地下水路
崩れた扉の奥には、
細い地下水路が続いていた。
浅い水が、
静かに流れている。
かなり古い。
だが。
水は濁っていなかった。
レイは周囲を見る。
「……生きてるな」
エルドが起き上がる。
「水路が?」
「ああ。
どこかと繋がってる」
完全に止まった水じゃない。
流れがある。
つまり。
この半地下は、
まだどこかへ通じている。
リナがしゃがみ込み、
水へ触れた。
「冷たっ」
「飲むなよ」
「分かってる」
だが。
逃げ続けていた三人には、
その水音だけで少し安心感があった。
レイは壁を見る。
地下側にも術式が残っている。
しかも。
地上側より保存状態がいい。
「地下優先で守ってたのか」
エルドが顔をしかめる。
「避難用だから?」
「多分な」
逃げ道。
隠れ家。
地下水路。
全部、
長く生き残るために作られている。
その時。
リナが水路の奥を見る。
「……これ、
かなり続いてない?」
暗くて先が見えない。
だが。
風が流れていた。
出口がある。
レイは少し考える。
「追手来た時の逃げ道にはなるな」
エルドがその場へ座り込む。
「いやもう……
しばらく逃げたくない……」
リナが少し笑った。
「それは同意」
短い沈黙。
水音だけが響く。
ようやく、
戦闘も追跡もない時間だった。
レイは壁へ背を預ける。
その時。
半地下の灯り術式が、
小さく明滅した。
三人の視線が向く。
次の瞬間。
薄暗かった半地下に、
淡い光が広がる。
エルドが目を見開いた。
「……え?」
古い術式が、
ゆっくり起動していた。
まるで。
三人が来るのを、
待っていたみたいに。




