新しい場所へ
西側の崩れた水路は、
想像以上に酷い状態だった。
石壁は崩れ、
水もほとんど流れていない。
昔使われていた避難路。
今は完全に放棄されていた。
エルドが周囲を見回す。
「……こんな場所、
よく知ってたな」
「避難民が隠れる場所なんて、
だいたい決まってる」
リナが静かに答える。
人目につかない場所。
騎士が来ない場所。
魔族が生き延びる場所。
それはつまり。
最初から、
人間の街の外側だった。
レイは崩れた壁へ触れる。
古い術式跡が残っていた。
「これ……」
リナが覗き込む。
「何か分かる?」
「昔の結界跡だ」
エルドが顔をしかめる。
「こんな所にも?」
「ああ。
かなり古い」
しかも。
今の教会式と少し違う。
もっと簡素で、
もっと実用的だった。
レイは小さく呟く。
「……逃げ道前提か」
「え?」
「最初から、
避難路込みで作られてる」
侵食。
崩壊。
避難。
まるで。
昔にも同じ事があったみたいだった。
その時。
遠くで、
また警戒鐘が鳴った。
かなり遠い。
もう街から離れ始めている。
エルドが少し息を吐く。
「……とりあえず、
今夜は逃げ切れそうか」
「まだ分からない」
レイは即答した。
本部側が本気なら、
追跡術式も使ってくる。
油断はできない。
リナが前を見る。
「でも、
進むしかないよね」
その言葉に、
二人も黙って頷いた。
三人はそのまま、
暗い廃道を進み始める。
街を離れて。
追われる側として。
そして。
まだ誰も知らない、
新しい逃げ場を探すために。




