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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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制御可能

西通りは、

異様な静けさに包まれていた。


 さっきまで恐怖で混乱していた騎士たちも、

今は言葉を失っている。


 侵食が止まった。


 それが、

どれほど異常なことなのか。


 全員理解していた。


 助かった男は、

荒い息を吐きながら地面へ座り込んでいる。


「た、助かったのか……?」


 黒い侵食は消えていた。


 皮膚へ、

うっすら痕跡が残っているだけだ。


 副団長がレイを見る。


「……今、

 何をした」


「流れを戻しただけだ」


「だけで済む話か」


 レイは砕けた結晶を見る。


 侵食は呪いじゃない。


 もっと構造的なものだ。


 魔力流。


 結界干渉。


 侵食循環。


 全部が繋がっている。


「侵食は、

 外側から流し込まれてる」


 騎士たちが息を呑む。


「つまり、

 完全に身体へ定着する前なら戻せる」


 エルドが呆然と呟く。


「じゃあ今までの侵食被害って……」


「治せた可能性がある」


 沈黙。


 空気が重くなる。


 副団長の顔も険しかった。


 教会は、

侵食を“不治”として扱っていた。


 だが。


 もし治療可能なら。


「……隠してたのか」


 騎士の一人が小さく呟く。


 誰も否定しなかった。


 レイは静かに空を見る。


 黒い亀裂は、

まだ空へ残っている。


 つまり。


「侵食そのものは止まってない」


 問題は、

もっと根本側だ。


 門。


 亀裂。


 そして。


 侵食結晶を作っている存在。


「副団長」


「なんだ」


「侵食研究施設って、

 どこにある」


 騎士たちの空気が変わる。


 副団長はしばらく黙った。


「……地下区画だ」


「やっぱりあるんだな」


「公式には存在しない」


「だろうな」


 レイは淡々と返す。


 その時だった。


 後方から、

別の騎士が走ってくる。


「副団長!」


「どうした」


「中央区で結界反応が乱れてます!」


 副団長の顔色が変わる。


「場所は!?」


「第一鐘楼付近です!」


 レイの目が細くなる。


 第一鐘楼。


 街の中心結界へ近い。


 つまり。


「……侵食側も、

 結界を狙ってるのか」


 副団長が剣を握る。


 空気が張り詰めた。


 だが。


 レイの頭の中では、

別の違和感が繋がり始めていた。


 侵食体。


 侵食結晶。


 結界破壊。


 そして。


 街の中心。


「……違うな」


 副団長が振り向く。


「何がだ」


 レイは第一鐘楼の方向を見る。


「侵食は、

 “壊そう”としてない」


「は?」


「逆だ」


 レイは静かに言った。


「何かを、

 開こうとしてる」

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