また途中で投げ出す。

 この説明を聞いて、ちょっと考えていた大仁だったが、こちらも途中で投げ出して


「とにかく、文章を読ませたらすごいって事っすね」


 と、落ち着いた。


 その一悶着を見終えた逸勢が、ベッドの中から紹介を始める。


「じゃあ次は僕が。今度はちゃんと聞いててよ?」

「ういっす」

「僕は八所やどころ 逸勢はやなりだよ。

 能力は、反復徹底。

 細かく説明すると難しいから、簡単に言うとね。

 僕が見たその対象の行動を、繰り返させる能力だよ。

 大仁くんはその身で経験済みだよね」

「あれはマジで辛いっす……」


 思い出したのか、少し青ざめる。


 大仁以外の紹介が終わったところで、武留会長が自身を含めた三人を照らす。


「これが、現在の侯ヶ崎(こうがさき)高校生徒会役員だ。

 前はもう少しいたんだが、最近の抗争で、学校を辞めてしまってな。

 だから君の入会は、あんなテストをしなくても大歓迎だったんだ。

 そういうわけで、大仁くん。次は君の紹介を聞こう」


 起立し、少し髪の毛を直してから、はっきりとした声で始めた。


「俺は、嵯峨さが 大仁だいじです。

 さっき、空海先輩に言われてしまったんで、そういう紹介は省くっす」

「それはどうもー」


 なぜか照れる丸坊主をそのままにして、紹介は続く。


「能力は、引き寄せです。

 俺は説明が苦手なんで、上手く言えないっすけど。

 俺自身に引き寄せることと、俺にしか見えない、空間に設置できる点に、引き寄せることが出来るっす」

「君にしか見えない点……?」

「俺もよくわからないっすけど、黒い点っす。

 一つの点に一つの物しか引き寄せることが出来ないっす。

 あ、俺自身にはいくつでも引き寄せられます」

「なるほど……。引き寄せられる個数とか、重量とかに限界は?」

「あるみたいっすけど……。具体的にはわからないです。

 地球は引き寄せられないんで、地球以上の重さは無理っすね」

「なかなか、面白いな」


 いつになく真剣に話を聞いている武留会長。

 それもそうだろう。

 これから先、共に争いの中に入っていく、いわば、大げさに言えば、戦友だ。

 よく知っておかなければ背中を預けられない。

 会長はさらに質問をする。


「逸勢との戦いのときに、思いっきり引き寄せていたが、その能力は生物にも干渉できるのか?」

「あ、あれは服とズボンを引き寄せただけっす。

 生物には干渉できません。あと、液体も無理っす」

「そうか……。ありがとう。

 また質問したいことが出来たら、その都度していく」


 立ち上がり、大仁の肩を叩く。

 そして真っ直ぐ見つめる。


「これから、よろしく頼むぞ。大仁くん!」

「はい! 力になります!」

「私もお願いするよー」

「僕も、頼りにしてるよ」


 三人とも、とても嬉しそうに笑う。

 大仁は、湧き上がってくる気持ちに、素直に従った。


「任せてください!」


 力強い宣言。

 思いを全て表現したその姿に、各々、何か感じるものがあった。

 それは何とも言いがたい、温かさのようなものだった。

 本当に任せられる。

 そう確信するには十分だった。


「あ、一つだけいいっすか?」

「ん、なんだね」

「俺、たまに敬語崩れるんで、そのときはよろしくっ……お願いします」


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