造られた侵食体
空気が凍る。
副団長の目が細くなる。
「……どういう意味だ」
レイは侵食体を見つめたまま、
静かに答える。
「二重核は不自然すぎる」
侵食体が暴れる。
だが。
動きが乱れ始めていた。
核同士が干渉し、
侵食流が崩れている。
「普通の侵食なら、
こんな構造にはならない」
「断言できるのか」
「ああ」
《解読》が、
侵食構造を読み続けている。
だから分かる。
これは異常進化じゃない。
調整されている。
「外側の核は、
後付けだ」
騎士たちがざわつく。
「後付け……?」
「誰かが、
侵食を操作してる」
副団長の顔色が変わる。
エルドも息を呑んだ。
「そんなことできるのか」
「普通なら無理だ」
だが。
教会には結界技術がある。
侵食研究もしている。
そして。
「……門へ干渉してる奴がいるなら、
不可能じゃない」
侵食体が咆哮する。
空間が裂ける。
石畳が浮き上がる。
「来るぞ!」
副団長が叫ぶ。
だが。
「待て!」
レイの声が飛ぶ。
副団長が動きを止める。
「今突っ込むと死ぬ」
「何が見えてる」
「核の流れが逆転してる」
侵食体の胸部。
二つの核が、
互いを侵食し始めていた。
不安定だ。
だから。
「崩壊寸前だな」
レイの目が細くなる。
その瞬間。
侵食体が消えた。
だが。
「右後方!」
騎士たちが即座に動く。
もう混乱していない。
侵食体の動きを、
少しずつ理解し始めていた。
副団長が踏み込む。
長剣が侵食体を弾く。
エルドが横から核を狙う。
連携。
さっきまでとは違う。
「崩れてる!」
侵食流が乱れる。
空間歪曲が暴走し始めた。
「今だ!」
レイの声と同時に、
副団長の剣が振り下ろされる。
狙いは核じゃない。
二つの核を繋ぐ、
中央の侵食流。
斬撃が走る。
次の瞬間。
二重核が、
互いへ干渉し始めた。
「■■■■■■■■!!」
侵食体が絶叫する。
空間が歪む。
だが。
今度は維持できない。
黒い身体へ、
無数の亀裂が広がっていく。
「離れろ!」
レイが叫ぶ。
全員が飛び退く。
直後。
侵食体が内側から崩壊した。
轟音。
黒い灰が、
街中へ吹き荒れる。
しばらく誰も動かなかった。
やがて。
副団長が低く呟く。
「……本当に、
解析して戦ってるのか」
レイは答えない。
代わりに、
崩れた侵食体を見る。
灰の中。
黒い破片が残っていた。
結晶だ。
だが。
「……違うな」
レイは目を細める。
前の侵食結晶より、
形が整いすぎている。
まるで。
「人工物みたいだな」




