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4話 委員会の、役割

 ノックもなしに扉が開けられる。


「こんちわです」


 今日も重力に逆らう髪の毛がきまっている。

 髪の毛と見た感じはグレている感じだが、制服は崩していない。

 他も全て、校則違反はしていない。

 髪の毛は何度も注意されるが、直しようがないらしい。

 なんせ、クシが通らないほどの剛毛。撥水性も高いという。


「ああ、こんにちわ。授業ご苦労さん」


 今回は驚かなかった武留(たける)会長。

 ノートに何かをまとめながら、軽く手を上げる。


「あれ? 今日、二年の先輩方はいないんですか?」


 生徒会室の中に、いつもの角刈りと丸坊主の姿はなかった。


「あいつらは、学年の集まりだろう。

 二年生になると、委員会争いの中心になっていくからな。

 心構えやらなんやらの説明を受けさせられるんだ」


 シャープペンを置いて、席に座る大仁(だいじ)を見る。

 大仁の席は角刈り、もとい逸勢(はやなり)の隣だ。

 これは大仁の希望によるものである。

 どうしても、丸刈りマイペースの隣は嫌だと。


「委員会争いっすか……。

 なんか、入学前からそういう話を聞いて、よっしゃあ! やってやるぜ! ひぃあ!

 とか思っていたんですけど。

 俺が生徒会に入ってから、まだ一回も他の委員会と戦ってませんよ?

 他の委員会どうしが戦ってるのは見ましたけど……。

 三日間も平穏って、そんなことあるんっすか?」


 頬杖をついて、武留会長を見やる。

 その視線を受けて、立ち上がった。


「うむ。狙ったかのような、ちょうどいいタイミングだ。

 まずは、ほい。委員会章だ。受けとってくれ」


 急に投げられたのを、慌てて手を伸ばして掴む。

 手のひらを見ると、大豆ほどの大きさのバッジが、会長の照明を受けて輝いていた。

 そのバッジは、漫画の表現などでよく見る、キラキラのようなひし形で、そのひし形の中に『生』の文字が白く刻まれていた。

 そして、ひし形と『生』のちょうど真ん中に、全てを見透かすように光る、エメラルドが埋め込まれていた。


 見とれつつも自分の制服に付ける。

 瞬間、エメラルド色にバッジが発光し、そして輝きがはじけた。

 驚いて立ち上がる。そこに武留会長が声をかけた。


「おめでとう。これで正式に、生徒会役員だ。

 三日も待たせてしまって申し訳なかったな」

「ありがとう……ございます!!」


 顔を明るくし、武留会長を見る。

 すると、会長の顔の横に、横の空間に、何か浮かんでいるのに気づいた。

 そこには文字が書いてあるようだ。その文字を読み上げる。


「三年一組 生徒会長 桓市(かんいち) 武留(たける)……?

 これは、なんっすか? 会長の能力っすか?」

「君、知らないのか? 入学資料に書いてあったはずだが」

「読んでないっす」

「学級説明会では?」

「起きてたはずですけど……」

「……じゃあ仕方ない。私がもう一度説明しよう。

 どうやら君は、一回目の話を聞き逃すクセらしきものがあるようだ」

「そのクセは、早めになんとかするっす……」


 どこか遠くを見つめてそうつぶやく。


「まあどっち道、細かい説明は今日するつもりだったんだ。

 今ちょうど、ノートにもまとめ終えたしな」


 ノートの表紙に手を当てる。

 その表紙には、『誰でもわかる、委員会説明~基礎から基礎まで~』と丁寧な字で書かれていた。

 表紙をめくると、簡単な表が書いてあった。


「まずは、顔の横に出ているものから説明しよう。

 これは、生徒会の委員会能力だ。

 各委員会が、それぞれ別々の能力を持っている。

 簡単に言えば、お助け機能みたいなものだ。

 他の委員会の能力は、また機会があったら説明しよう」


 言い終えて、顔の横に出ているものを指差す。


「我が生徒会の委員会能力は、身分照会だ。

 発動したい時に発動できて、この学校の人物なら誰でも対象に出来る。

 わかる情報は、学年とクラス、所属委員会、名前だ」

「能力はわからないんですね」

「ああ。それが出来ていたら、生徒会にもっと人が来ていただろうな」


 視線を少し下げて、縁側のおじいちゃんのような目をする。

 そんな様子に気づかず、武留会長の顔の横の情報を、出したり消したりしている。


「私たちはステータスバーと呼んでいる。

 簡単に、バーだけでも通じるから、まあ適当に呼んでくれ」


 そして次にノートの表を示す。


「これが今、この学校に存在する全委員会だ。合計して、十三委員会ある。

 その中でも、特に注意すべき委員会は……」


 ノートの表にある、二つの委員会を照らす。


「風紀委員会と、体育委員会だ」

「風紀と体育……」

「この二つの委員会と私たち生徒会が、毎年上位を争っている。

 現在の一位はまだわからんが、今年の主席入学のあの子が、風紀委員に入ると宣言していたからな。

 風紀委員は勢いづいてくるだろう」


 気絶してしまっていた大仁を除くと、唯一、新入生で武留会長の不意打ちを受けても立っていた生徒。

 名前を冬蔵(ふゆくら) 嗣人(つぐと)。

 武留会長は彼が今年度の中核となるだろうと思うと同時に、大仁ならば……という思いも抱いていた。

 根拠はなかったが、なぜか、そんな気がするのだった。


「と、まあ。基礎はこんな感じだが……。何か質問は?」

「あーっと、この委員会能力って、校外で使えますか?」

「使えないな。敷地内ならどこでも使えるがな」

「あと、順位ってどうやって決めるんっすか?」

「それはこの後詳しく説明するが、簡潔に言えばポイント制だ。

 敵を倒せば倒すほど溜まって、逆にやられればやられるほどに減っていく……」

「なるほど……。あ、あともう一ついいっすか?」

「どうぞどうぞ」


 少し身を乗り出して、問いを投げかける。


「一位になったら、何かもらえたりするんっすか?」

「一位になるとだな……」


 会長が部屋の中心に歩いていく。

 そしてスポットライトを自分に照射!


「学校が望みを一つ、叶えてくれるぞ!」

「まじっすかあああああああ!!!」


 武者震いをする二人。

 おおう、おおうと言いながら震える。


「あ、ちなみに。

 学級委員以外は授業中、能力が使用できないからな。

 不意打ちも、細かいルール的にはありだから、色々面倒なんだよな」

「おおう、おおう、おおう」

「お、おう」


 震えが止まるまで武留会長は待つ。

 大仁はひとしきり震えると、深呼吸をして、落ち着いた。


「会長、俺やりますよ。やってやりますよ!」


 天井に手を伸ばす。何かを掴むかのように。


「だから、会長。最後にもう一つだけ教えてください」


 上げていた手をすっとそのまま武留会長に向ける。


「今から戦いにいける委員会って、どこですか!」

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