拠点
森へ溶け込むように、
崩れた石壁は続いていた。
本部騎士たちの焚き火から、
少しずつ距離を取る。
エルドが小声で呟く。
「……まだ追ってこない?」
「結界跡のおかげだろうな」
レイは石壁へ触れながら進む。
古い術式。
かなり薄れている。
だが。
人避けに近い効果が、
まだ残っていた。
リナが周囲を見る。
「ほんと、
昔から逃げてたんだね」
「たぶんな」
レイは短く返す。
この避難路は、
明らかに計画的だった。
偶然作られたものじゃない。
逃げるために作られている。
その時だった。
レイの《解読》が、
微かに反応する。
「……こっちだ」
二人が後を追う。
石壁の奥。
崩れた木々を抜けた先に、
小さな空間があった。
半地下。
岩壁へ埋まるように、
古い建物が残っている。
入口は蔦で隠れ、
外からほとんど見えない。
エルドが目を見開く。
「……隠れ家?」
レイは入口へ触れる。
古い結界が、
まだ微かに動いていた。
「避難用拠点だな」
リナが小さく息を吐く。
「……住めそう?」
「しばらくなら」
短い沈黙。
三人は顔を見合わせる。
追われて。
逃げ続けて。
ようやく見つけた場所だった。
エルドが力を抜く。
「……とりあえず、
今日は寝れるか」
レイは静かに頷いた。
その時。
半地下の奥で、
小さく術式が光った。
まだ。
この場所は生きていた。




