新選組と御陵衛士
時は同じく慶応三年秋の京都島原。
「だから~駄目だってば新八さん!」
「いいから、いいから」
「何がいいんだよ!俺達御陵衛士と新選組が接触するのは禁止されている筈だろ!?」
御陵衛士、高台寺党は藤堂平助が隊士勧誘で江戸から戻って来た時に連れてきた伊東甲子太郎が、局長近藤と意見が合わず分離して作った。
高台寺を屯所とし孝明天皇の御陵守護を任務とすると共に薩摩や長州の動向を探るのが目的とされている。
局を脱するを許さずと言う局中法度がある為、あくまでも分離と言う形を取ってはいるが、組の情報漏洩を防ぐ為、新選組隊士と御陵衛士が接する事は禁止されていた。
「俺達が会ってるのが土方さんにバレたら腹切らされるぞ!?」
「だから、外じゃなくて島原に来てんだろうが……」
「ここなら、新選組も御陵衛士も関係ないからな、これでも気ぃ使ってんだぜ?俺達」
「左之さん……」
島原の中に入ってしまえば、薩摩だ長州だも関係ない、一人の男と女が交あう場所になる、それを理由に永倉と原田が藤堂を呼び出した。
「ああっ!?もう!わかったよ!今日の酒代は二人の奢りだからな!」
「そうこなくっちゃっ!久々に昔の話しでもしようぜ?」
そう言うと三人は島原の店の暖簾を潜り、それ程広くはない部屋を一部屋借りて杯を交わした。
「やっぱり三人で飲む酒は旨いな」
藤堂が組を離れてから半年以上が経つ、その間にも色々な事があったがお互いその事には触れず、昔話しで盛り上がった。
「なあ、平助……相楽総三と言う奴を知ってるか?」
「相楽?誰それ?」
「ああ~やっぱり知らねえか……お前が新選組を出て行ってからひと月くらい先だったかな」
江戸から来た郷士の相楽総三は同志を何名か連れて京都に来ていた。
目的は遊学と言う事だが、顔の広い相楽は清川八郎の虎尾の会にいた伊牟田尚平と益満休之助の紹介で西郷と交流を深めていた。
新選組はその相楽を要注意人物とし追いかけていた事がある。
「その相楽がどうしたの?」
「相楽の仲間の中にな、聞き覚えのある人物もいたんだよ」
「……誰?」
「渋谷謹三郎と竹内廉太郎だ」
その名を聞いて藤堂は目を見開いた。
「えっ!?」
「なっ!驚いただろ!?俺達だって初めは耳を疑ったさ」
まさか、かつては同じ北辰一刀流、玄武館の門人の名前が今頃出てくるとは思わなかった。
話しは更に文久まで遡る。




