見張り小屋
崩れた水路を抜けると、
細い廃道へ繋がっていた。
草は伸び放題。
石畳も半分崩れている。
昔使われていた避難路。
今はもう、
誰も管理していない場所だった。
三人はその廃道を、
夜明け前まで歩き続けていた。
エルドが肩を擦る。
「……寒っ」
「文句言う元気あるなら平気」
リナが呆れた声を返す。
だが。
疲れているのは全員同じだった。
まともに休めていない。
追われ続けている。
しかも。
空の亀裂は、
街を離れても見えていた。
レイが前方を見る。
「……あれか」
廃道の先。
崩れかけた小屋が見えた。
昔の見張り小屋みたいだった。
木造。
半分以上朽ちている。
だが。
屋根はまだ残っていた。
リナが目を細める。
「住める?」
「数日なら」
レイは静かに近づく。
扉へ手を触れた瞬間、
小さく《解読》が反応した。
「……結界跡」
エルドが顔を上げる。
「また?」
「ああ。
かなり弱いけど残ってる」
小屋の周囲には、
薄く古い術式が刻まれていた。
魔物避け。
侵食避け。
避難用の簡易結界。
昔、
誰かがここを逃げ場として使っていた。
リナが小さく呟く。
「ほんとに、
逃げ道だらけなんだね」
レイは答えない。
だが。
昔にも似た状況があった。
その予感だけは、
少しずつ強くなっていた。
エルドが扉を押す。
軋んだ音と共に、
小屋の中が見えた。
埃だらけ。
だが。
思ったより広い。
「……今日はここ使おう」
三人は中へ入る。
ようやく、
少しだけ息を吐けた。
その時だった。
リナが窓の外を見る。
「……ねぇ」
「何だ」
「煙」
二人も外を見る。
かなり遠く。
廃道の先の森側で、
細い煙が上がっていた。
誰かいる。
しかも。
一つじゃない。
レイの目が細くなる。
「避難民か……?」
エルドが小さく呟く。
「もう、
逃げ始めてる奴いるのか」




