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追放された《解読》士、魔王が世界を守っていると気づく  作者: 北こたろう


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16/26

初陣

エルドの身体が硬直する。


 黒い腕は、

既に亀裂から伸び切っていた。


 侵食体が現れる。


 前の個体より大きい。


 全身の侵食も深い。


 空間の歪みが、

教会全体を軋ませていた。


「う、あ……」


 エルドの剣先が震える。


 無理もない。


 目の前の存在は、

普通の魔物じゃない。


 理解できない“何か”だ。


 だが。


「右へ半歩」


 レイが静かに言う。


「……え?」


「早く動け」


 反射的に、

エルドが右へずれる。


 次の瞬間。


 侵食体の腕が、

さっきまでエルドがいた場所を貫いた。


「っ!?」


 エルドの顔が青ざめる。


「止まるな。

 次は左後ろ」


 エルドが咄嗟に動く。


 空間が裂ける。


 床が抉れた。


 だが当たらない。


「な、なんで……」


「歪みを見ろ」


 レイは侵食体を見つめ続ける。


「空気が揺れる場所がある。

 そこへ来る」


 エルドには見えていない。


 だが。


 レイは見えている。


 空間のズレ。


 侵食の流れ。


 核を中心に、

全てが歪んでいる。


「右脚だ」


 侵食体が踏み込む。


 その瞬間。


「今」


 エルドが剣を振る。


 浅い。


 だが。


 侵食体の動きが止まった。


「……え?」


「そこだけ歪みが薄い」


 レイが静かに言う。


「完全侵食してない」


 侵食体が唸る。


 だがさっきより遅い。


 動きが乱れている。


「次は左肩」


「わ、分かった!」


 エルドが動く。


 恐怖は消えていない。


 だが。


 さっきより、

足が止まっていなかった。


 侵食体が消える。


 空間転移。


 だが。


「真後ろ」


 レイの声と同時に、

エルドが振り向く。


 剣がぶつかる。


 火花が散った。


「うおっ!?」


 吹き飛ばされる。


 だが致命傷じゃない。


 レイは静かに侵食体を見る。


「……核が揺れてるな」


 侵食体の胸元。


 黒い亀裂が、

不安定になり始めていた。


 リナが目を見開く。


「エルド押してる!?」


「いや」


 レイは小さく首を振る。


「崩し始めてる」


 戦っているのはエルドだ。


 だが。


 侵食体の構造は、

既にレイが読み始めている。


 その時だった。


 外の騎士たちが、

ざわめき始める。


「なんだ……?」


「新人が押してる?」


「あり得ないだろ」


 エルド自身が、

一番驚いていた。


 呼吸は荒い。


 腕も震えている。


 それでも。


 見える。


 次にどこへ来るのか。


「右から来る!」


 エルドが先に動く。


 侵食体より早く。


 剣が振り抜かれる。


 黒い核へ、

小さな亀裂が走った。


「■■■■■■!!」


 侵食体が絶叫する。


 教会全体が揺れた。


 レイは静かに呟く。


「……戦えるな」

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