役割
半地下に住み始めて、
二日目。
問題は山積みだった。
食料。
水。
見張り。
掃除。
エルドが床へ座りながら言う。
「なぁ」
「何」
リナが振り向く。
「俺たち、
何も決めてなくないか?」
静寂。
レイも顔を上げた。
言われてみればそうだった。
逃げることしか考えていなかった。
だから。
誰が何をするかも決まっていない。
リナが腕を組む。
「確かに」
「今日だけでも、
水汲み三回俺だったぞ」
「気付いた人がやればいいと思ってた」
「雑すぎるだろ」
エルドが即座に突っ込む。
レイは少し考えた。
そして。
「じゃあ決めるか」
エルドが頷く。
「それがいい」
まず。
食料担当。
リナが手を挙げた。
「私」
「料理できるのか?」
「最低限は」
「最低限って怖いな」
エルドが呟く。
次。
見張り。
これは交代制。
三人とも納得した。
そして。
レイを見る。
「お前は?」
エルドが聞く。
レイは壁の術式を見る。
「結界」
「あー」
エルドが納得した顔になる。
確かにそれしかない。
この場所を維持できるのは、
レイだけだった。
短い沈黙。
だが。
三人とも少し笑った。
初めてだった。
逃亡者じゃなく。
ここで暮らす人間として、
話をしている。
リナが小さく呟く。
「なんか変な感じ」
「何が」
「昨日まで逃げてたのに」
エルドが笑う。
「今日は掃除の話してる」
レイも少しだけ口元を緩めた。
その時だった。
地下水路の方から、
冷たい風が流れてくる。
静かな半地下。
三人だけの拠点。
まだ何もない。
だけど。
確かに。
ここは少しずつ、
居場所になり始めていた。




