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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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5/25

壊れ始めた世界

森へ冷たい風が吹き抜ける。


 レイは、

目の前の魔族を静かに見つめていた。


 魔王が、

自分の存在を認識している。


 それは想定外だった。


 軍ですら、

《解読》を軽視していた。


 それなのに魔王は違う。


 男は倒れた魔物へ視線を落とし、

短く息を吐く。


「最近は増えている」


「暴走個体か」


「……ああ」


 男の返答は重かった。


 リナが不安そうに空を見る。


 黒い亀裂。


 夜空を裂くような異様な傷。


 見ているだけで、

魔力が削られる感覚がある。


 レイはゆっくり口を開いた。


「魔王軍は、

 あれを知っているんだな」


 男は数秒沈黙した。


 だが否定はしない。


「どこまで気づいている」


「まだ断片的だ」


 レイは空を見る。


「亀裂周辺では魔力が乱れる。

 魔物は暴走する。

 土地も死に始めている」


 そこで一度言葉を切る。


「……そして、

 お前たちはそれを警戒している」


 男は黙ったままだった。


 だが、

その沈黙が答えだった。


 レイは続ける。


「なら質問を変える」


 森の空気が静まる。


「魔王は、

 世界崩壊を止めようとしているのか」


 リナが息を呑む。


 男の赤い瞳が、

初めてわずかに揺れた。


「……そこまで読んだか」


 否定しなかった。


 レイの思考が加速する。


 軍は、

全てを魔王軍の仕業としていた。


 空の亀裂も。


 暴走魔物も。


 土地の異常も。


 だが実際は違う。


 魔王軍は、

“対処”している側だ。


「なぜ人間へ伝えない」


「無理だからだ」


 男は即答した。


「人間は魔族を信じない」


「…………」


「そして魔族も、

 人間を信用していない」


 レイは否定できなかった。


 実際、

軍内部でも魔族との和平を口にした者は、

裏切り者扱いされていた。


 男は空を見上げる。


「この世界は、

 もう長くない」


 静かな声だった。


 感情は薄い。


 だが、

諦めだけは感じられた。


「亀裂は広がり続けている。

 今はまだ一部だけだ」


「中心はどこだ」


「魔王領の最深部」


 レイは眉をひそめる。


 最悪の位置だった。


 だから人間側は、

全てを魔王軍のせいだと思っている。


 だが。


「……違うな」


 レイは小さく呟く。


「魔王軍は、

 “押さえ込まれている”」


 男の視線が変わった。


 初めて、

レイを見る目に興味が混じる。


「お前、

 本当に《解読》だけか?」


「そうだ」


「化け物だな」


 リナが小さく頷く。


「うん。変」


 レイは無視した。


 頭の中では、

情報が繋がり始めていた。


 魔王軍の不可解な行動。


 暴走魔物。


 空の亀裂。


 そして——。


「……軍は、

 何を隠している?」

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