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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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第一鐘楼

第一鐘楼へ向かう街路は、

避難民で混乱していた。


 鐘の音が鳴り続けている。


 短く。


 焦るように。


 騎士たちが住民を誘導していた。


「中央区封鎖!

 近づくな!」


 怒号が飛ぶ。


 だが。


 レイの視線は、

鐘楼の奥へ向いていた。


 空気が歪んでいる。


 しかも。


「……結界流が乱れてるな」


 副団長が顔をしかめる。


「見えるのか」


「ああ」


 街全体へ張られた結界。


 本来なら、

第一鐘楼を中心に循環している。


 だが今は違う。


 流れが、

一点へ引っ張られていた。


「侵食側か?」


「いや」


 レイは即答する。


「もっと人為的だ」


 エルドが息を呑む。


「また教会……?」


 レイは答えない。


 まだ断定はできない。


 だが。


 侵食体も、

侵食結晶も、

人工的な痕跡が多すぎる。


 その時だった。


 前方で爆音が響く。


 石壁が崩れ落ちる。


「っ!」


 騎士たちが剣を抜く。


 煙の奥。


 鐘楼前広場へ、

黒い術式が浮かび上がっていた。


 巨大だった。


 地面全体へ広がっている。


「術式陣……!?」


 副団長の顔が変わる。


 レイは目を細めた。


 侵食術式。


 だが。


 今までと構造が違う。


「これ、

 門を開く術式じゃない」


「何だと?」


「もっと大きい」


 《解読》が加速する。


 術式構造。


 結界干渉。


 魔力流。


 全部が頭へ流れ込む。


 その瞬間。


 レイの顔色が変わった。


「……街全体を使う気か」


 副団長が振り向く。


「どういう意味だ」


「第一鐘楼を中心に、

 結界を逆流させてる」


 つまり。


 街全体の結界エネルギーを、

一点へ集めている。


 エルドが青ざめる。


「そんなことしたら……」


「結界が崩壊する」


 空気が凍る。


 もし街の結界が消えれば。


 侵食は一気に広がる。


 住民も終わる。


 その時だった。


 術式陣の中心で、

誰かが立ち上がる。


 黒い法衣。


 教会司祭服だった。


 騎士たちがざわめく。


「司祭……?」


 男はゆっくり顔を上げる。


 痩せた中年男。


 だが目が異様だった。


 黒い侵食が、

瞳の奥まで入り込んでいる。


「副団長……」


 騎士の一人が震えた声を漏らす。


「あれ、

 中央司祭のラドスです……」


 副団長の顔が強張る。


「……生きていたのか」


 ラドスはゆっくり笑った。


 口元だけが歪んでいる。


「やっと、

 開けられる」


 空気が軋む。


 第一鐘楼の鐘が、

勝手に鳴り始めた。


 レイは術式を見る。


 結界流が、

急激に吸われている。


 まずい。


 もう始まっている。


「副団長」


「なんだ!」


「術式を止める」


「できるのか!?」


 レイは静かにラドスを見る。


 そして。


「やるしかない」

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