古い廃道
少年は震えながら続けた。
「魔族を……
追い返さなかったって、
聞いた」
リナとエルドが顔を見合わせる。
やっぱり広がっている。
門前の話は、
もう避難民たちの間で流れ始めていた。
少年は続ける。
「侵食を止めた人がいるって」
「随分尾ひれついてるな」
エルドが苦笑する。
だが。
レイは少しだけ考え込んだ。
噂は広がる。
つまり。
追われる側になる一方で、
人も集まり始める。
その時だった。
遠くで鐘が鳴る。
街の警戒鐘だった。
リナが顔をしかめる。
「……もうバレたね」
「早いな」
エルドも緊張した顔になる。
裏路地の空気が変わっていた。
騎士たちが、
街中を探し始めている。
少年が不安そうに聞く。
「追われてるの?」
「まぁな」
レイは短く答えた。
そのまま空を見る。
黒い亀裂。
前より広がっている。
街へ残っても、
いずれ侵食は来る。
教会側も、
もう混乱し始めている。
「……街を出るか」
エルドが顔を上げる。
「今から?」
「夜の方が動きやすい」
リナが腕を組む。
「でも、
街の外も危ないんでしょ?」
「ああ」
レイは少し黙る。
安全な場所なんて、
もうどこにもない。
それでも。
この街に残るよりはマシだった。
少年が小さく口を開く。
「外なら……
古い廃道使った方がいい」
三人の視線が向く。
少年は少し怯えながら続けた。
「今の街道、
本部騎士かなり出てる」
エルドが顔をしかめる。
「もう封鎖始めてんのかよ」
「多分、
逃がしたくないんだと思う」
短い沈黙。
レイは少年を見る。
「廃道はどこだ」
少年は路地奥を指差した。
「西側の崩れた水路抜ければ、
旧街道へ出れる」
リナが少し驚く。
「詳しいね」
「避難民、
みんなそこ通ってるから」
その時。
遠くの通路で、
騎士たちの声が響いた。
「裏路地側を探せ!」
エルドが顔を青ざめる。
「うわ、
もう来た!」
レイは踵を返す。
「行くぞ」
三人は裏路地の奥へ走り出す。
少年はその場へ残ったまま、
小さく呟く。
「……見つかるなよ」




