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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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息を潜めて

足音が近づいてくる。


 湿った土を踏む音。


 三人は身を低くしたまま、

息を殺していた。


 本部騎士の一人が、

木々の間を歩いてくる。


 距離が近い。


 十歩ほど先まで来れば、

見つかる。


 エルドの額に汗が浮かぶ。


 リナも短剣へ手を掛けたまま動かない。


 だが。


 レイだけは静かだった。


 周囲を見る。


 地形。


 風向き。


 音。


 そして。


 古い結界跡。


「……右」


 小さな声だった。


 二人だけが反応する。


 レイは崩れた石壁の裏を指差した。


 かなり狭い。


 だが。


 結界の残滓が濃い。


 三人は音を立てず、

そちらへ移動する。


 直後。


 本部騎士が、

さっきまで三人がいた場所へ近づいた。


「……誰かいたか?」


 男が周囲を見る。


 だが。


 結界跡のせいか、

視線が微妙に逸れていく。


 レイは小さく呟いた。


「認識阻害……」


 昔の避難用結界。


 完全ではない。


 でも、

“見落としやすくする”程度の効果は残っていた。


 男は数秒周囲を見たあと、

舌打ちする。


「気のせいか」


 そのまま、

焚き火側へ戻っていった。


 三人はしばらく動かなかった。


 完全に足音が離れてから、

エルドが息を吐く。


「っはぁ……

 寿命縮んだ……」


「うるさい」


 リナも小声で返す。


 だが。


 二人とも、

かなり顔が強張っていた。


 レイは焚き火側を見る。


 本部騎士たちは、

まだ地図を広げていた。


「……完全に封鎖する気だな」


 エルドが顔をしかめる。


「そんなヤバい扱い?」


「侵食を止めたからだろ」


 リナが低く呟く。


「向こうからしたら、

 意味分かんない存在だし」


 短い沈黙。


 風だけが、

森を揺らしていた。


 その時。


 レイの視線が、

古い結界跡へ向く。


「……妙だな」


「また?」


 エルドが疲れた顔をする。


 レイは石壁へ触れた。


「これ、

 避難用にしては範囲が広い」


 リナも周囲を見る。


 確かに。


 崩れた石壁は、

森の奥まで続いていた。


 まるで。


 何かを隠すように。


 レイは小さく呟く。


「この先、

 まだ何かあるな」

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